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第5章:王子と令嬢、そして未来の名前
第79話「未来に向けた、最初の国王会議」
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“治める”ことと、“導く”ことは似て非なる。
それを知らぬ者が王冠を被れば、国はやがて揺らぐ。
けれど――
愛した誰かの声を聞いた者だけが、国を未来へ進められる。
***
王宮・金緞(きんたん)の間。
ここは、“次代の国王を迎える準備”のために設けられた、
王家直属の会議場。
その中央に、アレン=ヴァルフォードが立っていた。
周囲に並ぶのは、各大臣と枢密顧問。
そして――この会議には“王妃”の席が、特別に一席設けられていた。
そこに座るのはもちろん、セシリア=リュミエール。
「……第一議題。“地方開発資金”の見直し案について。
殿下、妃殿下、現状維持と拡大支援のどちらを優先されますか?」
議長の問いかけに、アレンは一度セシリアを見る。
すると、彼女は穏やかに答える。
「“拡大”ではなく、“再配置”を提案したいと思います。
今は、拡げるより“偏りを均す”べき時期だと考えます」
一瞬のざわつき。だがそれは否定ではない。
思っていた以上の、“的を射た答え”だったからだ。
続けてアレンが言う。
「セシリアの意見に賛同する。
我々は未来を急ぐより、“土をならす時間”を取るべきだ」
会議は静かに進み、次第にその“空気”が変わっていく。
ふたりの声に、
ただの“王と王妃”ではない、“未来を背負うふたり”の実在感が宿っていた。
***
昼の休憩時間。
中庭のベンチで、セシリアはアレンにそっと囁いた。
「……正直ね、あの会議の椅子、いまだに“少し背中が冷える”の」
「緊張?」
「ううん、“いつでも誰かが背中を見てる”感じがして」
その言葉に、アレンは真顔で言う。
「君の背中を見てるのは、僕だよ。
そして、君の隣にいるのも、僕だけだ」
セシリアは、照れたように笑って頷いた。
「……だったら、次は少しだけ“強気に”発言してみようかしら。
王妃としてじゃなく、“わたしとして”」
「いいね。君の意見こそが、この国の未来になる」
***
その日の会議、
セシリアは初めて、“自らの判断”で議題に進言をした。
それは些細な提案だった。
『各地の書簡文における“女性名の署名割合”を統計に記録すること』
誰もが一瞬、意味を問うた。
けれど、彼女ははっきりと答えた。
「それは、“見えない声”を数字に変える一歩です。
この国にどれだけの“発言している女性”がいるのか、
それを“記録”することは、きっと未来の誰かの勇気になる」
一瞬の沈黙。
そして、誰よりも早く拍手を送ったのは――アレンだった。
「……採用だ。
その“未来への記録”こそ、僕が望む“王の責務”だ」
***
夕暮れ。
ふたりの帰り道、アレンがぽつりとつぶやく。
「君が王妃じゃなかったら、僕はきっと“ただの継承者”で終わってたと思う」
セシリアは、足を止めて彼を見上げた。
「じゃあ――わたしがいたから、“物語”になれた?」
「うん。君がいたから、“未来の名前”が生まれた」
ふたりは、手を取り、歩き出す。
その歩みの音は、
もう誰の真似でも、誰かの理想でもない。
“ふたりの王と王妃”として進む、確かな第一歩だった。
それを知らぬ者が王冠を被れば、国はやがて揺らぐ。
けれど――
愛した誰かの声を聞いた者だけが、国を未来へ進められる。
***
王宮・金緞(きんたん)の間。
ここは、“次代の国王を迎える準備”のために設けられた、
王家直属の会議場。
その中央に、アレン=ヴァルフォードが立っていた。
周囲に並ぶのは、各大臣と枢密顧問。
そして――この会議には“王妃”の席が、特別に一席設けられていた。
そこに座るのはもちろん、セシリア=リュミエール。
「……第一議題。“地方開発資金”の見直し案について。
殿下、妃殿下、現状維持と拡大支援のどちらを優先されますか?」
議長の問いかけに、アレンは一度セシリアを見る。
すると、彼女は穏やかに答える。
「“拡大”ではなく、“再配置”を提案したいと思います。
今は、拡げるより“偏りを均す”べき時期だと考えます」
一瞬のざわつき。だがそれは否定ではない。
思っていた以上の、“的を射た答え”だったからだ。
続けてアレンが言う。
「セシリアの意見に賛同する。
我々は未来を急ぐより、“土をならす時間”を取るべきだ」
会議は静かに進み、次第にその“空気”が変わっていく。
ふたりの声に、
ただの“王と王妃”ではない、“未来を背負うふたり”の実在感が宿っていた。
***
昼の休憩時間。
中庭のベンチで、セシリアはアレンにそっと囁いた。
「……正直ね、あの会議の椅子、いまだに“少し背中が冷える”の」
「緊張?」
「ううん、“いつでも誰かが背中を見てる”感じがして」
その言葉に、アレンは真顔で言う。
「君の背中を見てるのは、僕だよ。
そして、君の隣にいるのも、僕だけだ」
セシリアは、照れたように笑って頷いた。
「……だったら、次は少しだけ“強気に”発言してみようかしら。
王妃としてじゃなく、“わたしとして”」
「いいね。君の意見こそが、この国の未来になる」
***
その日の会議、
セシリアは初めて、“自らの判断”で議題に進言をした。
それは些細な提案だった。
『各地の書簡文における“女性名の署名割合”を統計に記録すること』
誰もが一瞬、意味を問うた。
けれど、彼女ははっきりと答えた。
「それは、“見えない声”を数字に変える一歩です。
この国にどれだけの“発言している女性”がいるのか、
それを“記録”することは、きっと未来の誰かの勇気になる」
一瞬の沈黙。
そして、誰よりも早く拍手を送ったのは――アレンだった。
「……採用だ。
その“未来への記録”こそ、僕が望む“王の責務”だ」
***
夕暮れ。
ふたりの帰り道、アレンがぽつりとつぶやく。
「君が王妃じゃなかったら、僕はきっと“ただの継承者”で終わってたと思う」
セシリアは、足を止めて彼を見上げた。
「じゃあ――わたしがいたから、“物語”になれた?」
「うん。君がいたから、“未来の名前”が生まれた」
ふたりは、手を取り、歩き出す。
その歩みの音は、
もう誰の真似でも、誰かの理想でもない。
“ふたりの王と王妃”として進む、確かな第一歩だった。
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