💰転生社畜と転移JKのダンジョンビジネス合同会社💰 〜奴隷を買いに来たら女子高生が売られていた件について〜

石矢天

文字の大きさ
39 / 48
WORKS4 転生社畜、女子高生とはじめる

💰開戦

しおりを挟む

「残念ながら交渉は決裂しました」

 武具屋の店主たちに向かって、ショウは残念そうに首を横に振る。

「なんですって!?」
「俺たちはアンタを信頼して、わざわざ頼みに来たんですよ!」
「俺たちに死ねっていうのか! これはアンタら冒険者の問題でもあるんだぞ!」

 顔を真っ赤にして憤る店主たち。
 都合の良いときにだけ使われる『信頼』という薄っぺらな言葉に、思わず失笑がこぼれる。

「ふふっ。早とちりしないでください。私は『交渉は決裂した』と申し上げただけです。交渉決裂のあとには当然、戦いが控えています」
「戦いだって? 乱闘でもしようってんですかい?」
「まさか。そんなことをしたら辺境伯の騎士団に鎮圧されてしまいますよ。冒険者同士の戦いはルールを守って静かにやるものです」

 四十五度、首を傾げている店主たち。
 ショウはそれ以上なにも語らず、窓から外を眺めていた。

 視線の遥か先には『静かな湖畔のダンジョン』がある。
 これから始まる戦いの舞台となる場所だ。

 ショウがダリスと手を組みたかったのは本当だ。
 だから残念だという気持ちも決して嘘ではない。
 あくまでショウが上、ダリスが下という序列の元で、彼の才能を、おそらくは彼が所有しているであろうギフトを、もっと有効活用していきたいと考えていた。

 だが一方で、彼が提案を断ったことを喜んでもいた。
 今、彼と手を組めば力関係は7:3、下手をすると6:4でギリギリこっちが上、といったバランスに収まる。

 だが、ここで一戦交えて彼をコテンパンにやっつけた上で手を組めば、力関係を8:2、いや9:1まで持っていくことができるだろう。

 そこに生まれるものは協力関係という名の従属。
 自分の手の中に収めたも同然となる。

 いや、もっとうまくいけば手を組むどころか、丸ごとクランに組み込むことだってできるかもしれない。

「ふっふっふ。待っていてくださいよ、ダリスさん。息の根を止めるギリギリで、私があなたに手を差し伸べる、その時を」

 一人で楽しそうに笑っているショウを、武具屋の店主たちが不思議なモノを見るような目で見つめている。首の角度は五十度に達しようとしていた。


💰 🪙 💰 🪙 💰 🪙 💰 🪙 💰


「うわ、ギッチギチだ」
「…………七、八、九、十。もう満席ですね」
「こんな狭い狩場に十人も先客がいんのかよ」
「なんだ、これは。……なんなんだよ、これは!!」

 思わず口から不満の声が飛び出す。
 原因はひとえにこの場の人口密度である。

 そもそもが狭い場所な上、ほとんどが沼になっていて戦える場所が限られている『蛇トカゲの沼地』に十人も先客がいるのだ。

 不人気エリアであるはずの沼地に、こんなに人がいるところを初めて見た。
 冒険者たちはダリス達に気づくと、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた。

「ようやく、おいでになられたぞ」
「やれやれ。今日はもう来ないのかと思ったぜ」

 明らかにダリス達に向けた言葉だ。
 もっと早い時間からこの場所を取っていた、ということだろう。
 まるで花見の場所取りじゃないか。

「おっ、アッチに獲物が出てきたぞ」
「よし、獲り逃すなよ」

 ナーガリザードが姿を現すと、すぐに取り囲んで巧みな連携で倒してしまう。
 一人一人の強さはそれほどでもないが、それなりに練度の高いパーティーであることが一目でわかった。

 それだけにアンバランスさが際立つ。
 これほどの腕があれば、もっと大きな魔光石が取れる狩場がいくつだってある。

 わざわざナーガリザードなんかを狩る必要はないハズ。
 ならば、その目的は。

「ちっ。これが……ホークスブリゲイドのやり方か」
「素材を剥ぎ取る方法はわからなくても、素材を剥ぎ取らせない方法なら簡単」
「あいつら、俺たちに一匹だって渡す気はないらしい」

 モンスターの数は一定。
 同じ場所で狩りをする冒険者が多いほど、効率はどんどん悪くなる。

 冒険者同士の争いはご法度。
 狩場の拠点は先着優先。
 戦闘中のモンスターの横取りは禁止。

 だからクランのメンバー総出で狩場を独占してしまえば、後から来た者は拠点を作ることができず、モンスターを狩ることができない。
 こういった人海戦術が取れるところもクランを結成するメリットの一つであり、ルールに則っている以上は正攻法である。

 仮に暴力で狩場を奪うことができるルールだったとしても、冒険者十人を相手にするのはリスクが高いからやらないだろうけど。

 目の前で、ナーガリザードが次々に狩られていく。
 それを黙って見ていることしかできない。
 口惜しさと歯がゆさを耐えるため、思わずグッと奥歯をかみしめる。

「……帰るぞ」

 小さな声で呟き、ダリスたちは蛇トカゲの沼地をあとにした。
 ダンジョンの奥地へと向かい、魔光石狙いのモンスター狩りへと切り替える。

 狩れども狩れども、心が晴れることはない。
 本来ならナーガリザードの鱗でいっぱいにするハズだった袋に魔光石を詰め込みながら、ダリスは自らの敗北に打ちひしがれた。


 執務室へ戻ると、ダリスはそのままソファーへと向かい、ドスンと身体を沈ませた。座り込んだ瞬間に、「くそっ!!」と悪態が口をついて出てしまう。 

 ショウが、ホークスブリゲイドが、ここまでやってくるとは思っていなかった。
 ダリスも素材を取れないが、ショウだってクランの人員を十人も無駄にしている。
 そこまでして嫌がらせをしたいのか、と考えるとはらわたが煮えくりかえった。

 今日の状況が続けば、今までのようにナーガリザードの鱗を集めることは難しい。
 とはいえ、このまま魔晶石を狙った狩りを続けても以前の売上に逆戻りだし、チトセ達に報酬を出すこともできなくなってしまう。

 どうすればいいのか……。
 チトセに助言を、という考えが頭をよぎるが振り払う。

『なにそれ。くっだらない』
『決めるのはダリスだから、別に良いけど』

 あの日から二人の関係は微妙だ。
 あからさまに避けられているわけではないが、どこか態度に壁を感じる。

「これは俺のビジネスなんだ。自分の力で打開できなくてどうする」

 決意を言葉にすることで、ダリスは自身を追い立てる。
 今できる最善を尽くすしかない。

 元々、うろこの盾の需要に限界がくるまでに、新しい武具を開発するつもりだったのだ。その時期が少し早まっただけのこと。



💰Tips

【人海戦術】
 人数の優位を利用して、目的を達成するためには多少の損害すらも厭わず数の力で押し切る戦術。数こそが重要であるため、人材の質よりも量を重視する。
 尚、『人海』とは、人が大勢集まっている様子を海に喩えたものである。

 対義語は『少数精鋭』、『一騎当千』となる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...