アホと魔女と変態と (異世界ニャンだフルlife)

影虎

文字の大きさ
41 / 53
四章 遺跡探索

遺跡探索 17

しおりを挟む
「さあ、終わりましたよ皆さん!」
 そう言って神父はモザイク上のシンボルを見せ付けるように、フェンスの側に立つ四人の女性たちの元へと走って行く。
「来るなぁ! 変態!」
「バッッッカじゃないの!!」
「矢で射っていいですか、シュナさん!」
「や、止めんか! 一応あれでも神父であることは間違いないみたいじゃぞ!」
 逃げ出した女性陣はシュナの言葉に首だけで後ろを見やり、モザイク上の毛のなくなった部分に目を向ける。
「まごうことなき変態じゃないですか!?」
「あんな所に本当にシンボル入れるとか、バチ当たり過ぎ!!」
「死ねばいいのに! 死ねばいいのに!!」
「こ、これで皆さん……! 私のことを、信じて! いただけましたかぁぁ!!」
「「「来るなぁぁぁ!!」」」
「なんか、親友ばかり楽しそうなことをしてズルいのだ! 女性の尻を追っかけるなら、我輩も混ぜてくれぇ!」
 僕の隣にいたバカ竜が猛然と女性陣へ突っ込んで行く。
「「「きゃあああぁぁぁぁ!!」」」
「な、なんで我まで、逃げねばならんのじゃ!?」
「し、信じて……! 信じて、もらえましたかぁぁ!?」
「さあ女性たちよ! 愛の伝道師たる我輩の愛を、受け取るがいいぞぉ!!」

 もう何が何だか……。
 僕はその場に座ると、一人蚊帳の外で静かに顔を洗った。
「に、ニート!! 一人でなにやってんのよ!?」
 ハルカの叫び声が聞こえてきたので僕は首だけそっちを向けると、先頭を走っていたシュナを追い越して、歯を食い縛り鬼のような形相をした彼女が僕に向かって走ってきた。
「ちょ!? 僕は悪くない! 僕、何にもしてない!!」
「うっさい! 一人だけ仲間外れは、寂しいでしょ!!」
「さ、寂しくない! こっち来るなぁ!」
 ハルカの意図を読み取った他の三人も僕を巻き込むルートを取って走ってくる。
「ちょ!? ホントに、こっち来るなったら!!」
 僕は彼女たちの先陣を切る形で走り出した。
「な、なんで僕まで巻き込むんだよ!?」
「あんたが、魔法で神父のを剃ったのが原因でしょ!!」
「ぼ、僕はカミソリ出しただけだもん! ていうか、神父を教会の人間だと認めれば……」
「「「「誰があんなの!!」」」」
 そこ、声揃えないでよ!
 まぁ全裸で走りながら自分のモザイクの上を見て認めろと迫ってくれば、こうなるけどさぁ……。
 その隣のバカ竜は知らない!
 あいつは頭が腐ってる!
「もぅ……!!」
 僕はこの状況を打破するためピョンと横にジャンプすると、ハルカの頭の上に飛び乗った。
「ちょっ!? コラ! ニート! あんたこの状況で何ふざけてんの!!」
 頭の上に乗った僕を走りながら振り落とそうと、ハルカが頭の上に手を伸ばす。
「ぼ、僕が魔法であの二人を止めてみせるから!」
「ほ、本当でしょうね!?」
「ニートちゃん! お願い!」
「大丈夫ですよ、ニート君! 失敗したら私があの変態共を葬ってあげますから」
「その思考から離れんか! お主は!」
 そんなやり取りをしている女性たちを見やりながら、僕は彼女たちの後ろから迫ってくる全裸の二人に目を向けた。
「再現魔法! 進入禁止ポール!」
 全裸の二人の目の前に突如、公園とかによくある金属製のポールが現れた。
「な!?」
「うお!?」
 突然のこと過ぎて二人は案の定止まりきれずそのポールに激突する。
 ガチッ!!
「「うごおおぉぉぉぉぉぉ!!」」
 その音を聞いた女性陣は立ち止まり後ろを振り向くと、二人の変態が股間を押さえて踞っていた。
「「お、お、お、お、ほうぅぅぅぅ……、ほうぅぅぅぅ……」」
 二人に近付く女性たちの視線はとても冷ややかなもので、まるで汚物を見るような表情をしている。
 まぁ、分かるけどね……。
 そして四人の女性たちは彼らを取り囲むと、おもむろに足をあげ二人の男に蹴りを入れ始めた。
「お主ら、よくもやってくれたな!」
「滅びろ!」
「このど変態が!」
「生まれてきたことを謝りなさい!」
 バキッ! ゲシッ! ドカッ!
「いたっ! や、やめっおごっ! やめてっごっ!」
「女性たっごっ! やめるのだっぼっ! わ、我輩の愛を取り合うのはっぶほっ!」
 自業自得ですよねぇ……。
 僕は彼女たちの後ろからその様子を眺めつつ、ポールの魔法を解除してゆっくりと毛繕いを始めた。



