【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん

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幕間 「ミリア・サンフラワー2」

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ミリアの計画は、まずレオンを奪って我がものとすることだった。
婚約者を奪うほどこの令嬢にとって屈辱的なことはないだろう。
その時、エレナはどんな顔をするだろう。顔を歪めるだろうか。泣き叫ぶだろうか。
そのさまを想像すると、ある種の情欲のような昏い興奮に襲われる気がした。

「ああ...早くこの女の惨めな顔が見たい...」

それは、ある意味でミリアが初めて覚えた執着だったかもしれない。
いずれにせよミリアはこれまで以上に精力的に行動を開始した。

まずはレオンが王立魔法学院で優秀な成績を収めていることを知ると、ミリアもあらゆる手を尽くして学院に中途入学し、たちまちレオンに劣らぬ成績を叩き出した。精霊術も魔法も根幹は同じだから、魔法の才能があるように見せるのは容易いことだった。ただし、優秀とは言ってもあくまでもレオンを超えることはないように微妙に調整することも忘れなかった。男というものはプライドが高いので、自分より優れた女を好きになることはないだろうと計算したのだ。

学友という立場を利用し、レオンとはさりげなく接触回数を増やして徐々に親しさを増していくように心がけた。
自分でもなぜだかわからないが、精霊を通じた精神干渉を使うに気にはならなかった。
自分の魅力だけでレオンを奪いたい。エレナに対するそんな意地のようなものがあったのかもしれない。

最初は婚約者に遠慮していたのか、少しよそよそしかったレオンも同期としてごく自然な接触の回数が増えたことでどことなく打ち解けていき、二人で会話する機会も次第に増えていった。王立学院からアイアンメイデンへの配属を経て接触の頻度には拍車がかかった。親しさを増すにつれて、話が婚約者のエレナに及ぶこともしばしばあった。レオンはその眉目秀麗な外見とは裏腹に、意外に奥手でエレナとどう接していいかわからないらしかった。婚約をすすめた父親の手前、二人で出かけたりすることがあっても、何を話せばいいのかわからずつい黙ってしまう。そんな悩みを打ち明けられたこともある。

「もしかしたら...レオン様にはもっと相応しいお相手がいらっしゃるのでは?」

と口には出さないが、そう水を向けてみる。
今ではミリアは自分の性的な魅力に自信があった。
精霊術を使わずとも、多くの男たちが彼女の言いなりになるのを目の当たりにしてきたからだ。
だが、レオンはミリアの秋波には気づかず照れくさそうに言うのだった。

「親が決めたとはいえ、婚約をしたのだからーそれに実を言うと、ちょっとずつ彼女のことが気になっているんだ」

その瞬間、ミリアの胸中にどす黒い嵐が突如として膨れ上がり、どうしようもなく暴れ回るのを感じた。
それが嫉妬と呼ばれる感情だということを、彼女はまだ知らない。
と同時にーその時レオンが浮かべた表情と、ミリアがレオンと話すときにごく自然に浮かべていたそれが、ことにも、不幸ながら気づかなかったのだ。
世間では、その表情を浮かべる者にはこう言うのだ。「」とー。

そんなことには気づかなかったミリアは、胸中の嵐につき動かれるまま行動を開始した。
このまま呑気にレオンが振り向くのを待ってはいられない。
恋愛経験がない彼女にも、それは本能的に理解できていた。
もうつまらないプライドはかなぐり捨てよう。精霊術でもこの肉体でもなんでも使ってーこの男を手に入れるのだ。
暗い情念の炎を灯したミリアの瞳は、ある種凄絶な美の領域へと達していた。

ーそうして数日後の夜のこと。
精霊術による精神干渉と酒と薬物とーそして自らの肢体。
その全てを迷いなく呵責なく使って、彼女はのだった。

「...あれ、ミリア嬢...わ、私は一体...」

アイアンメイデンの兵舎にあるレオンの私室のベッドの上で混乱するレオンに、見事な肢体をシーツで隠しただけのミリアはしどけなくしなだれかかった。

「レオン様に激しく求められて...私、嬉しかったですわ」

「わ、私が君を...?」

動揺するレオンに、容赦無く精神干渉を発動し、さらに淫靡に口付けをして再び薬物を口移しで流し込む。

「はい...エレナさまとの婚約を解消して、私を選ぶとおっしゃいましたわ...」

そのようにして茫然自失するレオンに何度も繰り返し婚約解消とミリアを選ぶことを脳裏に刷り込んだ。
あわせて肉体関係を重ねて既成事実を積み上げることで、レオンの精神は否応なく書き換えられていった。
もはや心身ともに完全にレオンを奪ったと確信したミリアは、エレナを呼び出して正式に婚約破棄をするよう迫った。さすがにレオンも少し抵抗を覚えたようだが、「あれほど抱くだけ抱いて...私のことは遊びなのですか?」と泣き落とすと覚悟を決めたようだった。実際は、ミリアがレオンを無理やり抱いたようなものなのだが。

婚約を破棄され、顔面を蒼白にしながらも懸命に冷静さを失わず堪え抜いたエレナの顔を目にした瞬間は、かつてないほどに生きている実感があった。持たざるミリアが、持てるエレナからはじめて奪ったのだ。これを勝利と呼ばずして何と呼ぶだろう。レオンとの行為にはまったく興奮を覚えなかったミリアだが、このときばかりは脳を直接弄られるような、そんな衝撃に近い快感を覚えたのだった。

だからミリアは気づくべきだったのだ。
レオンと話すときに自らが浮かべた恋する女の表情ーそれは、レオンに対してではなく、だったということに。
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