みかんちゃんの魔法日和〜平和な世界で暮らす、魔法使いの日常

香橙ぽぷり

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5年生7月

とっても暑い夏の日(後)

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休み時間が終わって、教室に友子先生が入ってきました。
「本当に毎日暑いわねー。
みんなバテてない?」
そうみんなを見回して聞きます。
でもみんなは、何かいう元気はありません。
そんなみんなを見て、友子先生は不思議そうにいいました。
「あら?みんなふるえてない?
どうしたの?」
実はさっきの、南極の寒さのショックが残っているのでした。
こういう時にはよくないことに、近頃わたしの魔法はとっても切れがいいんです。
だから寒い空気がすぐに広がってしまいました。
でも夢魔法で出したから、まだ良かったです。
教室の元々の空気が残っているところに出したわけだから、瞬間的に変わったわけじゃありません。
失敗に気付いたら、すぐに止められたしね。
もし交換魔法だったら、おしまいだったかもしれません。
みんな半そでで薄着をしているんだから、凍っちゃうよ。
そういえばかき氷を食べると頭が痛くなったりするくらい、氷の冷たさって強力なんだよね。
そう、やってから思い出しました。
ペンギンさんは、あんなに寒いのによく暮らせるなあ。
窓は開いていたから、魔法を止めたら、その空気はどんどん外にいきました。
今は外の暑い空気と混じって、南極の寒い空気も周りとすっかり変わらなくなっています。
でも大体元の教室の気温に戻っても、さっきのあまりの寒さが尾を引いているのでした。
みんな黙ってふるえています。
寒さの中心にいたわけだから、わたしもとっても寒かったです。
でもそう自分のことよりも、みんなをそんな目に合わせてしまったうしろめたさでいっぱいです。
あまりの失敗になんていっていいのかわからないわたしは、『ごめんね』って謝るしかありませんでした。
毎年7月って、こういうやりすぎた魔法をしやすいんです。
魔法は強い力だから、こういうふうにみんなに迷惑をかけないようにしないといけません。
だから魔法使いは、頭がよくないといけないっていわれるんだよね。
でもみんなは怒ったりしませんでした。
『いや、みかんちゃんに頼んだのはわたし達だしね』
そう元気なくいうだけで。
でも責められないと、逆に悪い気がしちゃいます。
今も、誰も先生にいわないでくれているんだよ。
だからわたしから友子先生に説明しようと、手を挙げようとしました。
でもそんなわたしの様子に気付いた高志くんに、小さな声で止められました。
「わざわざ先生にいわなくていいから。
この気温の中にいれば、寒いのなんてすぐにおさまるからさ」
そう高志くんは、引きつった笑顔でいいました。
多分本当は、いつも励ましてくれる時の笑顔でいいたかったんだと思います。
でも寒さのあまりに、普通にはできなかったみたいです。
それにふるえているし、鳥肌も立っているし、大分寒そうです。
なのにそういってくれるなんて、無理をしてまで気を使ってくれているのがよくわかります。
高志くんは本当に優しいなあって、感動しました。
みんなも本当に大丈夫なの?
そう心配して周りを見回してみます。
するとみんなもうなずいてくれました。
だからわたしは、そんなみんなの優しさに感謝して、黙っておくことにしました。
わたし達にそんなことがあったとは、友子先生には想像もつきませんでした。
だからクラスのそんな様子にも深く気にしませんでした。
「そういえばこの教室、他と比べて涼しいわね。ちょうどいいくらい」
友子先生はにっこり笑って、ガッツポーズを取りました。
そう友子先生だけにでも喜んでもらえて、少しは良かったです。
でも、うーん。大失敗でした。
これから魔法を使う時は気を付けなくっちゃ。

