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大冒険への序章
形勢逆転、そして
しおりを挟む打ち寄せる波が船体を揺らす。
それ以上にユリカの心はざわついていた。
「この私が大人しく捕まるとでも思ってるの?!」
「思って、ねぇさ!」
懐から隠し持っていた短剣を引き抜くと、ハロルドが襲い掛かってきた。
咄嗟に飛び退いてかわし、鉄鉤棒を振り下ろして反撃する。
ガキンッと言う金属同士がぶつかる音。
鉤棒と短剣の刃先が擦れ合い、空中に火花が弾けた。
「この小娘がァ!」
脇腹目掛けて放たれた蹴りを膝を上げてガードすると、
「ええいっ!」
バランスの整わない内にハロルドの短剣を弾き飛ばし、ユリカはその鼻先に鉤棒を突き付けた。
「さぁ、観念して樽の中の娘達を解放なさい。
抵抗しなければ痛い思いをしなくて済むわ」
ハロルドが項垂れ、その肩が微かに震えた。
勝った、ユリカがそう確信した時、
「ククッ、観念しろだと?
何か忘れちゃいないか、お嬢ちゃん」
顔を上げた魔導師の表情は敗者のそれではなかった。
「武器を捨てろ」
声のした方に目をやると、女性の首元に長剣をあてがうジェイルの姿が見えた。
「……く。
この卑怯者め!」
怒りの感情が一気に噴き出す。
「お前を含めた十二人の娘を納品すれば、俺達は合わせて一万ジュラもの大金を得る事が出来る。
最初にそう説明したよなぁ?」
形勢逆転したハロルドが饒舌に語った。
-あんたにしか出来ない仕事もちゃんとある。
あれはそう言う意味だったのか。
ユリカの手から音を立て、鉤棒が床の上に落ちた。
「合わせて一万ジュラですって?
最初から私に報酬を支払うつもりなんてなかったのね」
「当然だろう。
俺とジェイルの二人で山分けよ。
お前は大事な商品として、ルッツベルクの奴隷商人に売られる身なんだからな」
「だ、誰があんな野蛮な国に行くもんですかっ!」
「俺達に出会ったのが運の尽きだと諦めろ。
せいぜい優しい御主人様に買われる事を祈るんだな」
悔しがるユリカの手足をロープできつく縛ると、二人の男は布を口に押し付けた。
「……助……けて。
助けて、Gーーーーーーーーッ‼」
ユリカの瞳に涙が浮かぶ。
しかし、必死の叫びも波音にすぐかき消されてしまった。
こんなところにアイツがいる訳がない。
すべてはうまい話に乗せられた自分が悪いのだ。
-しかし。
「二本足さんを泣かせたのは、貴方達ですか?」
焦茶色のマントをはためかせ、音もなくやってきた少年の姿にユリカの瞳がパッと輝いた。
「G!」
「な、何だ、テメぇは?!
どこから来やがった!」
ただならぬ気配にハロルドが短剣を慌てて拾い上げる。
「僕は転生者G。
どこから来たって?
ゴキブリにそれを聞くのは野暮ってものですよ」
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