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第22話 「王都警備隊」
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久方ぶりに舞い戻った王都の門は、出立した時とさほど変わらないように見えた。
物々しく警戒するアイアンメイデンの騎士たちの姿を除いては、だが。
ミリアもさすがにガーデンや王都にはある程度人員を割いて備えているようだった。
「身柄を預けるにしても、アイアンメイデンは避けたいところだわ」
ミリアの息がかかっているアイアンメイデンに捕まれば、即座に抹殺されるリスクがないとはいえない。
それを避けつつ、うまくミリアの注意を惹くには別の命令系統の部隊を経由するのが良さそうだ。
貴族令嬢として学んだ王都に関する知識を懸命に掘り起こして考えているうちに、王都警備隊の存在に思い当たる。
王都警備隊は名誉ある王都防衛の重責を担う兵団だが、アイアンメイデンのように近衛ー国王直属ではない。あくまでも国軍の一ポストである王都警備司令官が指揮する部隊で、自らの職責を侵すアイアンメイデンに対して面白く思っていないはずだ。とすれば、彼らに身柄を預けることで、直接宮廷ーすなわち国王陛下に身の潔白を訴えるチャンスがあるかもしれない。もっとも、父を手にかけている時点で宮廷にミリアの魔手がかなりの程度及んでいることは間違いがないから、宮廷で道が開けるとも思ってはいない。ただ、カイルのために時間を稼げればいいのだ。
そう思い立つと、アイアンメイデンが固める王都の門から少し離れたところにある、王都警備隊の詰所へと向かう。
そこには、武具に身を固めた何人かの兵士たちが駐屯していたが、何やら議論しているようだった。
「レイン隊長、なぜアイアンメイデンに大きな顔をさせておくのです!王都の守りは我らの役目だというのに...」
若い生真面目そうな兵士が憤まんやる方ないといった様子で隊長らしき若い騎士に食ってかかっていた。
レインと呼ばれた、細い目をした騎士というよりは書生のような雰囲気の隊長が「まぁまぁ」となだめている。
「なんでもローズウッド伯爵家と北の騎士団が結んで叛乱を企んだとかで、カイル様とご令嬢を捕えよと...」
「バカな!あの温厚なローズウッド伯とカイル殿がそのようなことをなさると本気でお思いで?ましてご令嬢が...」
「もちろん、私も到底信じられないよ。何かが起きているのだろう。だがアイアンメイデンは陛下の親衛部隊だ。我らは国軍の一部隊に過ぎぬ」
レイン隊長も無念そうな表情でそう答える。
「そんなおかしなことが罷り通るとは...一体この国はどうなっているのです」
そう嘆く兵士の肩を隊長がぽんぽんと叩いて「この国を変えるにはもっと偉くなるしかない」と慰める。
彼らの会話を聞く限り、身柄を預けてもすぐに殺されるということはなさそうに思えた。
とはいえ、いざ一歩を踏み出そうとすると、身がすくむような怖さが背筋から這い上がってくる。
一呼吸おいて目をそっと閉じ、優しく見守ってくれた精霊たちーそしてカイルの顔を思い出す。
そうすると、恐怖に凍った心が少しずつほぐれて、次第に勇気の炎が燃え上がっていくような気がした。
小さくも確かに宿った決意の灯火を絶やさぬように、私はドレスの埃を払い、背筋を伸ばして、しっかりと前を見た。
急な旅路だったから、ドレスは汚れ、髪もほつれ、肌は埃を被っていることだろう。
でもそれがなんだ。
私はエレナ・ローズウッド伯爵令嬢。
ヘンリー・ローズウッドとシャーロット・ローズウッドの娘にして、精霊王の守護を受けた者。
誰にも何にも恥じることはない。だからしっかりと前を向いてー踏み出そう。
「うん、最高にいい女だな」
「...ばか」
照れ隠しにアキュラを睨みつけてから、私は騎士たちに呼びかける。
「ー王都警備隊のみなさん」
