【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん

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第18話 「対峙」

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「反逆者エレナ・ローズウッド及び北の騎士団を殲滅せよ!」

ミリアと目が合った瞬間だった。
彼女が鋭く命じるとともに、アイアンメイデンの騎士たちが僅かに残っていた北の騎士たちに一斉に襲いかかる。
ミリア自らも抜剣し、迷うことなく私へ向かって突き進んできた。

「反逆者だと?!何を馬鹿な...血迷ったか!」

エリックとサキが私を庇うように立ち塞がる。
ミリアは傲然と微笑むと、禍々しい詠唱を放ってくる。

Animae Ignivomae Inferni, Audite Me! Descendite et Ardeate! Carnem Hostis Vorago Ignis Consumat! Dolor Aeternus Sit!地獄の炎を吐く精霊どもよ、我が声を聞け! 降り来たりて燃やせ! 敵の肉を炎の深淵が焼き尽くさんことを! 永遠の苦痛あれ!

「これは...精霊術...!しかし何と歪んだ...」

愕然としたようにアキュラが呟いた。

「精霊術?ミリアも精霊術師ということ?」

「ああ...精霊術を使えるようだが、歪であまりにも...おぞましい。二人とも気をつけろ!」

「気をつけろったって...うぉぉお!?」

「くっ、お嬢様...下がって!」

ミリアの詠唱とともに放たれた邪悪な黒炎がエリックとサキを襲う。
二人とも咄嗟に獲物で致命傷は防いでいたが、あちこちに火傷を負ってしまったようだ。

「おいエレナちゃん!こいつは本気でやばい...だからここは俺に任せて先に逃げろ」

顔を顰めなら剣を構え直したエリックがそう私にささやいた。
先ほどのまでの余裕は消し飛んでおり、完全に獰猛な戦士の顔になっていた。

「でも、私も戦います...!」

「あのミリアって女は本気だ。そして容赦がない。だがエレナちゃんは戦いの経験がない」

そこまで言い終えると、エリックはにっこりと微笑んだ。

「俺はエレナちゃんを守ると約束した。武人に二言はない」

「でも...!」

「お嬢様、エリック殿の言う通りです。アキュラと一緒に逃げてください」

獲物を構え直したサキが、エリックの背後をフォローするように立った。
エリックが慌てたように、

「おいおい、俺は女の子を巻き込む趣味はないぜ」

「純粋に戦術的な判断です。あなた一人で食い止められる時間は僅かでしょう。二人で食い止めた方がもう少し長持ちします」

「...正論だな。まぁ、エレナちゃんとお別れは寂しいが...こんな美人と一緒なら悪くないね」

「ふふ、私も結構好みですよ、あなたの顔...さぁ、お嬢様!時間を無駄にしないで」

アキュラも悲痛な表情で頷いた。

「君を失えば、この国の護りは完全におしまいだ。そうなればもっと多くの犠牲が出ることになる」

「...わかった。お願いだから...二人とも生きてまた会いましょう」

「...ああ」「...はい」

二人の返事が一拍遅れたのは、彼らがミリアの腕を正確に見抜く技量の持ち主だからだ。
つまりはそれほど、生存を期すのが難しい相手だということーでも今は、彼らを信じるほかになかった。

「別れの挨拶は済んだのかしら?みんなまとめてあの世に送ってあげるから安心しなさい」

「...俺は美人なら何でもいいってわけじゃないんでね、あんたは願い下げだな...いくぞ!」

「ほんと...私の方が1万倍いい女だわ!」

ただ一人、地獄の悪鬼のように迫ってくるミリアに向かって二人が立ち向かっていく後ろ姿を尻目に、私とアキュラは神殿の出口を探して走り始めた。涙が込み上げてきそうになるが、必死で歯を食いしばる。
今は泣いている場合ではない。私を逃すために多くの犠牲が払われているのだ。
彼らの思いと覚悟を無駄にしないためにも、何としても生き延びねばならなかった。

「あちらから風の気配がある」

「ええ、急ぎましょう」

神殿は広大で、出入り口が複数あるだろうという予想は幸にして当たったようだ。
風の出入りする気配をアキュラとともに捉えて辿ることで、小さな通用口らしき場所にどうにか辿り着いた。
外が包囲されていないことを願ってそっと様子を伺うと、幸運なことにアイアンメイデンや魔物の気配なかった。
広大でありながら各所が崩壊しており、誰も全貌を把握できていない点が幸いしたのだろう。
しかし、いつ敵が現れてもおかしくはない。とにかく急いで神殿から離れなくてはならなかった。

「...待て!」

神殿を背に森の奥深くへと足を向けた瞬間、小さく鋭い声が私を呼び止めた。
心臓がすくみ上がりそうになったが、聞き覚えのある声だということに気づく。

「カイル様...!」

声の主は、疲労困憊しながらも私を見て安堵の笑みを浮かべるカイル・ノーザンハートその人だった。

「よくぞご無事で...」

煤と血で汚れたカイルが、私を認めた瞬間泣きそうに顔を歪め、かろうじてその一言だけを絞り出した。

「カイル様こそ...そ、その...急にアイアンメイデンが襲ってきて、そしてエリック様とサキが私を庇って...」

「我らも魔物とアイアンメイデンに挟撃されました。...私とエレナ嬢が共謀して国家転覆を企んでいるなどと...」

やはりアイアンメイデンは最初から北の騎士団と私をまとめて葬り去るつもりだったらしい。
改めて背筋が凍る思いがする。

「何にせよ、カイル様がご無事で良かったです...」

「多くの部下を失いました。ここまで王国の中枢が腐り切っているとは...申し訳ありませぬ」

そういってカイルは深々と頭を下げた。私はその姿を見て胸が張り裂けそうになる。

「でもまずは...ここを離れねばな」

アキュラの指摘にカイルと私は頷き、ひとまずは森の奥深くへと落ち延びることにしたのだった。
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