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第10話 「襲撃」
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「エルグランデに着く前に、防御結界を張る練習をしておこうか」
おもむろにアキュラが言い出した。
「れ、練習?こんな馬車の中で?」
「もちろん可能だとも。この馬車だって木や金属が使われているわけだから、魔力は多少なりとも宿っている。そいつをちょいと引き出していこう。それに、辺境に着いたらすぐに必要になるだろう?」
じゃがいもの皮を剥こうか、ぐらいの気軽さでとんでもないことを言ってくる。
「...確かにそれはそうだけれど」
「じゃあ、具体的な行動あるのみだ。では、さっそく意識を馬車の構成要素や素材に集中して...」
「ちょ、もう?」
「経験は最高の教師だよ。ほれやってみるやってみる」
口調は優しげだが、内容は容赦ない。精霊王はとことん実践主義のようだった。
「わかった...」
確かにアキュラのいう通りだ。人を変えうるものがあるとしたら、それは具体的な行動だけだろう。
そう自分を叱咤して、庭を甦らせた時と同様に目を瞑り、馬車へと意識を集中する。
まずは馬車全体をイメージしてみる...すると不思議なことに、次第に意識がクリアになっていき、馬車を構成する木材や小さな金属の部品のひとつひとつが意識に流れ込んできた。
まるで脳裏に設計図が描き込まれていくような、そして馬車という概念を深く根底から理解したような、そんな感覚だ。
「これって...」
そのある種快感にも近い深さが少し怖くもあり、思わず声を出してしまう。
「見えたかな?ガーデンの時もそうだったが、才能というものは恐ろしいな...その調子で、次はそれらの要素から力を引き出して、馬車全体を覆って固定するイメージを作ってみてほしい」
「引き出して...固定」
アキュラのいうままに、馬車の各部に意識をフォーカスし、そこから力を抽出するようなイメージを描いてみる。
すると、キラキラと光る何かが馬車のあちこちから少しずつ流れ出てくる感覚がした。
「いい感じだ。それが魔力だ。そして馬車を覆うように固定だ」
「覆う...固定...」
アキュラの言うままに、穏やかな魔力の靄が馬とサキを含む馬車全体を包むイメージを形成していく。
「さぁ、唱えて。Per Animam Ligni Ferrumque, Scutum Magicum Surge!」
「Per Animam Ligni Ferrumque, Scutum Magicum Surge!」
詠唱を終えると、微かに揺蕩っていた魔力が穏やかに安定し、固定された膜のように馬車をふんわりと包んで固定された。
「完璧だ。よくできたね。辺境の防備も基本はこの応用で大丈夫だ」
「こ、これでいいの...?本当に?」
にわかには信じられなかった。
「君にとっては簡単なことのように思えるかもしれないがね。君の才能...いや、血筋というべきか。そして君自身の器のなせる業だよ。誇っていい」
アキュラはそう褒めてくれるが、あまり実感は湧かない。
精霊使いだったという祖母や母のおかげなのだとしたら、それはなんというかありがたい気もするのだが...そういえば、そのあたりの話もアキュラに聞きたいのだった。
「そういえば、おばあさまやお母さまのことだけれど...」
そう口にした瞬間だった。
「伏せろ!馬車を止めるな!」
カイルの鋭い声が響いて、次の瞬間に外で何かが弾け飛ぶような衝撃が伝わってきた。
「こ、こ、これって...」
アキュラが厳しい表情で頷いた。
「矢を射ちこまれたね。たまたま結界を張っていたから馬車やサキは無事だ」
「お嬢さま、大丈夫ですか?!こちらは大丈夫ですのでこのままエルグランデまで駆け抜けます!」
外からサキの緊張した声が響いた。その声を聞いて少しだけほっとする。
「エレナ嬢、馬車を結界で守るとはお見事。このまま警戒しながら進みましょう」
カイルの声も頼もしく響いた。馬車は着実に加速しているようだ。外の様子が気になったが、これ以上何かできることもなさそうなので、ひたすらじっと伏せていることにした。
駆け抜けること数十分。どうやら更なる襲撃はなさそうだった。
「お嬢さま、街が見えてきました」
ほっとしたようなサキの声がする。
窓の外からもカイルの声が届いた。
「ここまでくれば街の警備隊の目もある。もう脚を緩めてもよろしいかと」
馬車が次第にゆっくりと速度を落とし、私もようやく床から起き上がって恐る恐る外を見た。抜剣したカイルが、鋭い顔つきであたりを警戒するように睥睨していた。私とふと目があった瞬間、ほんの少しだけ微笑んでくれたような気がする。
「あ...あの、先ほどの攻撃は」
カイルはすぐに鋭く冷たい戦士の目に戻った。
「明らかに我らを狙ったものでした。しかし、あのタイミングで防御結界を馬車に展開するとは...何か心当たりでも?」
「いや、それが偶然なんだよ」
アキュラが嘆息しながら事情を説明する。
「なるほど...予行演習で結界を練習していたと...不幸中の幸いでしたね」
「はい...」
もし結界を張っていなかったらと思うとゾッとする。
