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WORKS1 転生社畜、女子高生を買う
💰見た目は少年、中身はオジサン
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玄関の扉を開けると、大きなシャンデリアが飾られた大階段。
そこから見えるだけでも五つの扉がある。
いったいココは何LDKなのか。チトセには想像もつかない。
「⦅……すごい⦆」
※⦅⦆内は日本語です
チトセは小声でつぶやき、そのままポカンと口を開けたまま固まってしまった。
「⦅どうしたんだ? 早くこっちに来い⦆」
正気を取り戻し、声のした方へと顔を向けると、自分と同じ歳くらいの少年が、部屋の扉を開けて待っている。
何もわからないまま、いつの間にか捕らわれの身となっていたチトセを檻から出してくれたダリスと名乗る少年。
長く伸ばした京紫色の髪と、躑躅色の瞳。日本は元より、海外でも見たことの無い、現実離れした外見と、その唇から発せられた日本語の組み合わせ。
それはまるで、人形が喋っているかのようで。
自身のことを『元、日本人』と言い出したときは頭がおかしいのではないかと思ったけど、ほかに頼れる人もいないチトセには彼についていく選択肢しかなかった。
果たしてどんな場所に連れていかれるのか。
不安八割、好奇心二割。その結果が、この豪邸である。
ダリスに勧められるまま、応接間と思われる部屋に入ると、テーブルを挟んで椅子に座る。
「⦅もしかして、ダリスってお金持ち?⦆」
「⦅お金持ちなのは実家だ⦆」
曰く、彼は貴族令息(三男)なのだそうだ。
貴族……、現代社会では耳慣れないワード。
さきほど『君の知っている世界じゃない』と言われたのだけど、まるで世界史の授業で習った中・近世のようじゃないか。
いや、現代でもヨーロッパあたりには貴族がいるんだっけ。
「⦅つまり、ダリスはボンボンなのか⦆」
「⦅そのボンボンのおかげで助かったのは、誰だ?⦆」
「⦅あ、ボクだ⦆」
と答えて、チトセはまだダリスにお礼を言っていないことに気がついた。
「⦅そういえばお礼、言ってなかったね。助けてくれてありがとう⦆」
「⦅どういたしまして⦆」
ニコリと笑ったダリスの笑顔はまだあどけない。
背丈や彫りの深さから、なんとなく同じ年頃のように感じていたけど、もしかすると年下かもしれない。
「⦅ダリスって……年はいくつ?⦆」
「⦅ん? 十五⦆」
二つも年下だった。
現代なら中学生じゃない。
それにしては、喋り方がちょっと大人びているというか……。
「⦅それにしても、まさか異世界で、日本のJKと出会うとはな⦆」
いや、じぇーけーって。
そうか。ダリスの喋り方って大人びてるんじゃなくてオジサンくさいんだ。
「⦅じぇーけーって。ダリス、オジサンみたい⦆」
心で思うのと同時に、そのまま口に出してしまっていた。
本人も気にしていたのだろう。ダリスは一瞬、目を開いて驚きを顔に浮かべる。
そして右手で後頭部を掻きながら、小さくため息を吐いた。
「⦅仕方ないだろ。転生する前は、日本のオジサンだったんだから⦆」
てんせい?
輪廻転生とかそういうやつ?
つまり、ダリスは前世が日本人のオジサンで、今の姿は生まれ変わりということだろうか。
「⦅転生? ダリスは生まれ変わったの?⦆」
「⦅まあ、そういうことらしい。前世では三十五で死んで、こっちの世界で生まれ変わって十五年だ。チトセは転移だろ?⦆」
三十五年と十五年、合わせて五十年分の記憶があるのか。
そして、さも当然のように出てきた『転移』というワード。
聞いたことがあるような、ないような。妙に頭の端に引っかかる。
「⦅ああ。女子高生は見ないか。そういうアニメとか、ラノベとか⦆」
アニメ、ラノベ……。あっ!
