【完結】悪役令嬢のスローライフ

きゅちゃん

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冬至の決断

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冬至の儀式を終えた翌朝、エレノアは王宮の客室で目を覚ました。昨夜の出来事が夢ではなかったことを確認するように、銀の鈴を手に取った。確かに、鈴の輝きは以前とは比べものにならないほど深く、温かい。

朝食後、王太子妃ソフィアとの最後の面談があった。

「エレノア様、昨夜は何か特別なことが?」ソフィアは興味深そうに尋ねた。「お部屋から不思議な光が見えたという報告がありまして」

エレノアは微笑んだ。「少し…家族の伝統的な祈りを捧げていました」

「そうでしたか」ソフィアは納得した様子だった。「実は、お話ししたいことがあるんです」

彼女が取り出したのは、美しく装丁された書物だった。

「これは『帝国地方振興計画書』です。あなたの銀風の谷での取り組みを基に、王太子殿下と私で作成しました」

エレノアは驚いて書物を開いた。そこには、養蜂事業、教育制度、村人との協働統治など、彼女が実践してきた全ての手法が詳細に記録されていた。

「これを帝国全土の領主に配布し、地方振興のモデルケースとして活用したいのです」

「光栄です」エレノアは感動した。「私の小さな取り組みが、こんな形で役立つなんて」

「小さくありません」ソフィアは真剣に言った。「あなたが証明したのは、領主と領民が真に協力した時の力です。これこそが帝国の未来を支える基盤なのです」

帝都を発つ前、エレノアは王太子との最後の謁見に臨んだ。

「エレノア、君の証言のおかげでシュヴァルツ伯爵の件は完全に解決した」王太子は満足げに言った。「帝国の安全が保たれたのは君のおかげだ」

「恐縮です、殿下」

「いや、これは事実だ」王太子は立ち上がった。「そして、改めて君に『帝国地方振興顧問』の職を正式に委嘱したい」

エレノアは深く考えた。この職位は大きな名誉だが、同時に帝都での任務も増える。

「殿下、ありがたいお申し出ですが」エレノアは丁寧に答えた。「私の根は銀風の谷にあります。そこを離れては、本当の価値のある仕事はできません」

王太子は理解を示した。「そうだろうと思った。では、在谷のまま顧問として助言をもらうということでどうだろう?」

「それでしたら喜んでお受けします」

馬車で帝都を後にする時、エレノアは車窓から都市の風景を眺めた。一年前まで、これが自分の世界のすべてだった。しかし今は、心は完全に銀風の谷に向いている。

帰路の三日間、エレノアは今後の計画を練った。完全に覚醒した銀の鈴の力を適切に使う方法、春からの新事業、そして何より、平和になった谷でのさらなる発展。

銀風の谷に到着した時、村人たちの歓迎は感動的だった。雪の中に集まった人々の顔には、心からの喜びが溢れていた。

「おかえりなさい、レディ・エレノア!」

「シュヴァルツ伯爵は?」オスカーが真っ先に尋ねた。

「完全に決着がつきました」エレノアは力強く答えた。「もう私たちを脅かすことはありません」

村人たちから大きな歓声が上がった。

その夜、エレノアは特別な集会を開いた。館の大広間に村人全員が集まった。

「皆さん、長い戦いが終わりました」エレノアは感謝の気持ちを込めて語った。「これまで私たちが築いてきたものを、誰も奪うことはできません」

彼女は銀の鈴を取り出した。鈴は穏やかな青い光を放っている。

「この鈴は、私たち全員の絆の象徴です。これからも共に歩んでいきましょう」

トーマスが立ち上がった。「レディ・エレノア、私たちからも報告があります」

彼は嬉しそうに続けた。「あなたの不在中に、若者たちが新しいアイデアを考案しました。春からの新商品開発計画です」

ノアが前に出てきた。「蜂蜜を使った菓子作りです。帝都の菓子職人から技術を学んで、銀風の谷の特産品を作りたいのです」

エレノアは若者たちの成長に感動した。「素晴らしいアイデアね。全面的に支援するわ」

リリアンも手を挙げた。「私も勉強を頑張って、エレノアお姉様のお手伝いをしたいです!」

集会の後、エレノアは一人で湖畔を訪れた。雪に覆われた蒼穹の湖は、月光に照らされて神秘的な美しさを見せていた。

アイリスが現れた。

「お疲れ様でした」アイリスは微笑んだ。「完璧な結果ですね」

「ありがとう、アイリス。あなたの導きのおかげよ」

「いえ、これはあなた自身の力です」アイリスは湖面を見つめた。「銀の鈴の真の力は、愛と絆によって発揮されるのです」

エレノアは銀の鈴を手に取った。「これからは、この力をどう使えばいいの?」

「日常の中で、自然に使えばよいのです」アイリスは答えた。「作物の成長を助け、病気を癒し、人々の心を結びつける。特別なことではありません」

エレノアは深く頷いた。確かに、山麓村での救助の時も、鈴の力は自然に発揮されていた。

「アイリス、あなたは今後も谷にいてくれるの?」

「もちろんです」アイリスは温かく微笑んだ。「私は谷の記憶の守り人。あなたたちと共に、新しい歴史を見守り続けます」

館に戻ったエレノアは、久しぶりに日記を開いた。

*冬至の夜、ついに銀の鈴の真の力を手にした。しかし、それ以上に大切なのは、この一年で得た人々との絆だ。村人たちの笑顔、仲間たちの支援、そして自分自身の成長。すべてがかけがえのない宝物だ。*

*シュヴァルツ伯爵との戦いは終わった。これからは平和な日々の中で、銀風の谷をさらに発展させていこう。そして、帝国地方振興顧問として、他の領地にも希望を与えられるよう努力したい。*

窓の外では雪が静かに降り続いていた。しかし、エレノアの心には既に春の暖かさが宿っていた。新たな季節が始まろうとしている。

彼女の手の中で、銀の鈴が優しく光った。まるで、明るい未来を約束するかのように。
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