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第4章:選ばれた未来、ほどけない絆へ
第45話「王宮の針、学院の糸」
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ひとつの針が、遠く離れた場所で動くとき――
もうひとつの糸は、静かに張り詰める。
それは、恋人たちの想いをつなぐ“無言の対話”だった。
***
王宮、第二応接の間。
アレン=ヴァルフォードは、背筋を伸ばして椅子に座っていた。
対面には、貴族派と文官派の代表たち。
その視線は柔らかく見えて、明確な“試験”を帯びていた。
「殿下。学院でのご交際について、各方面でさまざまな声が上がっております。
……特に、“あの令嬢”との関係に関して」
「あの令嬢、とは?」
「セシリア=ロートベルク嬢のことです」
老練な文官がさらりと名を告げる。
アレンは目を伏せなかった。
代わりに、まっすぐ答える。
「彼女は、私が“選んだ人”です。
誰かの推薦でも、政略でもなく――自分の意志で」
その言葉に、一部の顔が曇る。
だが、それは想定内だった。
問題は、次の質問だった。
「殿下。“選ぶ”ことは簡単です。
ですが、“選び続ける”には実績と覚悟が要ります。
王族の恋には、“私情を超えた影響力”が伴うことを、
どこまでご自覚か――お答えいただけますか?」
その問いに、アレンは静かに息を吸い込む。
「――彼女と過ごすことで、私は“弱さ”を知りました。
感情に振り回され、不安にもなる。
でもその不安を共有してくれる存在がいるということは、
政治よりも先に、“民の心を知る器”になる礎だと考えています」
言葉は飾っていなかった。
ただ、実直に、正面から放たれた。
応接の空気が、わずかに揺れる。
***
同じ頃。学院の講堂では、別の“試験”が進行していた。
セシリア=ロートベルクが、臨時討論会の代表として登壇していたのだ。
テーマは「階級を超えた連携の可能性」。
貴族、平民、商家の子女が集う場で、
彼女は自身の“恋”を語ることなく、
ただ“人と人が理解し合うには何が必要か”を語った。
「知識も、礼儀も、家柄も確かに必要です。
でも、いちばん大切なのは、“聴こうとする意志”だと思うんです」
彼女の声は震えていなかった。
けれど、胸に収めた“誰かを信じる強さ”が――
彼女の言葉を、まるで針のように貫通力あるものへと変えていた。
講堂は、静かな拍手に包まれた。
***
その夜。
王宮と学院、ふたつの場所に、それぞれの風が吹いた。
アレンは夜の書斎で、ふと机に手を伸ばす。
袖口に巻かれていたリボンは、もうほどけていた。
だが、彼はそれをそのままポケットにしまい――
胸に手をあてて、こう呟いた。
「君の糸は、まだ届いてる」
一方、セシリアは自室で硝子箱を開け、
指輪にそっと口づける。
「……わたしの針も、ちゃんと向かってるよ」
ふたりの手は触れ合えない。
声も交わせない。
けれど、想いは同じ針に通されていた。
遠く離れていても、縫い目が揃う奇跡。
それを、ふたりはまだ信じている。
もうひとつの糸は、静かに張り詰める。
それは、恋人たちの想いをつなぐ“無言の対話”だった。
***
王宮、第二応接の間。
アレン=ヴァルフォードは、背筋を伸ばして椅子に座っていた。
対面には、貴族派と文官派の代表たち。
その視線は柔らかく見えて、明確な“試験”を帯びていた。
「殿下。学院でのご交際について、各方面でさまざまな声が上がっております。
……特に、“あの令嬢”との関係に関して」
「あの令嬢、とは?」
「セシリア=ロートベルク嬢のことです」
老練な文官がさらりと名を告げる。
アレンは目を伏せなかった。
代わりに、まっすぐ答える。
「彼女は、私が“選んだ人”です。
誰かの推薦でも、政略でもなく――自分の意志で」
その言葉に、一部の顔が曇る。
だが、それは想定内だった。
問題は、次の質問だった。
「殿下。“選ぶ”ことは簡単です。
ですが、“選び続ける”には実績と覚悟が要ります。
王族の恋には、“私情を超えた影響力”が伴うことを、
どこまでご自覚か――お答えいただけますか?」
その問いに、アレンは静かに息を吸い込む。
「――彼女と過ごすことで、私は“弱さ”を知りました。
感情に振り回され、不安にもなる。
でもその不安を共有してくれる存在がいるということは、
政治よりも先に、“民の心を知る器”になる礎だと考えています」
言葉は飾っていなかった。
ただ、実直に、正面から放たれた。
応接の空気が、わずかに揺れる。
***
同じ頃。学院の講堂では、別の“試験”が進行していた。
セシリア=ロートベルクが、臨時討論会の代表として登壇していたのだ。
テーマは「階級を超えた連携の可能性」。
貴族、平民、商家の子女が集う場で、
彼女は自身の“恋”を語ることなく、
ただ“人と人が理解し合うには何が必要か”を語った。
「知識も、礼儀も、家柄も確かに必要です。
でも、いちばん大切なのは、“聴こうとする意志”だと思うんです」
彼女の声は震えていなかった。
けれど、胸に収めた“誰かを信じる強さ”が――
彼女の言葉を、まるで針のように貫通力あるものへと変えていた。
講堂は、静かな拍手に包まれた。
***
その夜。
王宮と学院、ふたつの場所に、それぞれの風が吹いた。
アレンは夜の書斎で、ふと机に手を伸ばす。
袖口に巻かれていたリボンは、もうほどけていた。
だが、彼はそれをそのままポケットにしまい――
胸に手をあてて、こう呟いた。
「君の糸は、まだ届いてる」
一方、セシリアは自室で硝子箱を開け、
指輪にそっと口づける。
「……わたしの針も、ちゃんと向かってるよ」
ふたりの手は触れ合えない。
声も交わせない。
けれど、想いは同じ針に通されていた。
遠く離れていても、縫い目が揃う奇跡。
それを、ふたりはまだ信じている。
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