💰転生社畜と転移JKのダンジョンビジネス合同会社💰 〜奴隷を買いに来たら女子高生が売られていた件について〜

石矢天

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WORKS2 転生社畜、女子高生に学ぶ

💰ふたつのお願い

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「ジュハ! 右から暴れ角牛ランページバイソンがくるぞ!!」
「はい!」
「⦅チトセ! 左のヤツがフリーだ!!⦆」
「⦅わかってる⦆」
 ※⦅⦆内は日本語です

 ジュハがモンスターをさばいて、一匹になったところをチトセが叩き斬る。
 言葉が通じない二人の間を繋ぐのがダリスの役目。
 この世界の言葉と、日本語とを瞬時に切り替えながら、ジュハとチトセに指示を飛ばしている。

 欠けていた歯車がピタリとハマったようにスムーズな連携。
 新メンバーを迎えて二週間が経ち、パーティーはダリスの思い描いていた通りの理想的な役割分担を実現していた。……ただ一人、美人な彼女を除いて。


 あの日の夜。
 ダリスはチトセから二つの『お願い』をされた。

 一つ目のお願いは、ヨミについてはチトセに一任すること。
 ダンジョンに無理やり連れて行ってモンスター狩りをさせるような真似はしてくれるな、と。

 高いお金を払って、正確にはこれから11カ月も金貨10枚を払い続けることで手に入れた、貴重な戦力の片方が穀潰しのニートになるわけで、簡単に承服できる内容ではない。

 だけど、ちょっと思い浮かべてみて欲しい。
 セーラー服を着た女子高生が両手を合わせ「⦅一生のお願い!⦆」と頭を下げている情景を。そのまま上目遣いでこちらの顔を覗き込んでくるシチュエーションを。

「⦅お、おう。わかった⦆」

 思わず、そう答えてしまったダリスのことを、誰も責めることなどできない。
 セーラー服を着た女子高生には、それだけの力が秘められている。まさに神秘。

 それに今となってはチトセに任せて良かったと思っている。
 あのまま無理やり外に連れ出しても、本人にヤル気がなければパーティーにとってもマイナスだっただろう。

 それに、初めは部屋からほとんど出てくることのなかったヨミが、少しずつ顔を見せるようになり、ダンジョンにも一緒に来るようになった。
 戦闘には参加しないけど、モンスターから離れた安全な場所から、チトセとジュハが戦う様子を見ている。大きな進歩だ。

 二つ目のお願いは、ダリスがチトセに言葉を教えること。
 この世界の言語と日本語、その両方を習得している者はダリスしかいない。

 いや、ダリスと同じように異世界転生した者や、チトセと同じように異世界転移した人が、この世界のどこかにいる可能性は否定できないのだけど。

 ともかく、チトセの近くにいて、彼女にこの世界の言葉を教えられるような人物はダリスしかいなかった。

 そちらについては考える時間など一秒も要らず「もちろん、いいとも」と答えた。

 ヨミのことを一任する以上、言葉が全く話せないのでは困る。
 それにパーティーだって、チトセ自身が直接メンバーとコミュニケーションを取れる方法が見つかってくれれば、ダリスがいちいち通訳のためにダンジョンまでb同行しなくても済む。願ったり叶ったりだ。


「⦅んー、やっ!⦆」

 チトセの持つ黒くて堅くて大きい大剣が、最後のランページバイソンの首を胴体から斬り離すと、先ほどまで力いっぱい走り回っていた巨体がチリとなって風に消えていく。

 コトン、と音を立ててこぶし大の魔光石が地面に転がった。
 何度見ても不思議な光景だ。

「これで、いくら、くらい?」

 さっき倒したモンスターが落とした魔光石は四つ。
 拾ったチトセが、それらをダリスへ渡しながら尋ねてくる。
 まだ片言だけど、この世界の言葉を使って。

 戦闘時以外ではなるべく日本語を使わない、それは彼女自身が決めたルールだ。
 その方が早く言葉に慣れるから、と。

「このサイズだと、一個で銅貨5枚くらいだな」
「じゃあ、全部で、銀貨2枚、だ」

 ダリスは「正解だ」と頷く。
 計算はもちろん、リスニング、スピーキングも合っている。

「今日は、もう少し、倒さないと」
「そうだな。ジュハもまだいけるか?」
「ハァ、ハァ、ハァ。……は、はい。大丈夫、です!」

 長い耳をペタンと垂らし、息を切らしているジュハが、苦しそうに答えた。
 戦闘力Sのチトセと、戦闘力Eのジュハでは基礎体力が違う。
 オリンピックのメダリストと、運動嫌いな帰宅部の学生くらい違う。

 ジュハの体力に合わせるなら、そろそろ切り上げた方が良いのだろうけど……。
 ダリスは今日の成果が詰まったバックパックの重さを確かめながら逡巡する。

 端的に言えば……まだ、足りない。
 ダリス、チトセ、ヨミ、ジュハの生活費が一カ月で金貨1~2枚くらい。
 体力や魔力を回復するポーションなどの消費アイテムが一カ月で金貨2枚くらい。
 そして分割払いにしている買掛金(負債)の支払いが毎月金貨10枚。

 雑費なんかも考えると、少し余裕を見て金貨15枚は稼がないと追いつかない。

 ダンジョンだって毎日来れるわけじゃない。
 チトセ達にだって休養が必要だから、一カ月で十回くらい。
 そうすると一回当たりの平均で金貨1枚と銀貨5枚が必要となる。

 今日の稼ぎは金貨1枚を少し超えたところ。
 帰り道でも多少はモンスターと遭遇するとしても、ここでもう少し魔光石を稼いでから帰りたい。

 ダリスは太陽の位置を確認し、帰りまでの時間を逆算する。
 なるべく大きな魔光石を落とすモンスターを求めて、ダンジョンの奥の方まで来てしまったから戻るのにも時間がかかる。

 ダンジョンには基本的に明かりというものがない。


 日の光を頼りにしているモンスターは姿を隠し、日の光を必要としないモンスターが活動を始めるのが『夜』という時間だ。

 一応、緊急時用の照明器具として角灯ランタンを用意してはいるが、夜行性のモンスターから襲撃を受けたらまるで役に立たない。

 ダンジョンで狩りをする時間にも限りがある。
 ……あと二回、いや最悪一回でタイムアップか。

「よし。じゃあ、もう一本やったら帰ろうか」
「はい!」

 ジュハの顔から笑みがこぼれ、返事にも力が入っている。
 先ほどまでヘナヘナしていた耳も、心なしかピンとした気がする。
 終わりが見える、というだけで少し元気がでるものだ。


 しかし、数分後。
 ダリスはこの選択を後悔する。

 すぐに帰ってさえいれば……。

💰Tips

角灯ランタン
 一般的には金属製の枠にガラスで四面を張った、四角形の灯火のこと。
 ダリスが持っているものは手提げ用で、しかもサイズが小さいため、本当に気休め程度の明かりにしかならない。
 ガラス部分はとても割れやすいため、さらにメッシュ状の金属(金網のようなもの)で覆われている。
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