先ほどから頭の端に引っかかっているものの正体が見えた。
「⦅もしかして、異世界転移?⦆」
「⦅そうそう! へえ、もしかして、そういうの好きなタイプ?⦆」
ちょっと落ち着いた喋り方はどこへいったのか。
ダリスは急にテンションを上げて、身を乗り出してきた。
チトセが『異世界転移』というワードを知っていたことが、よほど嬉しかったらしい。同好の士を見つけた、とでも思っているようだ。
しかし残念ながら、彼の期待には応えられそうにない。
「⦅ううん。そういえば、弟がそんなアニメを見てたなって。今、思い出した⦆」
「⦅ああ、そっか。……うん、そうだよな⦆」
ラノベアニメ好きの女子高生なんかいなかった、とか思っているのだろう。
瞬間沸騰したテンションが、一瞬にして冷めていく様子が表情からわかる。
本人曰く、中身はオジサンらしいけど、感情のままにテンションが上下する様子は実年齢の十五歳相応に見える。子どもオジサンかな?
しかし……、そうか。“異世界”転移か。
「⦅つまり……、ココは異世界ってこと?⦆」
「⦅その通り。それも、剣と魔法のファンタジー世界だ⦆」
「⦅剣と魔法? ……なにそれ。意味わかんない⦆」
今日だけで何度この言葉を口にしただろう。
本当に何から何まで意味が分からない。
そういう設定のマンガを読んだことはあるし、状況を全く理解ができていないわけではないのだけど……。いざ自分がそういう世界にいるのだと言われても、全く実感が湧いてこない。
この気持ちは、ダリスにもしっかりと伝わっているようで。
意味もなく窓の方を見たり、気まずさが態度に現れている。
しばらくして、ダリスは意を決した様子で口を開いた。
「⦅……なあ、取引をしないか?⦆」
なにを言い出すかと思えば……。
取引だって。
💰Tips
【集中力】
気持ちや注意を一点に集めることができる力。
ダリスのスキル『真・鑑定』によって、戦闘力と同じく10段階で表される。
こと戦闘においては、特に遠距離攻撃において集中力が必要とされる。
集中力が低いと、攻撃が当たらないばかりか味方に当たってしまうことも……。
そこから見えるだけでも五つの扉がある。
いったいココは何LDKなのか。チトセには想像もつかない。
「⦅……すごい⦆」
※⦅⦆内は日本語です
チトセは小声でつぶやき、そのままポカンと口を開けたまま固まってしまった。
「⦅どうしたんだ? 早くこっちに来い⦆」
正気を取り戻し、声のした方へと顔を向けると、自分と同じ歳くらいの少年が、部屋の扉を開けて待っている。
何もわからないまま、いつの間にか捕らわれの身となっていたチトセを檻から出してくれたダリスと名乗る少年。
長く伸ばした京紫色の髪と、躑躅色の瞳。日本は元より、海外でも見たことの無い、現実離れした外見と、その唇から発せられた日本語の組み合わせ。
それはまるで、人形が喋っているかのようで。
自身のことを『元、日本人』と言い出したときは頭がおかしいのではないかと思ったけど、ほかに頼れる人もいないチトセには彼についていく選択肢しかなかった。
果たしてどんな場所に連れていかれるのか。
不安八割、好奇心二割。その結果が、この豪邸である。
ダリスに勧められるまま、応接間と思われる部屋に入ると、テーブルを挟んで椅子に座る。
「⦅もしかして、ダリスってお金持ち?⦆」
「⦅お金持ちなのは実家だ⦆」
曰く、彼は貴族令息(三男)なのだそうだ。
貴族……、現代社会では耳慣れないワード。
さきほど『君の知っている世界じゃない』と言われたのだけど、まるで世界史の授業で習った中・近世のようじゃないか。
いや、現代でもヨーロッパあたりには貴族がいるんだっけ。
「⦅つまり、ダリスはボンボンなのか⦆」
「⦅そのボンボンのおかげで助かったのは、誰だ?⦆」
「⦅あ、ボクだ⦆」
と答えて、チトセはまだダリスにお礼を言っていないことに気がついた。
「⦅そういえばお礼、言ってなかったね。助けてくれてありがとう⦆」
「⦅どういたしまして⦆」
ニコリと笑ったダリスの笑顔はまだあどけない。
背丈や彫りの深さから、なんとなく同じ年頃のように感じていたけど、もしかすると年下かもしれない。
「⦅ダリスって……年はいくつ?⦆」
「⦅ん? 十五⦆」
二つも年下だった。
現代なら中学生じゃない。
それにしては、喋り方がちょっと大人びているというか……。
「⦅それにしても、まさか異世界で、日本のJKと出会うとはな⦆」
いや、じぇーけーって。
そうか。ダリスの喋り方って大人びてるんじゃなくてオジサンくさいんだ。
「⦅じぇーけーって。ダリス、オジサンみたい⦆」
心で思うのと同時に、そのまま口に出してしまっていた。
本人も気にしていたのだろう。ダリスは一瞬、目を開いて驚きを顔に浮かべる。
そして右手で後頭部を掻きながら、小さくため息を吐いた。
「⦅仕方ないだろ。転生する前は、日本のオジサンだったんだから⦆」
てんせい?
