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第4章:選ばれた未来、ほどけない絆へ
第46話「揺らぐ心に、試す声」
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心が揺れるのは、誰かを信じている証。
けれど、揺らいだ隙間に忍び込む“声”がある。
それが優しく見えても――本質は、試すための刃なのだ。
***
学院・南棟のテラス席。
午後の陽射しの下、セシリア=ロートベルクは珍しく本を開かず、
ただ空を見上げていた。
アレンの不在は、思った以上に“日常の彩度”を奪っていた。
わずか三日――そのはずなのに、彼女の時間は妙に長く感じられた。
「……会いたいな」
ぽつりと漏らしたその呟きは、誰にも届かないと思っていた。
けれど、そこに――声が割って入る。
「“会いたい”と思った瞬間から、心はもう“離れて”いるんですよ」
ゆっくりとした足音とともに現れたのは、ロイ=フィエルノートだった。
柔らかい金髪に、くすんだ青の上着。
どこにでも馴染むような優雅さと、見過ごせない“違和感”を併せ持つ男。
「……また、探られに来たんですか?」
セシリアの言葉に、彼は笑った。
「ええ、“探る”という言葉が適切かもしれませんね。
でも今日は、“問いかけ”に来ました」
ロイは、近くの椅子に腰を下ろす。
「――セシリア嬢。
もし、王子殿下が“王宮で別の選択”を強いられていたとしたら?
あなたは、それでも“信じ続けられますか”?」
その問いは、あまりに直線的だった。
けれど、声色はあくまで静かで、親切そうですらあった。
セシリアは目を伏せる。
「……それは、“試して”いるんですよね?
わたしじゃなく、“わたしたちの絆”を」
「答え方によっては、そうとも言える」
ロイは悪びれずに答える。
「恋は、ひとりの意志で結ばれているうちは脆い。
“揺れたとき”こそ、その価値が問われる。
殿下は今、そういう場に立たされている。
……そして、あなたもまた、同じです」
セシリアの胸に、うまく言葉にできないざわめきが広がる。
たとえ信じていたとしても、
“彼が誰かに試されている”という想像は、心を蝕む。
けれど――
「それでも、信じます。
王子様は、わたしを選んでくれたから。
そして、“信じていい未来”をくれた人だから」
セシリアは静かにそう言い切った。
強くはない。
声も少し震えていた。
けれど、それでも――芯だけは折れていなかった。
ロイは、それを見届けてからゆっくり立ち上がる。
「……いいですね。
その“不完全さ”が、あなたの美点だと思います」
そして彼は背を向け、
最後にひとつ、言葉を残す。
「けれど、“信じる強さ”には、時として“裏切りへの覚悟”が必要ですよ」
その言葉が、意味するものは。
まだ、彼女にはわからなかった。
***
その夜、硝子箱の中の指輪を見つめながら、
セシリアはひとつだけ、自分に問いかけた。
「……もし、この手が届かなくなったとしても――
それでも、わたしは、あの人の“信じた笑顔”を守れるのかな」
それは、恋ではなく、
誓いのような問いだった。
けれど、揺らいだ隙間に忍び込む“声”がある。
それが優しく見えても――本質は、試すための刃なのだ。
***
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ただ空を見上げていた。
アレンの不在は、思った以上に“日常の彩度”を奪っていた。
わずか三日――そのはずなのに、彼女の時間は妙に長く感じられた。
「……会いたいな」
ぽつりと漏らしたその呟きは、誰にも届かないと思っていた。
けれど、そこに――声が割って入る。
「“会いたい”と思った瞬間から、心はもう“離れて”いるんですよ」
ゆっくりとした足音とともに現れたのは、ロイ=フィエルノートだった。
柔らかい金髪に、くすんだ青の上着。
どこにでも馴染むような優雅さと、見過ごせない“違和感”を併せ持つ男。
「……また、探られに来たんですか?」
セシリアの言葉に、彼は笑った。
「ええ、“探る”という言葉が適切かもしれませんね。
でも今日は、“問いかけ”に来ました」
ロイは、近くの椅子に腰を下ろす。
「――セシリア嬢。
もし、王子殿下が“王宮で別の選択”を強いられていたとしたら?
あなたは、それでも“信じ続けられますか”?」
その問いは、あまりに直線的だった。
けれど、声色はあくまで静かで、親切そうですらあった。
セシリアは目を伏せる。
「……それは、“試して”いるんですよね?
わたしじゃなく、“わたしたちの絆”を」
「答え方によっては、そうとも言える」
ロイは悪びれずに答える。
「恋は、ひとりの意志で結ばれているうちは脆い。
“揺れたとき”こそ、その価値が問われる。
殿下は今、そういう場に立たされている。
……そして、あなたもまた、同じです」
セシリアの胸に、うまく言葉にできないざわめきが広がる。
たとえ信じていたとしても、
“彼が誰かに試されている”という想像は、心を蝕む。
けれど――
「それでも、信じます。
王子様は、わたしを選んでくれたから。
そして、“信じていい未来”をくれた人だから」
セシリアは静かにそう言い切った。
強くはない。
声も少し震えていた。
けれど、それでも――芯だけは折れていなかった。
ロイは、それを見届けてからゆっくり立ち上がる。
「……いいですね。
その“不完全さ”が、あなたの美点だと思います」
そして彼は背を向け、
最後にひとつ、言葉を残す。
「けれど、“信じる強さ”には、時として“裏切りへの覚悟”が必要ですよ」
その言葉が、意味するものは。
まだ、彼女にはわからなかった。
***
その夜、硝子箱の中の指輪を見つめながら、
セシリアはひとつだけ、自分に問いかけた。
「……もし、この手が届かなくなったとしても――
それでも、わたしは、あの人の“信じた笑顔”を守れるのかな」
それは、恋ではなく、
誓いのような問いだった。
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