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Ⅴ 雨に濡れた日
いざなう光
しおりを挟む「おい、ネム。
……ネムってば!」
「はっ、なんにゃ?!」
肩を叩かれて、すっかり『猫語』の染み付いたネムネムが飛び上がる。
「いくら綺麗だからって、捕まえようとか思うなよ?
あの蝶だって相当の高値がつく筈だけど、俺達の目的はあくまでも魔鉱石だ」
「解ってるにゃよ。
ここまで来て目的を見失ったりしないにゃ」
二人は蝶の前まで進むと、雑念を振り払って魔鉱石の事だけを頭に思い浮かべた。
すると品定めするように二人の間をヒラヒラ舞った後、月光蝶は大木の裏側へと姿を消した。
「追い掛けよう」
「がってんにゃ!」
節くれだった大きな根に足を取られないよう、足下を気にしながら奥へと進む。
恐らくこの森一番の古木であろう巨大な幹には、人一人分ほどの空洞が出来ていた。
「ちょっと待て」
ロープを括り付けたランタンを空洞に入れ、内部を探る。
「……かなり広い、それに深いぞ。
でも、見ろよネム」
魔鉱石の欠片が微かに紫色の輝きを放っている事に気付き、ネムネムは目を見開いた。
「それじゃあ、魔鉱石はこの下にゃ?!」
「あぁ、いくら探しても見付からない訳だな」
すっかり日焼けした顔でラトが笑う。
近くにあった木の幹にロープを括り、ラト達はゆっくりと空洞の中を下り始めた、が。
「あっ‼」
結び方が甘かったのか張っていたロープが緩み、二人は重力に従って穴の中を真っ逆さまに転がり落ちた。
身体中を擦りむき、地面に強かに背中を打ち付ける。
なんとか一番下まで辿り着いたものの、胸の圧迫感に気付いてネムネムは悲鳴をあげた。
「きゃあーっ!
ら、ら、ラト!
ど、ど、どこ触ってるにゃあっ?!」
「……うぅん。
どこって、お前。
なんか右手の下に柔らかいものがあるけど、暗くてよく見えな」
暗視能力を持つネムネムに平手打ちされ、地面を転がる。
「最低にゃっ!
そんなイヤらしい目でネムの事を見てたにゃか?!」
収まらぬ怒りに拳が震えた。
「待て待て待て、誤解だって。
俺は一度だってお前をそんな目で見た事なんて」
言い終わる前に、なぜか再び殴られるラト。
「それはそれでイヤにゃっ‼」
「なんだよ、くそ。
打ち所でも悪かったのか、お前」
女心はときに暴力と化す。
ランタンに火を灯すと、岸壁に囲まれた洞窟が暗闇に浮かび上がった。
「行くぞ、ネム。
魔鉱石はすぐそこだ」
胸元の光が強くなるにつれ、二人の足も次第に早まる。
そして。
「……でかい。
これ全部、魔鉱石の塊だ」
「やったんにゃ……。
やったにゃ、ラト。
とうとう、とうとう見つけたにゃよーーっ‼」
突き当たりの壁一面に輝く魔鉱石を発見した二人は、これまでの苦労を振り返りながら抱き合って喜んだのだった。
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