輪廻転生とかそういうやつ?
つまり、ダリスは前世が日本人のオジサンで、今の姿は生まれ変わりということだろうか。
「⦅転生? ダリスは生まれ変わったの?⦆」
「⦅まあ、そういうことらしい。前世では三十五で死んで、こっちの世界で生まれ変わって十五年だ。チトセは転移だろ?⦆」
三十五年と十五年、合わせて五十年分の記憶があるのか。
そして、さも当然のように出てきた『転移』というワード。
聞いたことがあるような、ないような。妙に頭の端に引っかかる。
「⦅ああ。女子高生は見ないか。そういうアニメとか、ラノベとか⦆」
アニメ、ラノベ……。あっ!
先ほどから頭の端に引っかかっているものの正体が見えた。
「⦅もしかして、異世界転移?⦆」
「⦅そうそう! へえ、もしかして、そういうの好きなタイプ?⦆」
ちょっと落ち着いた喋り方はどこへいったのか。
ダリスは急にテンションを上げて、身を乗り出してきた。
チトセが『異世界転移』というワードを知っていたことが、よほど嬉しかったらしい。同好の士を見つけた、とでも思っているようだ。
しかし残念ながら、彼の期待には応えられそうにない。
「⦅ううん。そういえば、弟がそんなアニメを見てたなって。今、思い出した⦆」
「⦅ああ、そっか。……うん、そうだよな⦆」
ラノベアニメ好きの女子高生なんかいなかった、とか思っているのだろう。
瞬間沸騰したテンションが、一瞬にして冷めていく様子が表情からわかる。
本人曰く、中身はオジサンらしいけど、感情のままにテンションが上下する様子は実年齢の十五歳相応に見える。子どもオジサンかな?
しかし……、そうか。“異世界”転移か。
「⦅つまり……、ココは異世界ってこと?⦆」
「⦅その通り。それも、剣と魔法のファンタジー世界だ⦆」
「⦅剣と魔法? ……なにそれ。意味わかんない⦆」
今日だけで何度この言葉を口にしただろう。
本当に何から何まで意味が分からない。
そういう設定のマンガを読んだことはあるし、状況を全く理解ができていないわけではないのだけど……。いざ自分がそういう世界にいるのだと言われても、全く実感が湧いてこない。
この気持ちは、ダリスにもしっかりと伝わっているようで。
意味もなく窓の方を見たり、気まずさが態度に現れている。
しばらくして、ダリスは意を決した様子で口を開いた。
「⦅……なあ、取引をしないか?⦆」
なにを言い出すかと思えば……。
取引だって。
💰Tips
【集中力】
気持ちや注意を一点に集めることができる力。
ダリスのスキル『真・鑑定』によって、戦闘力と同じく10段階で表される。
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集中力が低いと、攻撃が当たらないばかりか味方に当たってしまうことも……。
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