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Ⅲ 竜殺しの英雄
いがみ合う二人
しおりを挟む「ええい、仕方ねえ!」
ブライツは小柄な体を背負って洞窟内を駆けた。
「天園の誘い、こいつは効くにゃ~♪」
再び酒を煽って、へべれけになるネムネム。
「この猫、全然使えねえーっ‼」
「黙るにゃ、お頭~」
「クソッ!
逃げまわってる内にすっかり迷っちまったじゃねえか」
追い掛けられる恐怖と入り組んだ迷路に、焦りが募っていく。
「……ひっく。
山賊が自分の縄張りで迷子とか、ふざけてるにも程があるにゃ~」
ネムネムがブライツの背中から悪態をついた。
「しゃらくせえ。
猫族が道に迷う方がよっぽどおかしいだろうが!」
「お、それを言うにゃか?
このひとつ目親父め~っ」
「いててて。
誰がひとつ目親父だ、この酒乱猫っ!
ただでさえクソ重いんだから動くんじゃねえよっ」
「女性に重いとは何事にゃ~!」
遁走しながら頬っぺたをつねり合う二人の頭のなかに声が響く。
(姉ちゃんっ、姉ちゃん!
セッちゃんが殺されてしまうッス‼)
「う~るさいにゃっ!
姉ちゃんはいま取り込み中にゃ~!」
洞窟に大声が反響した。
リュックから数本の筒と部品を取り出し、おもむろにそれらを組み上げてゆく。
「そのごつい火器は、狙撃銃か?」
「合成魔銃、レイゾンデートルにゃ。
こいつで一発、でっかい風穴開けてやるにゃあぁ~っ!」
ネムネムは目を回しながら引き金を引こうと指に力を込めた。
が、何も起こらない。
「うにゃ?
さっそく不良ったにゃ」
「この一大事に何やってんだぁ!
テメエの獲物くらい、ちゃんと手入れしときやがれっ」
「失礼にゃ!
酒盛りの合間にちゃんとしてるにゃよ。
怠慢せずにきちんと整備してやれば、道具は人間の信頼をけっして裏切らないものにゃ~」
ネムネムの自信がブライツの不安をいっそう駆り立てた。
「おい。
その合間の整備、最後にやったのはいつだ?」
ネムネムが首を僅かに傾ける。
「う~ん。
おしゃけを呑まなかった日らから、半年くらい前かにゃ?」
「半年も放ったらかしてたら完全な怠慢だろ!
オメエの方が道具の信頼、めちゃくちゃ裏切ってんじゃねーかっ‼」
出口へと急ぐ二人の前に無情な岸壁が立ち塞がった。
もはや逃げ場のない、袋のネズミだ。
「貸せ!」
ブライツは動作不良の原因を探ろうと、ライフルを奪い取った。
しかし、その重さに耐えきれずにさっと手を離す。
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