次の日も、昨日と同じような暑さになりました。
お昼休みに、みんなはまたまたぐったりしています。
昨日とっても寒い思いをしたといっても、時間が経つとそれも何とやらになるもんね。
「やっぱり暑―い」
ももちゃんのその言葉をきっかけに、またみんなはわたしに頼みました。
「みかんちゃん、やっぱりお願い」
桜ちゃんがそうまじめな顔でいいます。
「そうそう、昨日は場所が悪かったんだもんね」
みゆきちゃんが取り成すようにいうと、港くんもうなずきました。
「うん、ぼくがいいかげんなことをいったから」
そうみんなに期待されると、わたしもやる気になります。
「うん、まかせて。じゃあどこがいいか、よく考えよう。
昨日は本当にごめんね」
昨日のような失敗は、もうできないもんね。
今日こそは、昨日の分もみんなのためにならなくっちゃ。
そうわたしは、心に落ち着きを持ちました。
すると、すぐに正くんが提案してくれました。
「昨日も考えていたんだけど、北海道なんてどうかな?
涼しいって聞くし、国内だし」
みんなはその言葉にうなずきます。
北海道は日本で1番北にあって、気候は亜寒帯なので涼しいと習いました。
ぴったりな場所です。
さすが正くんだね。
やっぱりとっても寒いところよりも、ここより涼しいくらいのところにしておかなくっちゃ。
その方が安心だし、今の暑さが少しでもやわらいでくれればいいんだもんね。
決まったところで早速ステッキに変えると、魔法をかけます。
「北海道の空気を出してくださーい」
すると昨日の凍りそうな空気とは違って、涼しい風が出てきました。
それに草原の匂いのするような、素敵な空気です。
今度は成功だね!
みんなもとっても喜んでいます。
その空気が教室いっぱいに広がったかな、というところで止めました。
教室中にひんやりとした空気が行き渡っています。
お陽さまの光は変わらずに、窓から入ってきています。
だからこれからまた少しずつは暑くなってくると思います。
でも帰りまでなら、そんなに汗をかくような暑さにはならないんじゃないかな。
今まで毎日暑さに困っていたわたし達には、いい息抜きになりそうです。
帰り道はまた暑いんだから、今のうちに元気になっておかなくちゃね。
「すごく気持ちいいねー」
麻緒ちゃんが、そう空気を吸い込んでいます。
「みかんちゃん、ありがとう」
「これで今日は、夏の暑さを忘れていられるよ」
彩ちゃんと龍太郎くんが、そうほっとした顔でいいます。
そうクラスみんながにこにこしているよ。
その笑顔を見ていたら、わたしはこの学校のみんなをそういう気分にさせてあげたくなりました。
それくらいこの魔法で、わたしもとっても楽になったんだよ。
本当は暑いっていってるみーんなに、魔法を使いたいくらいの気分です。
でもそれは無理なので、知っているお友達もたくさんいる、この学校のみんなだけでもって思いました。
わたし達のクラスだけ涼しいのも、気が引けるしね。
そう考えたわたしは張り切って、手を握ります。
「よーし、じゃあ他のクラスのみんなも暑くて大変だろうから、回ってくるね。
お昼休みはまだまだ残ってるし」
時計を見るとまだ25分もあるから、早めに回ればいけそうです。
わたしの言葉に、クラスのみんなはびっくりしたようでした。
「みかんちゃん、もしかして20クラス全部行ってくるの?」
秋子ちゃんの言葉に、わたしはうなずきます。
「うん。急いでいってくれば間に合うよね。
あっ、職員室も行ってこようかな。
扇風機はあるけど、あれだけ広いから暑いよね」
先生達もうちわでぱたぱたと仰ぎながら、お仕事をしているのをよく見かけます。
よーし、みんなも涼しくしてあげようっと。
きっとクラスのみんなみたいに、とっても喜んでくれるよね。
そんな様子を想像して、わたしはにこにこ顔になります。
そして元気に教室を飛び出しました。
そんなわたしを見送るみんながいいます。
「さすがみんなの魔法使いだね」
美穂ちゃんが驚いた顔のまま、感心しました。
「そんなに大っぴらに回るんだったら、見えない魔法にした意味があったのかな?」
秋子ちゃんの疑問に、龍太郎くんが答えます。
「まあ、それがみかんだもんな」
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