馬車の中にいる私はともかく、サキや馬に被害が出ていたかもしれなかった。
おもむろにアキュラが言い出した。
「れ、練習?こんな馬車の中で?」
「もちろん可能だとも。この馬車だって木や金属が使われているわけだから、魔力は多少なりとも宿っている。そいつをちょいと引き出していこう。それに、辺境に着いたらすぐに必要になるだろう?」
じゃがいもの皮を剥こうか、ぐらいの気軽さでとんでもないことを言ってくる。
「...確かにそれはそうだけれど」
「じゃあ、具体的な行動あるのみだ。では、さっそく意識を馬車の構成要素や素材に集中して...」
「ちょ、もう?」
「経験は最高の教師だよ。ほれやってみるやってみる」
口調は優しげだが、内容は容赦ない。精霊王はとことん実践主義のようだった。
「わかった...」
確かにアキュラのいう通りだ。人を変えうるものがあるとしたら、それは具体的な行動だけだろう。
そう自分を叱咤して、庭を甦らせた時と同様に目を瞑り、馬車へと意識を集中する。
まずは馬車全体をイメージしてみる...すると不思議なことに、次第に意識がクリアになっていき、馬車を構成する木材や小さな金属の部品のひとつひとつが意識に流れ込んできた。
まるで脳裏に設計図が描き込まれていくような、そして馬車という概念を深く根底から理解したような、そんな感覚だ。
「これって...」
そのある種快感にも近い深さが少し怖くもあり、思わず声を出してしまう。
「見えたかな?ガーデンの時もそうだったが、才能というものは恐ろしいな...その調子で、次はそれらの要素から力を引き出して、馬車全体を覆って固定するイメージを作ってみてほしい」
「引き出して...固定」
アキュラのいうままに、馬車の各部に意識をフォーカスし、そこから力を抽出するようなイメージを描いてみる。
すると、キラキラと光る何かが馬車のあちこちから少しずつ流れ出てくる感覚がした。
「いい感じだ。それが魔力だ。そして馬車を覆うように固定だ」
「覆う...固定...」
アキュラの言うままに、穏やかな魔力の靄が馬とサキを含む馬車全体を包むイメージを形成していく。
「さぁ、唱えて。Per Animam Ligni Ferrumque, Scutum Magicum Surge!」
「Per Animam Ligni Ferrumque, Scutum Magicum Surge!」
詠唱を終えると、微かに揺蕩っていた魔力が穏やかに安定し、固定された膜のように馬車をふんわりと包んで固定された。
「完璧だ。よくできたね。辺境の防備も基本はこの応用で大丈夫だ」
「こ、これでいいの...?本当に?」
にわかには信じられなかった。
「君にとっては簡単なことのように思えるかもしれないがね。君の才能...いや、血筋というべきか。そして君自身の器のなせる業だよ。誇っていい」
アキュラはそう褒めてくれるが、あまり実感は湧かない。
精霊使いだったという祖母や母のおかげなのだとしたら、それはなんというかありがたい気もするのだが...そういえば、そのあたりの話もアキュラに聞きたいのだった。
「そういえば、おばあさまやお母さまのことだけれど...」
そう口にした瞬間だった。
「伏せろ!馬車を止めるな!」
カイルの鋭い声が響いて、次の瞬間に外で何かが弾け飛ぶような衝撃が伝わってきた。
「こ、こ、これって...」
アキュラが厳しい表情で頷いた。
「矢を射ちこまれたね。たまたま結界を張っていたから馬車やサキは無事だ」
「お嬢さま、大丈夫ですか?!こちらは大丈夫ですのでこのままエルグランデまで駆け抜けます!」
外からサキの緊張した声が響いた。その声を聞いて少しだけほっとする。
「エレナ嬢、馬車を結界で守るとはお見事。このまま警戒しながら進みましょう」
カイルの声も頼もしく響いた。馬車は着実に加速しているようだ。外の様子が気になったが、これ以上何かできることもなさそうなので、ひたすらじっと伏せていることにした。
駆け抜けること数十分。どうやら更なる襲撃はなさそうだった。
「お嬢さま、街が見えてきました」
ほっとしたようなサキの声がする。
窓の外からもカイルの声が届いた。
「ここまでくれば街の警備隊の目もある。もう脚を緩めてもよろしいかと」
馬車が次第にゆっくりと速度を落とし、私もようやく床から起き上がって恐る恐る外を見た。抜剣したカイルが、鋭い顔つきであたりを警戒するように睥睨していた。私とふと目があった瞬間、ほんの少しだけ微笑んでくれたような気がする。
「あ...あの、先ほどの攻撃は」
カイルはすぐに鋭く冷たい戦士の目に戻った。
「明らかに我らを狙ったものでした。しかし、あのタイミングで防御結界を馬車に展開するとは...何か心当たりでも?」
「いや、それが偶然なんだよ」
アキュラが嘆息しながら事情を説明する。
「なるほど...予行演習で結界を練習していたと...不幸中の幸いでしたね」
「はい...」
もし結界を張っていなかったらと思うとゾッとする。
馬車の中にいる私はともかく、サキや馬に被害が出ていたかもしれなかった。
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