The Outsider ~規矩行い尽くすべからず~

藤原丹後

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第1章 ダンジョン

第17話  選ぶほどたくさんのバスがあるわけじゃないから 目の前に来たバスに乗ることだけ考えた

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 翌日。瓢箪型の手前の部屋にやってきた。

 今回もスライムや他の何かと遭遇することはなく、車椅子や人形も前日に放置したまま何もかわっていない。カイロは冷たくなっていた。


 車椅子はそのまま放置して、ヘッドライトを170度大角度の投光照明に切り替えると奥の部屋に向かう。10メートル四方ぐらいの部屋だが何もない。右斜め前に空間が広がっているので、そちらに向かう。


 10メートル四方の部屋が連続して3部屋続いていたわけだが、この部屋にも2部屋前のと同じぐらいの大岩が中央にあり、無造作に赤オーブが10個置かれていた。


 天井を見上げたが何かが潜んでいるようには見えない。物干し竿で赤オーブを横に落としていく。これは全部軟オーブだった。回収してバックパックに入れていく。

 1つは損傷部位治癒薬用に、もう1つを毒消し用として、バックパックサイドの直ぐに出せるところへ入れておく。


 部屋の奥を見ると、2方向、正確に言うと右は左右に分岐しているので通路は3方向に分かれている。

 左手の法則* とかいうのに従い、正面の3メートルぐらいの幅になっている(規格化された? )通路を10数メートル進むと、またもや10メートル四方ぐらいの部屋と中央に大岩を配置した行き止まりの部屋にでた。


「スクロール! 」

 思わず声がでた。赤のスクロールが20巻並べられている。

 魔法が使えるようになることに興奮し、スクロール** を勢いで全て開き、覚える。



[魔法の矢]×3
最大射程は45メートル。最初は1本のみ。術者の使用頻度が増えると本数も増えていく。例外はあるが基本必中の魔法攻撃。


[魅了]
効果は数分間持続。 36メートル以内の人間1人と友人になれる。術が切れると対象と敵対関係になる。


[腹話術]
効果は20分間持続。18メートル以内の物品か場所から術者が話しかけることができる。


[扉封じ]
効果は数十分間持続。対象の扉が開き難くなる。


[探知]
効果は1時間持続。 36メートル以内の指定した動植物を見つける。ただし動物よりも高い知能を持つ生物は探知できない。動植物の名前凡その特徴を知っていれば探知可能。


[危険感知]
効果は1時間持続。数メートル以内の悪意のある生物・罠・毒を知覚できる。


[光球]×2
効果は1時間持続。36メートル以内の場所・物から光を放つ。松明程度の光量で直径9メートルの範囲を照らす。


[物品浮揚]
効果は8時間持続。230キログラムまでの物品を載せられる透明な板が術者に追従する。


[天候予知]
効果は12時間持続。


[魔力感知]
効果は20分間持続。18メートル以内の魔法がかかった物を感知できる。


[邪悪感知]
効果は1時間持続。36メートル以内の術者への悪意を探知する。罠や毒は探知できない。


[鑑定(赤)]×2
装備品やアイテムの使い方や効果、健康状態、金銭価値が分かる。


[軽傷治癒]×3
接触した対象の傷を治す。もしくは麻痺から回復させる。


[食糧、水を清める]
通常食や保存食なら1食分。水6リットル。携帯食料ではない通常の食事なら12人分。体内を循環する体液には効果がない。副次的な用法として、大人数人分の濡れた服・靴にこの呪文を使用すると水が分離され乾く。革製の服・靴や頭髪には非推奨。





 この部屋は行き止まりだったので、軟オーブがあった部屋に引き返し、残り2択の内左側の通路を進む。

 横幅が9メートルぐらいで、天井もやや高くなった広い通路を30メートル程進むと、15メートル四方ぐらいの部屋があり、半ば予想通り中央に大岩が鎮座している。


「金? 」

 岩の上には、どこかで見たような金色の物体が置かれていた。映画『クォ・ヴァディス』*** で人質の王女が奴隷の印だったか何かで使用していた小道具、幅広の板状アームレットのような物が置いてあったので手に取って持ち上げた。

 見た目より重くないので、純金ではないと直ぐに気づき、少しがっかりする。

 金ぴかの人工衛星で使われる**** 種類の違う塗装の重ね塗りで金色に見えただけなのが、タメスガめつしていると分かってしまった。


 もう少しよく見るために、1度天井を見上げて何もいないのを確認し、大岩の上に左手で持っていた龕灯ガンドウを置いたとき、視界の隅で何かが光る。


「透明なオーブ……」

 奇妙なものが置いてあった。


 早速、鑑定(赤)を使ってみようと、大岩の上にアームレットを置き、その上に転がらないようオーブを載せた。

 いきなりオーブが発光し、最も近くの壁に高さ3メートルぐらい、1番広い横幅が1メートルぐらいの、楕円状の光が照射される。



 数秒後、3Dホログラムディスプレイのような映像が壁に映し出される。

 よくできた映像だが、執務室? 欧州の個人所有の蔵書のような統一されたデザインの背表紙が並んだ本棚と、昔のソ連映画でみかけた重厚な木製机、机の上に積み上げられた書類と、決裁済みの書類入れだろうか、黒と白と木目の見えるケースが1つずつ3ケース。


 突然、映像の中にひとりの老人が現れた。褐色に日焼けした肌と白髪、コーカソイド系の顔立ち。老人は驚いた様子でこちらに近づいてくる。何か喋っているが、耳慣れない言語で内容はまったく理解できなかった。





__________________________________________________________

* 迷路の攻略法として、左若しくは右側の壁沿いに進めば、時間はかかっても必ず脱出できるというもの。迷路の構造によっては永遠に脱出できない場合もあるので万能ではない。


** 本作品での魔法は基本的にD&D旧版クラシックを援用しています。

×3とあるのは同一スクロールを3巻分記憶しているので1日に3回使えるということです。8時間以上の休憩で魔法の使用回数はリセットされ、1度使った魔法の再行使が可能となります。

オリジナルルールを少しアレンジしていますので、異同がある場合は作中の記述に変更したということです。死体を操るスクロールは存在しますが、死者を生き返らせるスクロールは作中世界に存在しません。


*** 『クォ・ヴァディス』米映画 1951


**** 金を使用している衛星もあります。
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