43 / 80
第4章:選ばれた未来、ほどけない絆へ
第43話「ふたりの約束、風の届かない場所で」
しおりを挟む
恋人が不在になる三日間。
それはただの“離別”ではなく――
ふたりの絆が、本当に繋がっているかを確かめるための時間だった。
***
その前夜。
学院の中庭には、夕陽に染まるふたりの姿があった。
アレン=ヴァルフォードと、セシリア=ロートベルク。
椅子もベンチもない、小さな花壇の前。
ただ、ふたりが立っているだけの静かな時間。
「もう少しだけ、ここにいてくれる?」
セシリアがそう尋ねたとき、アレンは何も言わず、すっと頷いた。
彼女の髪が風に揺れ、リボンの先がふわりと舞い上がる。
それは、まるで「離れても戻ってくるよ」と告げているようだった。
「三日間。きっとあっという間なんだろうけど……」
「うん。でも、言葉だけじゃなくて、なにか――“証”がほしいなって思ってる」
セシリアは、少し首を傾げる。
「証?」
「“戻ってくる場所がある”っていう、目印みたいなもの」
そう言って、アレンは小さな包みを取り出した。
中に入っていたのは、シンプルな銀の指輪。
細くて、軽くて、どこにでも似合うような、小さな輪。
「婚約の証じゃない。
誓約でもない。
ただ、これを見れば思い出せるように――“僕が、君を選んだこと”を」
セシリアの瞳が大きく見開かれる。
「……これ、受け取っていいの?」
「もちろん。
でも、無理に着けなくてもいい。
“君が手元に置いてくれる”ってことが、僕にとっての証だから」
セシリアは指輪をそっと両手で包み込んだ。
その指先は、微かに震えていたけれど――
それは、不安ではなく、“想いの重さ”に触れた証だった。
「……ありがとう。
わたし、ちゃんと信じて待ってる。
この指輪が、どれだけ心を温めてくれるか――三日間で、証明してみせるから」
ふたりは、微笑みあう。
何も誓わなくても、もう約束はそこにあった。
***
翌朝。
アレンは王宮の馬車に乗り込み、学院を離れた。
セシリアは、その姿を見送ることなく、
小さな硝子箱に指輪を収めて、寮の窓辺に置いた。
風の届かないその場所で、銀の輪は静かに光っていた。
誰にも見せない、ふたりだけの約束。
言葉でもなく、書類でもなく――
心の針で縫いとめた、目に見える証。
そしてその日から、
学院の空気がまた、少しだけ――動き出した。
それはただの“離別”ではなく――
ふたりの絆が、本当に繋がっているかを確かめるための時間だった。
***
その前夜。
学院の中庭には、夕陽に染まるふたりの姿があった。
アレン=ヴァルフォードと、セシリア=ロートベルク。
椅子もベンチもない、小さな花壇の前。
ただ、ふたりが立っているだけの静かな時間。
「もう少しだけ、ここにいてくれる?」
セシリアがそう尋ねたとき、アレンは何も言わず、すっと頷いた。
彼女の髪が風に揺れ、リボンの先がふわりと舞い上がる。
それは、まるで「離れても戻ってくるよ」と告げているようだった。
「三日間。きっとあっという間なんだろうけど……」
「うん。でも、言葉だけじゃなくて、なにか――“証”がほしいなって思ってる」
セシリアは、少し首を傾げる。
「証?」
「“戻ってくる場所がある”っていう、目印みたいなもの」
そう言って、アレンは小さな包みを取り出した。
中に入っていたのは、シンプルな銀の指輪。
細くて、軽くて、どこにでも似合うような、小さな輪。
「婚約の証じゃない。
誓約でもない。
ただ、これを見れば思い出せるように――“僕が、君を選んだこと”を」
セシリアの瞳が大きく見開かれる。
「……これ、受け取っていいの?」
「もちろん。
でも、無理に着けなくてもいい。
“君が手元に置いてくれる”ってことが、僕にとっての証だから」
セシリアは指輪をそっと両手で包み込んだ。
その指先は、微かに震えていたけれど――
それは、不安ではなく、“想いの重さ”に触れた証だった。
「……ありがとう。
わたし、ちゃんと信じて待ってる。
この指輪が、どれだけ心を温めてくれるか――三日間で、証明してみせるから」
ふたりは、微笑みあう。
何も誓わなくても、もう約束はそこにあった。
***
翌朝。
アレンは王宮の馬車に乗り込み、学院を離れた。
セシリアは、その姿を見送ることなく、
小さな硝子箱に指輪を収めて、寮の窓辺に置いた。
風の届かないその場所で、銀の輪は静かに光っていた。
誰にも見せない、ふたりだけの約束。
言葉でもなく、書類でもなく――
心の針で縫いとめた、目に見える証。
そしてその日から、
学院の空気がまた、少しだけ――動き出した。
0
あなたにおすすめの小説
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します
八
恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。
なろうに別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
一部加筆修正しています。
2025/9/9完結しました。ありがとうございました。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる