転生者G-転生前はゴキブリでした-

花鳴カナリア

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 Ⅴ 雨に濡れた日

 二人の幸せ

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「これで依頼は達成。
明日からは森に潜らなくていいにゃね」

削り取った魔鉱石の欠片を手に、ネムネムは寂しげに言った。

「なぁ、ネム。
この数週間、ずっと考えてたんだけど」

ラトは照れ臭そうに鼻の頭をかくと、ネムネムの顔を見つめた。

「もし、今度の聖鍛祭で俺が優勝したら。
……俺と、一緒になってくれないか?」

それは突然の告白だった。
大きな瞳を更に大きくして、青年の顔をじっと見つめ返すネムネム。

「な、なにを冗談言って」
「俺は本気だ」

その腕を掴んだラトの頬が赤いのは、ランタンの光が照らすせいだけではなかった。

「……急にそんなこと、ずるいにゃ。
武器が恋人って言ってた癖に」
「イヤなら、さっきみたいに張り倒してくれ」
「……イヤな訳、ないにゃ。
ネムもずっと、ラトの事が好きだったにゃ」

洞窟の壁に伸びていた影が一つに重なる。

「俺、イミナットじゃないけど本当にいいのか?」

その問い掛けにネムネムは、くすりと笑った。

「イミナットは確かに大切な存在にゃ。
だけど、ネムはラトにその代わりを求めてなんかいないにゃよ。
きっと誰も誰かの代わりになんかなれない。
ラトをラトとして好きになれた事を、ネムはとても幸せに感じてるにゃ」

ネムネムが再び唇をねだると、ラトはふいっと顔を逸らした。

「??」
「優勝出来なかった時は、俺の事は忘れてくれ。
俺もその覚悟で品評会に挑むつもりだ。
次のキスはそれまでお預けって事で」
「……解ったにゃ。
浮気してやるにゃ」
「えぇっ?!」

うっかりランタンを落としそうになるラト。
その頬にネムネムの唇が触れた。

「おい、ダメだって」
「にゃふぅ、だから口にはしてないにゃ。
『浮気する』って言ったのは、ラトが優勝するまでネムも武器を恋人みたいに思うって意味にゃ」

ネムネムは悪戯っぽく笑うと、洞窟のなかを軽やかに駆け出した。
羽でも生えたかのように、天にも昇る気分だった。
ラトが自分を好きになってくれていたなんて!
何度頬をつねったか解らないが、その痛みすら今は幸せに思えた。

「ラト、大好きにゃーっ!」

ネムネムの声が洞窟に響く。
二人は森から戻ると酒場でささやかな宴会を開き、小さな工房で毛布にくるまって眠りについたのだった。



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