69 / 102
Ⅵ 反旗
H、スケッチ
しおりを挟む「皆、聴いてぇ~!」
よく通る声が響き、全員がハルナーフに注目する。
「えっと、大変なの。
王国軍が私達を苛めに来るらしいの~!」
いまいち緊迫感に欠けるその言葉に、一同が騒然となった。
「大丈夫さ、リーダー。
キジェットはただの機織職人の村で通ってる。
地下に反乱軍の本部があるなんて、連中は夢にも思いっこねえよ」
「確かにその事実は向こうもまだ把握してはいないでしょう。
でも、襲撃を受けた他の支部から情報が漏洩しないとも限りません。
むしろ今回の大規模討伐の真の狙いは、そこにあるのではないかとさえ感じます」
Gの言葉にトマスは顔をしかめた。
「……恐怖を煽って揺さぶるつもりか。
反乱軍には敵に情報を流すようなやつはいない。
と言いたいが、何人かは思い当たるな。
ホホイ支部のガルロイに、ラックキャップ支部のフェアード。
王国に不満を抱いて加入したとは言え、連中は元々ただの商人だ。
金を積まれるか、命乞いの為なら仲間を裏切ってもおかしくはない」
ファランが言っていた一枚岩でないとは、反乱の先に求めるものは人それぞれ違うと言う事だ。
心から国の行く末を憂う愛国者もいれば、武器などを売って私腹を肥やす為だけに加担する者もいる。
大義の前にどれだけ人が集まろうと、そこに在るのはいつでも個人的、かつ俗っぽい動機に過ぎない。
「トマス。
仲間の事を悪く言ってはいけないわ」
「ハルナーフ様。
いっそ今回の依頼を逆手に取り、こちらから仕掛けてはどうじゃの?」
参謀役のバルザック老が進言した。
「今回の依頼?
そう言えばあんなに大量の紋章旗、いったい何に使うんです?」
いくら収穫祭が近いとはいえ、近隣の地方領主に納めるだけだった例年の比ではない。
「なんでもクレード王子の結婚式が行われるとかで、国中の貴族達が王都に集まるんだと。
新しい紋章旗はその式で使うらしいぜ」
「……結婚式?!
こうしちゃいられない!」
フライングGで飛び立とうとするGの足を、ネムネムが掴む。
「待つにゃ!
一人で行ってもどうにも出来ない、ってマラカーンで言ったばかりにゃよ?!」
「離して下さい、猫さんっ。
このままだと二本足さんがクレードのものに!」
「H、スケッチ……」
ハルナーフは両手の親指と人差し指をピンと伸ばして枠を作ると、Gの姿を枠内に捉えた。
その瞬間、Gの周りに黄金色の光の枠が出現し、四方を取り囲む。
ハルナーフはすかさず絵筆を取り出すと、遠くに浮かぶGの羽を空中でなぞるようにして呟いた。
「ワンタッチ!」
羽が消失し、普通のマントへと戻っていく。
「ジーク。
ここに居るのは貴方の仲間であり、家族です。
どういう事なのか、落ち着いて皆にちゃんと説明しなさぁ~い!」
スキルを解除されたGは肩を落とすと、これまでの経緯を皆に説明して聞かせた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる