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壱 彦吉と
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まだ人が着物を着ていた頃のこと、ここ、ある下町の通りにまつわる話がある。
今と変わらず、その頃もいろいろな商店が軒を連ねていた。
しかし雨が降ると、人通りが少ないうえに、からかさお化けが出たそうな。
からかさをさして歩いていると、自分の仲間と思うのか、愉快な顔をしたからかさお化けがおどかしにやって来る。
人が自分に驚いて逃げていくのを、からかさお化けは喜んでいるようだった。
なんと、そのからかさお化けと仲良くなった若者がいたそうな。
さて、雨が降る中、この通りの店の軒下に25歳ほどの若者が立っていた。
若者は振り出したばかりの雨空を見てため息をつく。
「さっきまで降っていなかったのだが…」
若者は隣村から用事があって、この下町の通りの店に来たのだが、からかさを持っていないのだ。
しばらく軒下にいたが、若者は心を決めた。
「ええい、走って帰ろう!」
そう自分に言って勢いよく走り出す。
ぴょんっ ぴょんっ
そんな若者の前に、愉快な顔をしたからかさお化けが現れた。
からかさお化けは、からかさをさしていない人間の前にも現れるらしい。
普通なら逃げ出すところだ。
からかさお化けは、若者が驚くのを楽しみにしていた。
しかし若者は驚いた様子を見せず、からかさお化けをじっと見ていた。
そしてからかさお化けに話しかけた。
「これがうわさのからかさお化けか。
なあお前、かさになってくれないか?」
若者は細かいところにこだわらない性格だったらしい。
からかさお化けは、動くことはできても、話すことはできない。
若者の行動に驚いていたけれど、しかし逃げることもなく、その場に立っていた。
若者はそんなからかさお化けの様子を見て、同意したと思った。
そこでからかさお化けの足を持ってかさにすると、自分の村へと歩き始めた。
若者は明るい顔をして、からかさお化けに話し掛ける。
「おらは彦吉。この町の隣村に住んでるんや。
おらの家はかさを買う余裕はなくてなあ。だからお前がいてくれてうれしかったんよ」
からかさお化けは、彦吉の頭の上で静かに話を聞いている。
からかさお化けは、話さない、顔も変わらない、しかし彦吉に付き合っているのを嫌がってはいないようだった。
帰り道は誰にも会わず、彦吉達だけだった。
雨の音が聞こえる中、静かな時間だった。
家に着くと、からかさお化けを降ろしてお礼を言う彦吉。
「からかさ、ありがとうな。おかげでぬれずにすんだ」
からかさお化けの頭をぽんぽんとたたく。
ぴょんっ♪ ぴょんっ♪
からかさお化けはいつもよりもうれしそうにジャンプして帰っていったそうな。
からかさお化けは相変わらず人を驚かせていたが、変わったこともある。
彦吉に感謝されたのがよほどうれしかったらしい。
それとも1人ぼっちだったから、彦吉と一緒にいたかったのかもしれないなあ。
雨の中彦吉がやって来ると、からかさお化けはすぐに跳んでいった。
「からかさ、来てくれたんか!」
そして彦吉のかさになったそうな。
彦吉もそのうちからかさを買う余裕ができたのだが、からかさお化けが来てくれるので、かさは生涯買わなかったそうな。
時代は変わり、からかさをさす人もなくなり、通りは姿を変えた。
しかし今でも、雨の日かさを持っていない人の前に、愉快な顔をしたからかさお化けはあらわれるそうな。
もし逃げたりしないで話し掛ける勇気があれば、お前さんもそのからかさお化けと友達になれるかもしれんよ。
今と変わらず、その頃もいろいろな商店が軒を連ねていた。
しかし雨が降ると、人通りが少ないうえに、からかさお化けが出たそうな。
からかさをさして歩いていると、自分の仲間と思うのか、愉快な顔をしたからかさお化けがおどかしにやって来る。
人が自分に驚いて逃げていくのを、からかさお化けは喜んでいるようだった。
なんと、そのからかさお化けと仲良くなった若者がいたそうな。
さて、雨が降る中、この通りの店の軒下に25歳ほどの若者が立っていた。
若者は振り出したばかりの雨空を見てため息をつく。
「さっきまで降っていなかったのだが…」
若者は隣村から用事があって、この下町の通りの店に来たのだが、からかさを持っていないのだ。
しばらく軒下にいたが、若者は心を決めた。
「ええい、走って帰ろう!」
そう自分に言って勢いよく走り出す。
ぴょんっ ぴょんっ
そんな若者の前に、愉快な顔をしたからかさお化けが現れた。
からかさお化けは、からかさをさしていない人間の前にも現れるらしい。
普通なら逃げ出すところだ。
からかさお化けは、若者が驚くのを楽しみにしていた。
しかし若者は驚いた様子を見せず、からかさお化けをじっと見ていた。
そしてからかさお化けに話しかけた。
「これがうわさのからかさお化けか。
なあお前、かさになってくれないか?」
若者は細かいところにこだわらない性格だったらしい。
からかさお化けは、動くことはできても、話すことはできない。
若者の行動に驚いていたけれど、しかし逃げることもなく、その場に立っていた。
若者はそんなからかさお化けの様子を見て、同意したと思った。
そこでからかさお化けの足を持ってかさにすると、自分の村へと歩き始めた。
若者は明るい顔をして、からかさお化けに話し掛ける。
「おらは彦吉。この町の隣村に住んでるんや。
おらの家はかさを買う余裕はなくてなあ。だからお前がいてくれてうれしかったんよ」
からかさお化けは、彦吉の頭の上で静かに話を聞いている。
からかさお化けは、話さない、顔も変わらない、しかし彦吉に付き合っているのを嫌がってはいないようだった。
帰り道は誰にも会わず、彦吉達だけだった。
雨の音が聞こえる中、静かな時間だった。
家に着くと、からかさお化けを降ろしてお礼を言う彦吉。
「からかさ、ありがとうな。おかげでぬれずにすんだ」
からかさお化けの頭をぽんぽんとたたく。
ぴょんっ♪ ぴょんっ♪
からかさお化けはいつもよりもうれしそうにジャンプして帰っていったそうな。
からかさお化けは相変わらず人を驚かせていたが、変わったこともある。
彦吉に感謝されたのがよほどうれしかったらしい。
それとも1人ぼっちだったから、彦吉と一緒にいたかったのかもしれないなあ。
雨の中彦吉がやって来ると、からかさお化けはすぐに跳んでいった。
「からかさ、来てくれたんか!」
そして彦吉のかさになったそうな。
彦吉もそのうちからかさを買う余裕ができたのだが、からかさお化けが来てくれるので、かさは生涯買わなかったそうな。
時代は変わり、からかさをさす人もなくなり、通りは姿を変えた。
しかし今でも、雨の日かさを持っていない人の前に、愉快な顔をしたからかさお化けはあらわれるそうな。
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