55 / 80
第4章:選ばれた未来、ほどけない絆へ
第55話「結び目は、祝福よりも強く」
しおりを挟む
結ばれた手は、誰かの祝福を待たない。
それは、ふたりだけの“約束”であり、
誰にも譲らない“証”であるべきだから――
***
講堂での宣言から一夜明け、
学院の空気は明らかに変わっていた。
ざわつきは静まり、
好奇の視線はやがて敬意へと変わっていく。
アレン=ヴァルフォードが“誰を選んだのか”ではない。
“どう選んだのか”が、すべての答えだった。
生徒たちは思う。
もし自分があの場に立っていたら、
あれほど堂々と「誰かを選んだ」と言えるだろうか、と。
そして、セシリア=ロートベルクは――
そんな視線を真正面から受け止めていた。
リボンの結び目を確かめるように、
彼女は制服の胸元にそっと手を添える。
そこにあるのは、
アレンから贈られ、
自分の意志で結び、
そして――“公に選ばれた”重みだった。
「……もう、迷わない。
わたしはこの場所で、“愛された人”として立ち続ける」
言葉には出さない。
けれど、それは誰よりも強い“誓い”になっていた。
***
一方その頃、フェルティナ=セリスは、書庫の奥で静かに本を閉じていた。
扉の前に現れたのは、彼女の護衛役であり、
王宮との通信役も務める青年。
「お嬢様、報告書の草案が届いております。
王太子殿下との関係については、“良好な外交的距離を保つ”旨で――」
「それで結構よ。
もう、踏み込むつもりはないもの」
彼女の声は穏やかだった。
「……あの殿下が、“自分の言葉で誰かを守る”姿勢を見せた以上、
私の役目は終わったわ」
彼女は決して敗北したわけではなかった。
ただ、自分の“役目”――
王宮の意向を確認し、彼の人間性を見極めるという任務を、
確かに果たしたにすぎない。
「けれど、あのセシリア嬢……強かったわ。
彼の隣に立つということの、重さと意味をちゃんと理解していた」
ほんの少し微笑んで、フェルティナは本棚へ視線をやる。
その眼差しは、もはや“恋敵”に向けられたものではなく――
同じ“選ばれた者”に向けられた、静かな敬意だった。
***
その夜、アレンとセシリアは、学院の屋上で並んで星を見ていた。
風はやさしく、
騒がしかった数日が、まるで夢のように思えるほどに静かだった。
「……あのとき、怖くなかったですか?」
セシリアがぽつりと尋ねる。
「うん、怖かったよ。
でも、君を“選び続けるための場”だったから。
君の名前を呼んだとき、やっと“ひとつの物語”が終わって、
ふたりの物語が始まった気がした」
そう言って、彼はそっと彼女の手を取る。
その指には、指輪はない。
けれど、その結び目は――もう、誰にも解けないほどに強かった。
それは、ふたりだけの“約束”であり、
誰にも譲らない“証”であるべきだから――
***
講堂での宣言から一夜明け、
学院の空気は明らかに変わっていた。
ざわつきは静まり、
好奇の視線はやがて敬意へと変わっていく。
アレン=ヴァルフォードが“誰を選んだのか”ではない。
“どう選んだのか”が、すべての答えだった。
生徒たちは思う。
もし自分があの場に立っていたら、
あれほど堂々と「誰かを選んだ」と言えるだろうか、と。
そして、セシリア=ロートベルクは――
そんな視線を真正面から受け止めていた。
リボンの結び目を確かめるように、
彼女は制服の胸元にそっと手を添える。
そこにあるのは、
アレンから贈られ、
自分の意志で結び、
そして――“公に選ばれた”重みだった。
「……もう、迷わない。
わたしはこの場所で、“愛された人”として立ち続ける」
言葉には出さない。
けれど、それは誰よりも強い“誓い”になっていた。
***
一方その頃、フェルティナ=セリスは、書庫の奥で静かに本を閉じていた。
扉の前に現れたのは、彼女の護衛役であり、
王宮との通信役も務める青年。
「お嬢様、報告書の草案が届いております。
王太子殿下との関係については、“良好な外交的距離を保つ”旨で――」
「それで結構よ。
もう、踏み込むつもりはないもの」
彼女の声は穏やかだった。
「……あの殿下が、“自分の言葉で誰かを守る”姿勢を見せた以上、
私の役目は終わったわ」
彼女は決して敗北したわけではなかった。
ただ、自分の“役目”――
王宮の意向を確認し、彼の人間性を見極めるという任務を、
確かに果たしたにすぎない。
「けれど、あのセシリア嬢……強かったわ。
彼の隣に立つということの、重さと意味をちゃんと理解していた」
ほんの少し微笑んで、フェルティナは本棚へ視線をやる。
その眼差しは、もはや“恋敵”に向けられたものではなく――
同じ“選ばれた者”に向けられた、静かな敬意だった。
***
その夜、アレンとセシリアは、学院の屋上で並んで星を見ていた。
風はやさしく、
騒がしかった数日が、まるで夢のように思えるほどに静かだった。
「……あのとき、怖くなかったですか?」
セシリアがぽつりと尋ねる。
「うん、怖かったよ。
でも、君を“選び続けるための場”だったから。
君の名前を呼んだとき、やっと“ひとつの物語”が終わって、
ふたりの物語が始まった気がした」
そう言って、彼はそっと彼女の手を取る。
その指には、指輪はない。
けれど、その結び目は――もう、誰にも解けないほどに強かった。
0
あなたにおすすめの小説
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる