💰転生社畜と転移JKのダンジョンビジネス合同会社💰 〜奴隷を買いに来たら女子高生が売られていた件について〜

石矢天

文字の大きさ
35 / 48
WORKS3 転生社畜、女子高生と見つける

💰ある男のたくらみ

しおりを挟む

「すみませーん!!」

 男はある噂を頼りに、平原の街ザンドの外れにある屋敷を訪れた。

 来客を知らせるために設置されたベルを鳴らし、屋敷の奥に向かって声を張り上げる。

 貴族の邸宅にしか見えない立派な住居。
 本当にこんなところで買えるのだろうか、と半信半疑のまま返事を待つ。

「はい」と扉を開けたのは、可愛いウサギの耳を持った亜人の少年だった。
 この屋敷で働いている奴隷だろうか。貴族は亜人奴隷を好まないと聞くが、この家の主人はそういう体面を気にしないタイプなのか、それとも……。
 いや、いまはそんなことを気にしている場合ではない。
 
「ココに来れば、『うろこの盾』を売っていただけると聞いたのですが……」と、口にしながら男は心の中でかぶりを振る。
 バカバカしい。やはり噂は噂だ。
 こんな立派なお屋敷で武具を売っているハズがない。

「いえ、あの、なんでもありま――」
「お一人様、一つ限りになります」

 思い直して立ち去ろうとしたところで、亜人の少年から思いがけない言葉が飛び出した。

「えっ……!?」
「申し訳ございません。『うろこの盾』は限定品で、数に限りがございますので」

 男の驚きの声を『お一人様、一つ限り』に対するものだと勘違いしたらしく、亜人の少年は恭しく頭を下げる。
 過去に、もっと売ってくれとゴネた客がいたのかもしれない。

「あ、はい。構いません」
「それではお待ちの間に、金貨を1枚ご用意ください」

 そう言って亜人の少年は屋敷の奥へと下がっていった。
 うろこの盾を取りに行ったのだろう。

 男は硬貨を入れた革袋から、事前に用意しておいた金貨を1枚取り出す。
 一応、多めに持ってきておいたのだけど、値段も噂で聞いていたとおりだった。

 うろこの盾は金属製の盾と同じくらい頑丈で、木製の盾と変わらないくらい軽いという。
 巷の武具屋であれば、金貨5枚は下らないだろう。それがたったの金貨1枚で買える、なんて耳を疑うような噂。

 こういった噂は、往々にして尾ひれ背びれがついて話が大きくなっているものだ。
 金額が噂通りならば、話が盛られているのは品質の方に違いあるまい。

 男の憶測は「お待たせしました」という声と共に、亜人の少年が持ってきた『うろこの盾』によってスッパリと否定された。

 一見すると、その辺の武具屋で売っていそうなラウンドシールドだが、その表面は見慣れない色をしている。まるで返り血でも浴びたかのように赤黒く、凹凸があって、まるで生きているかのような生々しさ。

 金属製の盾とは比べ物にならないほど軽く、赤黒くなっている表面は見たことのない硬質な素材で覆われている。

「これが……うろこの盾」

 名前に『うろこ』と付いているのだ。きっとこの赤黒い部分が何かの鱗なのだろう。しかし男には全く見当が付かない。このようなグロテスクな鱗を持つ見たことも聞いたこともない。

 男は「あの」と尋ねる。

「この赤黒いものはなんですか?」

 秘密だと言われるかもしれない。自分なら教えたりはしない。
 それでも聞くだけならタダである。

 ダメ元で投じた問い掛けに、亜人の少年は事もなげに答える。

「モンスターの鱗です」

 男は金貨1枚を亜人の少年に渡すと、うろこの盾を持って山を一つ越えた先にある隣町へと帰っていった。そこで武具屋を営んでいる男は、噂の『うろこの盾』を手に入れて、それを再現することでひと稼ぎしようとたくらんでいた。

 しかし、どうやらそのたくらみは泡となって消えてしまいそうだ。
 モンスターの鱗なんて、仕入れる方法が思い浮かばない。

 そもそもモンスターというものは、倒したら魔光石だけを残してチリになって消えるのではなかったか。

 もしかすると、男は少年に担がれたのかもしれない。
 彼が本当のことを言っている補償など、どこにもないのだから。


💰 🪙 💰 🪙 💰 🪙 💰 🪙 💰


 平原の街ザンドで一番大きなクラン『ホークスブリゲイド』のリーダー、ショウが側近と並んでクランのアジトにある大広間を歩いている。

 大広間では新米からベテランまで様々な冒険者が集まり、ダンジョンへ向かう準備をしていた。数は多くないが、血で染めたような赤黒い盾がちらほらと目に飛び込んでくる。

「最近はなんというか……変わったデザインの盾を持っている者が増えましたね」
「ああ。巷で噂になっている『うろこの盾』ですね」

 その名前を聞いて、ショウの頭の中で噂と中身が合致した。
 金属製の盾と同じくらい頑丈で、木製の盾と変わらないくらい軽い、そんな盾があるという噂が流れていることは知っていたが、それがあのグロテスクな盾だとは思わなかった。

 噂はあくまで噂。そんな都合の良いモノが存在するはずがない、と記憶の片隅に押しやっていた。

「そんなに良いモノなのですか?」
「先日、メンバーから現物と見せて貰いましたが、素晴らしいモノでした。軽い、硬い、しかも安い」

 安い、と言われてショウも噂の続きを思い出す。

「金貨1枚、でしたっけ?」

 はい、と頷く側近の隣で、ショウは首を横に振った。

 あまりに安すぎる……。
 品質が噂通りであれば、少なくとも金貨5枚は取るべきだ。

 高品質で低価格の商品が出回ると、市場が破壊されてしまう。
 今は限定品らしいからまだいい。しかし、そんなモノが安定供給されるようになったら、金属製の盾や木製の盾を現在の価格で買う者などいなくなるだろう。

 この『うろこの盾』を売っている者は街の武具屋ではあるまい。
 彼らが自分たちの首を絞めるような真似をするとは思えない。

「この『うろこの盾』とやらが、どこで買えるのか調べておいてくれませんか?」
「かしこまりました」

 大事になる前に手を打たなくてはなるまい。
 街を代表するクランのリーダーはやることが多い。



〇現時点の収支報告(1ヵ月分)
  資金:金貨29枚と銀貨5枚(295万円)
  収入:金貨11枚と銀貨5枚(115万円) ※魔光石売却益
     金貨40枚(400万円) ※うろこの盾40個分の売却益
  支出:▲金貨1枚と銀貨7枚(17万円) ※1ヵ月の生活費(奴隷3名含む)
     ▲金貨2枚(20万円) ※1ヵ月の消耗品費・雑費
     ▲金貨1枚(10万円) ※1ヵ月の装備補修・買い替え費
     ▲金貨10枚(100万円) ※奴隷購入費の分割払い
     ▲金貨8枚(80万円) ※ラウンドシールド40個分の仕入れ費

 残資金:金貨58枚と銀貨3枚(583万円)

 買掛金:▲金貨80枚(▲800万円) ※奴隷購入費の支払い残額(負債)



💰Tips

【ステマ】
 ステルスマーケティングの略である。
 広告であることを明示せず、さも消費者の口コミであるかのように情報を発信することで、より信頼できる情報であると誤認させる手法。
 古くは『ヤラセ』、『サクラ』とも呼ばれていたが、インターネットの普及によってその規模も数も爆発的に増えた結果、社会問題となった。

 アメリカや欧州連合においては早々に法規制がなされ、日本においても2023年3月に景品表示法が禁じる不当表示の類型として新たに指定された。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...