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第5章:王子と令嬢、そして未来の名前
第64話「選ばれた声、王宮に響く婚約発表」
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“ふたりの物語”が、
ついに“国の歴史”と交差する。
恋では伝えきれなかったすべてを――
この日、ふたりは“選ばれた言葉”で示すことになる。
***
王都中心、王宮・大広間。
昼下がり、陽光が差し込む白石の天窓から、
金の装飾が反射し、会場を淡く染めていた。
そこに集められたのは、百を超える貴族と政界関係者、
そして新聞記者たち。
“次期王位継承者の公的発表”とされるこの会見は、
実のところ――王子とその伴侶候補の“婚約公示”であることがほぼ確定していた。
その証拠に、
壇上に並ぶのは、王太子・アレン=ヴァルフォード。
そして、その隣には――
「……緊張してる?」
と、そっと囁いたのは、セシリア=リュミエール。
彼女の姿は、王都の誰もが知らない“新しい名前”を背負う者として。
しかしその目には、恐れも怯えもなかった。
「少しだけ。でも、君が隣にいるから大丈夫」
アレンが返すその声は、誰よりもまっすぐだった。
やがて、会場のざわめきが静まる。
そして、儀礼官が一歩前に進み、
高らかに宣言する。
「これより、王太子殿下より王家の次代に関する重大なる発表がございます。
どうか、沈黙をもって耳を傾けられたし」
***
アレンは壇上で視線をまっすぐに前へ向ける。
「本日この場にお集まりいただいた皆さまに、
まずは感謝を。
そして、これから語ることが、
“わたしひとり”の言葉ではないことを、最初にお伝えしたい」
少しだけ息を整え、彼は続けた。
「私は、本日――
“セシリア=リュミエール”と、婚約を結ぶことをここに宣言します」
会場に、微かな息が漏れる。
だが、それは反対の色を含まないものだった。
すでに多くが知っていた。
王子が誰を選んだのか。
そして、彼女が“選ばれるに値する”者であることを。
「彼女は、貴族の名門でもなければ、政略のための結びつきでもない。
けれど――
私に“人としての歩み”を与えてくれた、唯一の存在です」
そして、そっとセシリアの手を取る。
「これからは、“王子”としてではなく、
“共に歩む者”として――彼女と未来を築いていきます」
セシリアもまた、静かに一礼する。
「この名を選んだのは、
わたしたちが出会い、始まった場所――
“リュミエール学院”に敬意を込めてのことです。
どうか、ふたりの選択を……
“祝福”よりも、“理解”していただけたら幸いです」
その言葉に、最前列にいた学院長が、
わずかに目を潤ませながら小さく拍手を送った。
それを皮切りに――
ゆっくりと、しかし確かに、
会場は拍手という肯定の音に包まれていく。
***
その音のなかで、セシリアは思っていた。
“悪役令嬢”と呼ばれたあの頃の自分が、
今日という日を知っていたら、どれだけ驚くだろう、と。
でもきっと、あの頃の自分に言えるだろう。
「あなたが涙を流していた日々は、
ちゃんと誰かに届いていたんだよ」――と。
ついに“国の歴史”と交差する。
恋では伝えきれなかったすべてを――
この日、ふたりは“選ばれた言葉”で示すことになる。
***
王都中心、王宮・大広間。
昼下がり、陽光が差し込む白石の天窓から、
金の装飾が反射し、会場を淡く染めていた。
そこに集められたのは、百を超える貴族と政界関係者、
そして新聞記者たち。
“次期王位継承者の公的発表”とされるこの会見は、
実のところ――王子とその伴侶候補の“婚約公示”であることがほぼ確定していた。
その証拠に、
壇上に並ぶのは、王太子・アレン=ヴァルフォード。
そして、その隣には――
「……緊張してる?」
と、そっと囁いたのは、セシリア=リュミエール。
彼女の姿は、王都の誰もが知らない“新しい名前”を背負う者として。
しかしその目には、恐れも怯えもなかった。
「少しだけ。でも、君が隣にいるから大丈夫」
アレンが返すその声は、誰よりもまっすぐだった。
やがて、会場のざわめきが静まる。
そして、儀礼官が一歩前に進み、
高らかに宣言する。
「これより、王太子殿下より王家の次代に関する重大なる発表がございます。
どうか、沈黙をもって耳を傾けられたし」
***
アレンは壇上で視線をまっすぐに前へ向ける。
「本日この場にお集まりいただいた皆さまに、
まずは感謝を。
そして、これから語ることが、
“わたしひとり”の言葉ではないことを、最初にお伝えしたい」
少しだけ息を整え、彼は続けた。
「私は、本日――
“セシリア=リュミエール”と、婚約を結ぶことをここに宣言します」
会場に、微かな息が漏れる。
だが、それは反対の色を含まないものだった。
すでに多くが知っていた。
王子が誰を選んだのか。
そして、彼女が“選ばれるに値する”者であることを。
「彼女は、貴族の名門でもなければ、政略のための結びつきでもない。
けれど――
私に“人としての歩み”を与えてくれた、唯一の存在です」
そして、そっとセシリアの手を取る。
「これからは、“王子”としてではなく、
“共に歩む者”として――彼女と未来を築いていきます」
セシリアもまた、静かに一礼する。
「この名を選んだのは、
わたしたちが出会い、始まった場所――
“リュミエール学院”に敬意を込めてのことです。
どうか、ふたりの選択を……
“祝福”よりも、“理解”していただけたら幸いです」
その言葉に、最前列にいた学院長が、
わずかに目を潤ませながら小さく拍手を送った。
それを皮切りに――
ゆっくりと、しかし確かに、
会場は拍手という肯定の音に包まれていく。
***
その音のなかで、セシリアは思っていた。
“悪役令嬢”と呼ばれたあの頃の自分が、
今日という日を知っていたら、どれだけ驚くだろう、と。
でもきっと、あの頃の自分に言えるだろう。
「あなたが涙を流していた日々は、
ちゃんと誰かに届いていたんだよ」――と。
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