転生者G-転生前はゴキブリでした-

花鳴金糸雀(KanariKanaria)

文字の大きさ
70 / 102
 Ⅵ 反旗

 偽名をください

しおりを挟む


「ええと、討伐軍が王都を空けるのが五日後で、結婚式がその前日かぁ。
うぅん、タイミングが悪いわねぇ。
式を阻止する為に決行を一日早めるなら、真っ正面から王国軍とやりあう事になるわ~」

わずか一日の差、その差にG達は完全に勝機を奪われていた。

「やはりGが一人で乗り込んで……」
「いくら貴方が強くても、誰も傷付けずに想い人を救えるほど、王都は甘い場所ではないわ。
それとも彼女を助ける為なら、その手を血に染めても構わないと言うの?」
「……いいえ。
Gはもう二度と、同じ過ちを犯すつもりはありません」

ネムネムの顔を見ながらGは言った。

「それなら、決まりね~」
「……だな」

その言葉を機に、反乱軍の面々が口々に叫ぶ。

「よっし、母ちゃん。
旅支度だぜっ!」
「あいよ、あんた!」
「久しぶりの王都だ、腕が鳴るぜー!」
「俺、隣村の連中にも声をかけてみるよ」
「他の支部には伝書鳩を飛ばしておくぜ。
王子様の結婚式に、反乱軍主催の台無しパーティーを開くってなぁ」
「ちょ、ちょっと待って下さい。
そんな無謀な……」
「ガッハッハ、お前がそれを言うんじゃねーよ!」

当然のように一戦交える気配に満ちた彼らの様子に、Gは戸惑った。

「ジークが困っているのを皆、放って置けないのよ」
「……みんな」

ハルナーフは嬉しそうに笑った。
仲間達の温かさにGの頬を涙が伝う。

「あらあらぁ。
貴方は昔っから泣き虫なんだから」
「……ねぇねぇ、おハルさん」
「おハル、さん?」

奇妙なあだ名で呼ばれて振り向くと、ネムネムがじっと見つめていた。

「ネムも今回の作戦に参加するにゃよ。
だからカッコいい偽名を付けておくれにゃ~!」

くすりと微笑み、その頭を撫でる。

「解ったわ、仔猫ちゃん~。
じゃあ、こっちにいらっしゃい」

ハルナーフの家へと案内されたネムネムは、くじの完成を待っている間に室内を見回した。
天井から壁に至るまで、森の中に迷い込んだかと錯覚するくらいの観葉植物の量だ。

「みんな青々としてるにゃ」
「散らかっていてごめんなさいね。
この子達、すぐ大きくなっちゃうのよ。
……よし、出来た」

紙に書いたあみだくじを机の上に置くハルナーフ。

「この五本の線の中から好きなのを選んで~」
「うーん。
これにするにゃっ!」

ネムネムは一番左端の線を指差した。

「じゃあ、行くわよ。
あみだくじ~、あみだくじくじ、くじらさん~♪」

ハルナーフの人差し指が紙の上を滑り、ピタリと止まった。

「……ドキドキにゃ」
「発表しま~す。
仔猫ちゃんの偽名は、じゃじゃん!
『オッペンモッフ』となりました~!」
「……び、微妙に鈍臭そうな名前にゃ。
変更を希望するにゃ」
「受け付けておりませ~ん」
「そんにゃあ!
おハルさん、他の四つはどんな名前だったにゃ?!」
「あっ、ダメよ」

くじの書かれた紙を取り上げ、ネムネムは他の候補名を読み上げた。

「ゴリキューラ、ベルベチョロフ、トントンスキー、ピピロンフッタス……にゃああーーーっ‼」

ビリビリと紙を破り捨てる。

「なんにゃ、これはっ。
ろくな名前がないにゃ。
おハルさん、ネーミングセンス悪すぎにゃあーーー‼」
「ふふ、二百人以上もの偽名を付けているとね。
アレンジしないと被ってしまうのよぅ、オッペンモッフ」
「その名で呼ぶんじゃないにゃーー‼」



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...