絵描き旅行者〜美術部員が、魔術師の絵の世界へ連れていかれました

香橙ぽぷり

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1日目

山編4 楽しい魚釣り(後)

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それからしばらくして…。
もう魚は充分なくらい釣れていた。
「よく釣れるな」
実がウキウキしながらそう言った。
拍子抜けするくらいあっさりと魚が釣れる。
それに対して、星成は不思議に思いながら返事をした。
「本当に。餌も何も付けてないのに」
本当に何も付けていない釣竿なのに、よく魚がかかってくる。
最初は釣りが出来るうれしさに餌を付けるのを忘れていたのだが、途中でふと気付いた。
『あれ?そういえば餌付けてなかったよな。
なのに何で釣れるんだろう?」
全くの謎だが、とにかく釣れるから2人は釣り続け今に至るのです。
「あ、また魚が寄ってきた」
川の水がきれいなため魚の動きがはっきりわかり、それもまた楽しい2人だった。
「釣れた」
星成が竿を引き上げた。
ドボン
釣った魚をバケツに入れて、バケツの中の魚を確認しながら、星成は実に言った。
「もう大分魚釣れたし、そろそろ止めるか?」
実はうなずいた。
「そうだな。じゃあ明里先輩のところに戻るか」
実は竿を引き上げて星成のところまで来た。
「釣りできてよかったよな」
実が笑顔で言うと、星成も笑って言った。
「そうだな。なんかちょっと簡単すぎた気もするけど、楽しかったよな」

明里は、マッチを持って待っていた。そして足元には小枝の山。
「お帰り-」
2人の姿が見えると大きく手を振った。
「ただいま」
2人はうれしそうに、明里にバケツの中を見せた。
「うわあ。よく釣れたね-」
明里は魚を見て歓声をあげた。
「はい。楽しいくらいに釣れちゃって」
そう星成は言って、心の中でこう付け加えた。
まあ、釣れなくても釣り自体楽しいけどな。
そして明里の持っている物に気付いた。
「あれ?明里先輩、そのマッチは-?」
「ああ、これはね-」
それに応えて、明里は自分が星成達と分かれた後のことを話し始めた。
「あたしが何かいい物はないかと林の中を歩いていると-。
『何か他に食べられそうなものないかな-?』
突然この電話があたしの手に飛んできて…。すっごいびっくりしちゃった。
それで見てみると、銀じいさんに電話するときの丸いボタンが光ってたの。
そのボタンを押したら、銀じいさんの声が聞こえてきたんだ。
『明里さん、今いるあたりには食べられるものは生えていないよ』
『あ、そうなんだ』
あたしがちょっとがっかりすると、銀じいさんが教えてくれたんだ。
『ただ、実くん、星成くんが釣ってきた魚は焼いて食べないとだめじゃろう?
だから燃えるものが必要じゃな。2人が帰ってくる前に落ちている枝を集めるといい』
『うん、そうするね』
あたしがうなずくと、銀じいさんが、
『あと火を付けるマッチは、絵を描くときに座っていた丸太の上に置いておくからのう』
だからマッチもあるってわけ。
どう?魚を焼けるくらい枝集まったでしょ?」
明里はそう言って枝の山を指差した。
実と星成は、明里の話を聞いて納得した。
それにしても、電話が飛んでくるなんて驚きだ。
星成はそう思ったが、さっきの電話で透達がそういう思いをしたことに気付いていない。
「じゃっ、魚焼いて食べよう。2人ともおなかすいてるでしょ?」
明里が実と星成に聞くと、2人ともしっかりうなずいた。
「はい。とっても」
もし現実の世界にいたら、夕飯の時間を過ぎているくらいの時間が経っていた。
明里は2人の答えを聞くと、マッチをシュッとすって、枝の山に火をつけた。
あれ?
星成はふと疑問に思った。
「明里先輩、どうやって魚焼くんですか?網もないし」
その星成の言葉に実も気付いた。
「このまま火に入れるとか?」
そんな2人に首を振って明里は教えた。
「ああ。それは魚に枝を刺して、火のまわりに立てるといいんだよ」
2人が知らないことも、明里は家族とのキャンプでいろいろ学んでいるのだった。
そして明里が教えながら、3人は魚を立てた。
星成も実も、そんな明里に改めて感心した。
明里先輩、すごいな-。やっぱりいろいろな経験をするって大事なんだな-。
星成はそう思った。
しばらくすると、こげ色がついていい匂いがしてきた。
「あ、焼けたかな」
明里がそう言うと、実は張り切って言った。
「じゃあ食べましょう、食べましょう」
3人はそれぞれ魚を手に取った。
「では、いただきます」
3人は魚を食べはじめた。
実と星成は、こういう食べ方は初めてだったけれど…。
「おいしい!」
「おなかすいてたからとっても幸せ」
3人とも、とてもうれしく魚を味わった。
そしておなかがいっぱいになると、バケツの中に残った魚を、感謝しながら川に戻したのでした。
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