 それから三十分後……。
 女性陣は二人の変態をボコボコにしたことでストレスを発散しきったようで笑顔を携えていた。
 僕はそんな彼女たちの横で仕方なく二人にパーフェクトヒールをかけてあげる。
 これでやっと、本来の目的である探索について算段を立てることができるようになった。
 つまり今僕たちのいる大きな部屋の中央の、マグマに通じるトンネルにある脇道である。
 これについてはもう対策は出来ていた。
 バカ竜の背に乗っていく際に僕の魔法でシートをつけるのである。
 最初は嫌がっていたバカ竜だったが、四人の女性たちがニコリと笑い空を蹴り始めた途端に二つ返事で了承してくれた。
 なので僕たちはバカ竜の背中に僕の魔法で作ったシートに座り、トンネルの脇道へと進んで行くことになった。
「熱っ!」
「いくら結界で囲ってアイスブロックを魔法で造り出しても、熱いものは熱いわよ」
「はぁ……。ニート君、なんとかならないものですか?」
 思い思いの言葉を並べ立てる彼女たちを見て僕は苦笑してしまう。
「てかウェンディ、キャラ変わってない? 前はもっとお嬢様してた気が……」
「あぁ、あれはウェンディがちょっと人見知りだったせいだよ」
「そうなの?」
「女心の分かんない奴ね。そんなこと本人の前で言うもんじゃないでしょ!」
「本当ですわよ。ニート君は、後でお仕置きです」
「えぇ!? なんで僕だけ!」
「お主ら! もう着いたぞ! さっさと降りるのじゃ!」
「「「「は、はい!」」」」
 くだらない会話をしている内に僕たちは目的の場所へと辿り着いていた。
 シュナに言われて僕たちはその脇道に降り立ち、最後に神父が降りるのと同時にバカ竜が人形へと戻ってズンズン僕に迫って来た。
「親友よ! 小さき獣の親友よ! 貴様は我輩の親友だよな! 何故貴様は……! 何故貴様は……!」
 涙ながらにバカ竜が僕の前で跪き、僕の身体に手を置いて震えている。
 てか僕を掴む手、嫌に力入ってるんですけど!?
「いた! いたたたっ!」
「貴様だけ何故! 我輩の背中であんなにも! うぅぅ……。うらやま、羨ましいぞぉぉ……!」
「痛いっつってんだろ!! このバカ竜!!」
 僕は本気の猫パンチをバカ竜の顔にお見舞いする。
 バチィィィィン!!
「ぼぎゃぁぁぁぁ!!」
 目の前にいたからだけど、僕の手が当たった瞬間面白いくらいにバカ竜の頬肉が揺れて、三、四度頭がガクガクした後白眼を剥いて昏倒してしまった。
「置いてこっか……」
「「「意義なーし」」」
「うむ」
 僕らはバカ竜をその場に置いて先に進み始めた。

 先に目を向けた途端、僕たちの目には青色の光が入り込んでくる。
「な、なんでしょう!? この光は……。猫様」
「「「「……」」」」
 アレ? お前の後輩アッチでのびてるけど、いいの!?
 そんな視線を感じ取ったのか、神父は一言「これも試練です」とだけ言葉を発し、先程の質問の答えを待つように僕の顔を見た。
「……。それを探るために此処に来たんだろ。まぁ、何となく目星は付くけど……」
「な、何と!! 流石は猫様です!」
「へぇー。じゃぁ、なんなの、これ?」
 大袈裟にリアクションを取る神父を無視して女性陣が周りに光るライトの青色を見ながら僕に疑問を投げ掛けてくる。
「あんまり……、当たって欲しく、ないんだよね……」
 そんな時だった。
『居住…… にて侵入…… 検知……』
 この遺跡に入って来た時と同じく天井から緑色の光が落ちてきて僕たちの身体を照らし出した。
 やっぱりか!!
 ていうことは、あの青いランプは蟻型ロボットと同じなんじゃ……。
『照合…… 一致…… ません…… 刻排除……』
 その機械音が消えると同時に僕らの周りの緑色のライトが消え、青色だったランプが赤い光に変わった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...