はっとしたようにレインとその部下たちがこちらを振り返る。
精霊術による偽装を解除したから、彼らからすると突然私が現れたように見えたに違いない。
「わたくしは、エレナ・ローズウッド伯爵令嬢です。国王陛下に申し上げたい儀がありますゆえ、このように参上いたしました。どうか、宮廷までご案内いただけますか?」
物々しく警戒するアイアンメイデンの騎士たちの姿を除いては、だが。
ミリアもさすがにガーデンや王都にはある程度人員を割いて備えているようだった。
「身柄を預けるにしても、アイアンメイデンは避けたいところだわ」
ミリアの息がかかっているアイアンメイデンに捕まれば、即座に抹殺されるリスクがないとはいえない。
それを避けつつ、うまくミリアの注意を惹くには別の命令系統の部隊を経由するのが良さそうだ。
貴族令嬢として学んだ王都に関する知識を懸命に掘り起こして考えているうちに、王都警備隊の存在に思い当たる。
王都警備隊は名誉ある王都防衛の重責を担う兵団だが、アイアンメイデンのように近衛ー国王直属ではない。あくまでも国軍の一ポストである王都警備司令官が指揮する部隊で、自らの職責を侵すアイアンメイデンに対して面白く思っていないはずだ。とすれば、彼らに身柄を預けることで、直接宮廷ーすなわち国王陛下に身の潔白を訴えるチャンスがあるかもしれない。もっとも、父を手にかけている時点で宮廷にミリアの魔手がかなりの程度及んでいることは間違いがないから、宮廷で道が開けるとも思ってはいない。ただ、カイルのために時間を稼げればいいのだ。
そう思い立つと、アイアンメイデンが固める王都の門から少し離れたところにある、王都警備隊の詰所へと向かう。
そこには、武具に身を固めた何人かの兵士たちが駐屯していたが、何やら議論しているようだった。
「レイン隊長、なぜアイアンメイデンに大きな顔をさせておくのです!王都の守りは我らの役目だというのに...」
若い生真面目そうな兵士が憤まんやる方ないといった様子で隊長らしき若い騎士に食ってかかっていた。
レインと呼ばれた、細い目をした騎士というよりは書生のような雰囲気の隊長が「まぁまぁ」となだめている。
「なんでもローズウッド伯爵家と北の騎士団が結んで叛乱を企んだとかで、カイル様とご令嬢を捕えよと...」
「バカな!あの温厚なローズウッド伯とカイル殿がそのようなことをなさると本気でお思いで?ましてご令嬢が...」
「もちろん、私も到底信じられないよ。何かが起きているのだろう。だがアイアンメイデンは陛下の親衛部隊だ。我らは国軍の一部隊に過ぎぬ」
レイン隊長も無念そうな表情でそう答える。
「そんなおかしなことが罷り通るとは...一体この国はどうなっているのです」
そう嘆く兵士の肩を隊長がぽんぽんと叩いて「この国を変えるにはもっと偉くなるしかない」と慰める。
彼らの会話を聞く限り、身柄を預けてもすぐに殺されるということはなさそうに思えた。
とはいえ、いざ一歩を踏み出そうとすると、身がすくむような怖さが背筋から這い上がってくる。
一呼吸おいて目をそっと閉じ、優しく見守ってくれた精霊たちーそしてカイルの顔を思い出す。
そうすると、恐怖に凍った心が少しずつほぐれて、次第に勇気の炎が燃え上がっていくような気がした。
小さくも確かに宿った決意の灯火を絶やさぬように、私はドレスの埃を払い、背筋を伸ばして、しっかりと前を見た。
急な旅路だったから、ドレスは汚れ、髪もほつれ、肌は埃を被っていることだろう。
でもそれがなんだ。
私はエレナ・ローズウッド伯爵令嬢。
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「ー王都警備隊のみなさん」
はっとしたようにレインとその部下たちがこちらを振り返る。
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