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Ⅲ 竜殺しの英雄
道に迷ったら
しおりを挟む「……っ。なんてぇ非常識な重さだ」
「二十キロくらいあるにゃ」
部品を分解して銃身や弾倉をざっと調べてみたが弾詰まりや劣化も無く、どこにも異常は見当たらない。
もっとも、魔弾の殺傷力を高める増幅装置が幾つも組み込まれた内部構造こそが異常の塊だったのだが。
「おい、なんともなってねえっぽいぞ」
「じ、実はにゃ……」
バツが悪そうに下を向いて体をくねらせる。
「安全装置かけたままだったにゃ~!」
「もう、怒るのも面倒臭えわ」
渡された銃のロックを外すと、ネムネムは引き金に指をかけて狙いを定めた。
「……うぷっ。
走り過ぎてなんだか気持ち悪いにゃ」
「走ってたのはお前じゃなくて俺だっつーの!」
こみ上げてくる吐き気を堪え、闇の向こうへと銃口を向ける。
先程までと違い、洞窟の中は嘘のような静けさを取り戻していた。
「お、おい。
ひょっとして上手く撒けたんじゃねえか?」
「しっ!」
三角の猫耳をぴんと立て、全神経を聴覚へと集中する。
猫の聴覚は人間の約四倍。
狩人としての本領が地中を蠢く微かな音を感知し、竜の居場所を明確に捉えた。
「……さよならにゃ」
蒼光一閃。
銃口から放たれた極大の魔光弾が洞窟を光で照らし、岩壁もろとも不死竜の核を砕いた。
なおも衰えない光弾は山の内層を一直線にくり貫き、地表に大穴を開けて空の彼方へと消えてゆく。
「にゃふうぅ、久しぶりにすっきりしたにゃ~!
いい感じの出口も出来たし、あの穴から外に出るにゃよ。
今度から迷った時はこうやって出るにゃ」
「……な、な?!」
合成魔銃の出鱈目な威力に唖然とするブライツ。
二人は崩落した岸壁をよじ登り、ぽっかりと空いた大穴を通って外に出た。
「この破壊力。
ライフルっつーより、大砲級じゃねえか。
オメエ、こんな危ねえもんどこで……」
(湖班、一体を撃破しました)
「さすがセッちゃんにゃ~!」
セツハからの報告にネムネムは声を弾ませた。
(こっちもさっき無事に仕留めたにゃ)
(ブライツさんも無事ッス?)
(おうとも。
もっとも、洞窟の方は全然無事じゃねえけどな)
(あとはゴキブリさんとクレード王子の山頂班だけにゃ)
そこにクレードの声が響く。
(こちらも終わったよ)
四体の不死竜の体が風化し、大地へと還ってゆく。
セツハが遠見の水晶球を指で撫でると、穏やかな表情で寝息を立てるユリカの姿が映し出された。
(これでユリカ様の呪いは無事に解けました。
山の入り口で落ち合い、街へと帰還しましょう)
一歩踏み出したセツハの足を、クレードの声が止めた。
(……いや、僕はこいつを始末してから行く)
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