転生者G-転生前はゴキブリでした-

花鳴カナリア

文字の大きさ
17 / 102
  Ⅰ 父と子

 大司祭ユリカ

しおりを挟む


「お前達、これはいったいなんの騒ぎだ?」
「なんの騒ぎって、ファラン様の帰りがあまりにも遅いから皆で探してたんじゃないですか」

門番は心外そうに口を尖らせた。

「そんな理由でこれほどの人数を動員して森に出向いたと言うのか?
そなたには今朝方、私の事は心配無用と申し付けておいたではないか」
「しかし、ですね。
あと一時間足らずで白聖祭がおっ始まるって言うんで、こっちは肝を冷やしてたんですぜ。
それにファラン様が新領主になられてから、俺達が心配せずに済んだ日が一日足りともありましたか?」
「……く。
悪かったな、ダメな領主で」

ファランの言葉に男達は顔を見合わせて笑った。

「おいおい、マティウス。
あんまりファラン様を苛めて差し上げるなよ」

一人の男の言葉に賛同の声が重なる。

「何言ってんだ、ルチアーノ。
お前だってさっきまでボヤいてた癖に」
「お、俺はただファラン様が心配でだな……」

口ごもるルチアーノにマティウスが詰め寄った。

「俺だって心配でさっきから胃に穴が開きそうだったんだぞ!
なんせ俺はファラン様が赤ん坊の頃から、ずっと見守ってきた男だからな」
「お前だけ特別みたいな言い方するなよ、マティウス。
それを言うなら皆同じじゃねぇか」
「そうだ、そうだ!
ファラン様は先代領主様の忘れ形見、いわば俺たち全員の娘も同然だぞ」
「え、ええい。
子供扱いは止めぬか、お前達っ。
ここには他所の者もおるのだぞ?!」

困り顔で事態を収集しようとするファランに暖かな眼差しを向けるマラカーンの人々。
ユリカはその光景を目の当たりにして思った。
ファランがダメ領主だなんて、とんでもない思い違いだ。
貴女はこんなにも大切に思われ愛されているじゃない。
後は白霊祭さえ成功すれば、この街はこれからも安泰だろう。

「ところでファラン様、そちらの方々は?」

太った農夫がG達を見て訊ねた。
ファランは何度かモゴモゴと口を動かすと、何かを思い出したように言った。

「こちらは……そう!
セントフィルマ神殿の大司祭ユリカ様とその従者G殿であるっ。
今宵の白聖祭でぜひ霊験あらたかな御祈祷を賜りたく、私が御無理を申してはるばる来て頂いたのだ」

北の聖地として名高いセントフィルマの大司祭とあらば、驚かぬ者はまずいない。
それに一年の大半を神殿内で過ごす大司祭は滅多に人前に姿を見せない事もあり、嘘がばれる心配はまず無かった。

「せ、セントフィルマより神命を受けて参りました、大司祭のユリカです。
マラカーンの人々に豊穣の女神ナーシェの導きのあらん事を。
クティ・カタ・アルー」

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...