アホと魔女と変態と (異世界ニャンだフルlife)

影虎

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四章 遺跡探索

遺跡探索 10

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『自動防…… テム作動…… アトラスデルタ…… します…… 員は、ただちに…… 避してください』
 僕らは天井から狙ってくる自動小銃型のオートパレットや壁から照射してくるレーザー光線を掻い潜り、とうとう最奥と思われる扉の前へと辿り着いていた。
 そこは開けた場所で、縦は三階建ての建物くらいの広さがあり、横は学校のプールくらい広い場所だった。
 途中に部屋らしきものや扉などは一つもなく、時折あった隙間には昨晩僕たちが襲われた蟻型ロボットたちが、風化のために自滅して詰まったり転がったりしていた。
 きっと本来ならこの蟻型ロボットも僕たちに襲いかかってきていたんだろうけど、もう動けるのは昨晩出尽くしたんだろうね。
 しっかし、アトラスデルタてなんだろう……。
 この扉の先から聞こえてくる大きなズシーン、ズシーン、という重そうな音が、もしかしたらそれなのかな……?
「「「「「……」」」」」
 僕らは息を飲んでその扉を睨み待ち構えていた。
 その音は段々と大きくなり扉の前辺りまでくると、扉の上のランプが赤色に光り、僕たちは息を飲む。
 ギュルルル……。
 ギュルルル……。

 何か変だなぁ……。
 一向に開く気配のない扉を見つめ、僕らは首を傾げた。
 ギュルルル……。
 ギュルルル……。
 あー、うん。絶対空回りしてるね。
 千二百年前の建物だもんね。
 むしろシステムが生きてたことの方が不思議なくらいだもん。
「まったく。これだけ緊張感を持たせておいて、なんなんじゃ……」
「まぁまぁ。戦わずに済むなら、それに越したことはないじゃないですか、先生」
 僕たちは若干呆れながら、今来た道を戻り他に入り口はないか見に行こうと相談し始める。
 すると扉の向こうにいるであろうロボット(?)が強行手段を取り始め、ガンガンと扉を叩き始めた。
 僕らの目の前の五メートルはあろうかという大きな扉が軋みパラパラと砂埃が舞う。
「「「きゃぁっ!」」」
「無茶しおって!」
「皆、下がって!」
 僕の言葉に皆は扉から数メートル後ずさった。
 いつでも動けるように僕らは腰を落とし、魔力を練って待ち構える。
 一向に開かない扉に業を煮やしたのか、向こう側では扉を叩く音が止み、代わりにギュイイィィィン! と甲高い金属を削るような耳障りな音が響き始めた。
 その音は一分近く続き一際大きくなった瞬間、二メートルはあろうかという巨大なドリルが鋼鉄の扉を勢いよく貫いた。
「な、なんなのよ!?」
「い、一体なんなのですか!?」
「皆! 散るんだ!!」
 男の子のロマンが詰まった大型ドリルが逆回転し扉の向こう側に引き戻される。
 その瞬間に空いた穴から熱気がブワッと流れ込んできた。
「暑っ!」
 異様な熱気と地下故の湿度の高さが、まるでサウナのように湯気を立たせる。
 ギギギギ……!
 無理矢理その穴に手を掛けて扉を抉じ開けようと、三本の鋼鉄のアームが向こう側から繰り出された。
 ゆっくり、ゆっくりと金属の軋む音を響かせて扉は開き始める。
「な、な、な!?」
「何て大きさなの!?」
「こんな相手に……!?」
 揺らめく蒸気と共に顔を覗かせたのは赤く光ったモノアイだった。
 こ、これが……、アトラスデルタ!
「カッコイイ!!」
 思わず僕のテンションが上がってしまう。
 スパ○ボ魂が震える。
「何をバカなことを言っておるのじゃ!」
 シュナにツッコまれ、僕はハッとする。
 確かにそんな場合じゃなかった。
「来るぞ! 出てくると同時に、魔法で先制するのじゃ!」
「は、はい! 先生!」
「よし! 僕もやるぞ!」
 僕とハルカとシュナは魔力を練り上げていく。
「ナスカとウェンディには、二の太刀を頼んだのじゃ!」
「「はい!」」
 ナスカはゆっくりと剣を抜き放ち正眼に構え、ウェンディの構えた弓矢からはバチバチと電撃が放たれだした。
 やっぱロボットには電撃だろうけど、みんながてんでバラバラな属性攻撃を出したら、多分倒せないだろうな……。
 そんなことを考えながら僕はゆっくりと開いていく巨大な扉を見つめる。
 どんな攻撃がいいだろう?
 ロボットにはロボットがいいんだろうか? ダイゼ○ガーとかグル○ガスト参式とかかな?
 そんなの出したら僕が違う意味で破滅しそうだな……。
 よし! やっぱりアレでいこう!

 ついに扉は開ききり、中からは巨大なロボットが白い蒸気と共に現れた。
 足は人間の足にアーマーを着けたような太さで、ふくらはぎのところにはバランスを保つタイプの小さなバーニアがある。腰はリアル系に有りがちなスカートタイプ。身体には特に特徴的なものはないが、代わりに右側に大きなドリルが備え付けられ、左は三本指のアームに背中から二本の補助アームが覗いていた。
 大きさとか加味して総合的に言うなら、アーマー○コアタイプだね。
 僕、スーパー系が趣味なんだよね。
 ドリルは点数高いけど、あそこまでいってリアル系を貫くのは、ちょっと微妙だなぁ。あ、勿論モノアイは男の夢だよ!
「ゆくぞ! 紫雷絶衝……!」
 シュナの周りにこれまで見たことのない紫色の電撃が迸る。
 ちょっと何それ!?
 姐さんそんなカッコイイ技、使えたの!?
「究極魔法って、本気ですか!? ちょっとみんな! 逃げて! 今すぐ逃げて!!」
 魔法を発動しようと構えていたハルカが慌てて振り返り僕らにそう叫ぶ。
「きゅ、究極魔法!?」
「と、とにかく今は、ハルカさんの言う通りにしましょう!」
 僕らはその言葉で後ろの通路へと一斉に逃げ出した。
 ちなみに神父はアトラスデルタが起動された時の放送で逃げ出し、今は奥の通路の影から顔を半分だけ覗かせている。
 僕らは強くなる紫電の煌めきの中、何とか神父の後ろに隠れると神父を盾にするように押し出した。
「ちょ!? や、やめてください!! 私がどうなってもいいと言うのですか!?」
「「「「いい!」」」」
「ぐはっ……! わ、分かりました! これも試練なのですね……。確かに私は、戦闘ではなんの役にも立ちません。ですが! ですがここで! 皆さんの盾となり! 皆さんをお守りすることが! 唯一私にできる戦いだと言うのですね! 女神様!!」
 そう言って神父は両手を広げ、僕たちの前に背を向けて「さぁ! 来なさい!!」と立ちはだかった。
 さすがに可哀想だからそっと僕は結界を張っておく。
 僕たちがそんなやり取りをしている間に紫雷の輝きが一際強くなったかと思うと、アトラスデルタが右のドリルを大きく振りかぶり、シュナに向けてその切っ先を突き出した。
「もう遅いわ! 紫雷絶衝! アブソリュート・インパクト!!」
 僕たちの視界は全て、目映い紫の光に包まれた。

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