転生者G-転生前はゴキブリでした-

花鳴カナリア

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    大冒険への序章

 愛の奇跡

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 焼け焦げた少年の元に駆け寄ると、ユリカはその体を抱き起こした。

「G、G!
しっかりしてっ!
目を覚まして‼」

しかし、少年からの返事はない。
やがて痙攣を繰り返していた指先が止まると、Gは完全に動かなくなった。

「転生者?四十八の特殊スキル?
散々ふかしやがって様ァねえな。
さぁ、ジェイル。
女どもを樽に放り込んで仕事に戻るぞ」

ハロルドの勝ち誇った声が室内に響き、ジェイルがそれに従おうとした時だった。

「……に、二本足さん」

それは心臓を貫かれて絶命した筈のGの声だった。

「G!
あなた、生きてるの?!」

ユリカの目から大粒の涙が溢れる。

「……愛の力が招いた奇跡です」
「な、何を訳の解らない事を」
「あんなに触れられるのを嫌がってた二本足さんが、自分から僕の体に触れてくれた。
これは二人の関係の大きな前進とGは考えます」
「そんな事より、あなた。
死にかけてるのよ!」

空洞となったGの胸からは夥しい量の血が流れ出ている。
しかし、Gはその言葉を否定した。

「僕が死にかけてる?
いいえ、二本足さん。
そうではありませんよ。
僕は死にかけているのではなく、
いるのです。
あなたの唯一のチートスキル、『超回復術』によってね!」

胸の穴がみるみる塞がり、Gの頬に血色が戻っていく。

「ば、バカな。
死んだ……奴はたしかに死んだんだ!
なぁ、ジェイル。
お前も見てただろ?!」

酷く狼狽したハロルドがジェイルの肩を強く揺さぶった。
一方、ジェイルも目の前の光景が信じられず、呆然と立ち尽くしている。

「さて、と。
これで完全に元通りです」

Gは何事もなかったかのように立ち上がると、

「それじゃあ続き、やりましょうか?
のお二人さん」

ハロルド達に微笑んだ。

「……か、勘弁してくれ。
これなら牢屋に入ってる方が百倍マシだ」
 
すっかり戦意を喪失したハロルドがその場にへたり込むと、ジェイルも剣を投げ捨てて降伏の意思を示した。

「宜しい。
しかし、僕の大事な二本足さんを泣かせておいて、そう簡単に赦される筈がないでしょう」

二人にゆっくり近付くと、Gはニヤリと笑った。

「ヒィッ!
こ、殺さないでくれ」

ハロルドが土下座してGの膝元に泣き付く。
つまらない余興を見るような眼で細長い筒を取り出すと、Gは喚き散らすハロルドに向けてそれを噴射した。

「ぎゃああっ‼
目が、目がぁーーーっ‼」

ハロルドが絶叫して床の上をのたうち回る。
見るとGの右手には二本足から昼間取り上げた殺虫剤が握られていた。
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