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Ⅳ 凶禍
深層に潜む悪夢
しおりを挟む-虐ゲラレシ者ヨ。
目を開けるとそこは暗黒に塗り潰された無限空間だった。
頭上に巨大な黒塊が浮かび、真っ赤な眼が此方を見下している。
-此処ハ、汝ノ精神世界。
我ハ闇。
終末ノ破壊者ニシテ世ニ災厄ヲ齎す者、魔神ヘルキュイアス也。
矮小ナル、蟲ノ子ヨ。
汝ガ我ヲ喚ンダノハ、憎キ者共ニ滅ビノ鉄槌ヲ下ス為カ。
魔神の言葉が狂気や憎悪、殺意と言ったあらゆる負の情念を掻き立てる。
憎しみに呑まれてはいけない。
心を強く持ち、Gは首を横に振った。
「違います。
Gが欲しいのは二本足さんを、愛する人を護る為の力です!」
暫くの沈黙の後。
-我ニ、虚言ヲ申スカ。
目の前に前世の忌まわしい記憶の数々が映像となって浮かび上がり、Gの感情を激しく揺さぶった。
叩き潰され、内臓を撒き散らして死んだ両親。
旨そうな食べ物に一服盛られ、苦しみ抜いた末に最期を迎えた兄弟。
殺虫剤から噴射され室内を覆い尽くす毒ガス、強力な粘着力で動きを封じてじわじわと弱らせる床の罠。
何もしていない自分を追い回し、仲間を次々と卑劣な道具で殺害していった人間を、Gは心の底から恨んでいた。
もしもこの身に力があったなら、一人残らず根絶やしにしてやるものを。
人間は虫よりも何百倍も力が強く、知恵があり、体が大きいと言うだけで、理不尽に他者の命を奪い去る。
生態の違いを受け入れようとせず、当たり前のように弱者を殺す。
Gが一番許せない事。
それは人間達が沢山の命を徒に奪っておきながら、なんの罪悪感も抱かずのうのうと生きている事だった。
その悲惨な現実を、害虫として虐げられた日々を思い返し、Gは血涙を流して人類すべてを呪った。
「……憎い」
少年の瞳が憎悪と殺意で真っ赤に染まる。
-其レコソガ汝ノ真実、復讐コソガ唯一ノ望ミ。
「……みんな、みんな、みんな、みんな!
あいつらが殺した!
あいつらに殺された!
憎い、憎い、憎い、憎い。
人間が、人間がぁ、憎いっ‼」
-ナラバ我ノ傀儡トナリ、神ノ享楽ニ耽ルガイイ。
「ギュイアァァァァアアアーーーーッ‼」
掻きむしった爪が額の皮膚を破り、黒光りした二本の触角が天を突いた。
全身が異形の甲殻で覆い尽くされると、背中から伸びた尺骨が翼膜を張って翼へと変化する。
溢れ出る禍々しい負の波動。
悪鬼の形相で真っ赤な瞳をたぎらせるそれは、Gの面影を微塵も感じさせない魔神の化身だった。
「……やはり呑まれたか」
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