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「失礼しました」
ハンカチで汗を拭きながらギリアムさんが戻ってくる。
「いいえ。あの、時間がないので先にお伝えするのですが、私には遺伝性の病気があります。大病などではありませんし、日常生活では全く支障がありません。だけど、もし気になるようなら私は除外してください」
「遺伝性の? 病気?」
「はい。一部、色がわからないんです」
「色が…」
ギリアムさんはポカンと驚いた顔をしていた。のっけから言われたら驚くか。だけど貴族などではこの色覚異常で輿入れが除外されたりする。色は案外魔力に関わっているから。
普段は自分から開示しないけれど、家族になれる人を探すのであれば最初から『いいよ』と言ってくれる人が良かった。ギリアムさんはレベル0なので、あまり関係はなさそうだけど。
むむ! そういう意味では0の人って凄く条件として良い気が…
「一部というのは何色がわからないのですか」
「そうですね。細かい検査をしたことがないのですが、青と紫の違いが無いようです。オレンジと黄色と茶色も薄いと曖昧な場合があります」
「じゃあ、紫が青に見えている?」
「ん~、そもそもの認識が違うようなので、どちらがどうなのかもわかりません」
「はー…」
「え?」
「正直な方ですね、初対面の僕に。素直そうな方だから不思議はありませんが」
「素直そうに? 見えますか? ふふふ。私はすれた人間ですけどね」
意図的にしなを作ってそう言えば、寄せた胸元にギリアムさんの目が釘付けになる。まぁほとんどシールなんだけど。
「すれたって、どういう」
そこで十分のベルが鳴り、続く言葉が遮られた。
「はぁ~い、交代のお時間です!とても残念なお知らせですが、男女でお一人ずつが強制退場になりましたよ」
早いな?
「おやおや、いけませんね。小さな嘘もなく、誠実によろしくお願いします! では男性は隣のブースへ移動をお願いします」
ギリアムさんは『話が途中になってしまいましたね』と言って、もう少し話したかったと残念そうにしてくれた。地味にうれしかった。
「ありがとうございます、私ももう少しお話したかったです。私ばかり話してすいません。次は是非ギリアムさんの話を」
「ええ、もちろんです」
では、と彼が去って次の人がやってきた。
「アンサムです、よろしく」
「クラウディアです、よろしくお願いします」
一つ歳上のアンサムさんは落ち着きがなかった。私と目を合わせず、会話もほとんどキャッチボールにならず時間が過ぎた。
「あの、どこか具合でも悪いのですか」
「いや、まぁ久しぶりに来てみたんだけどさ。こんな妙なイベント初めてだから居心地悪くて…もう帰りたいよ。そっちはレベル4だから慣れてるだろうけど」
「どういうことですか?私は婚活バーに来るのが初めてで」
「君みたいな綺麗な子、本当は婚活バーなんて利用する必要ないんじゃないの? さくらじゃない?」
「まさか」
「半年間登録していくつか出てるけど、嘘ついたら水責めなんてルール聞いたこともない。目の前の女の子、爆笑していたけど水浸しだった! 怖いだろこんなの」
「えっ、そうなのですか?」
「そうだよ。普通ないよ。自分を良く見せるために多少は誰しも嘘を吐くさ。でもそんなの男女の駆け引きの一つだろ?」
そういうものか。いや、確かにそうか。私も彼に言わなかったことがある。
「イベント終わったら、一杯どう?」
嘘つく気まんまんですよね?
「ん~、子どもが待っているので、お酒はちょっと」
「あ、そうか。じゃあ俺の連絡先、後で交換させてくれよ」
ソワソワしながらも結構強引な男だった。適当に頷いて交代時間になる。
次の男性はニコニコした感じの良い人だったけど、全体的に湿っていた。
「生活魔法の火系が得意なんで、大体乾いたんですけどね」
「な、なるほど」
ニコライさんは丸顔でツヤツヤした肌をしていて、三人の中では良くも悪くも一番おしゃべり。
「いや、つい話を盛ってしまう癖がありまして。でも盛るのと嘘は少し違うと思いません?面白く聞きたいでしょう皆さん。リップサービスって言葉もあるでしょうに」
「ん~…どうでしょう。多分、嘘発見器の魔道具を使っていると思うので、機械が判断しますしねぇ」
確か設定状況によって判断の甘辛も変わるはずだった。
「おや~クラウディアさんは魔具にお詳しいのですね? 勉強でもされたのですか?」
「勉強…ええ、まぁそんなところです」
「レベル4ですもんね。何かそういう魔道具関連の施設で働いたことがおありですか?」
「え、ええ。まぁ」
人々の登録の他に、管理局は持ち込まれた魔具類の登録をする場所でもあった。効果の真偽を判定し、合格魔具だけが登録されて販売が可能になるのだ。私の上司はこの鑑定を試しもせず出せた。マイペースで、興味のある魔力案件については寝食を忘れる程に没頭する管理官。一度夢中になると他が見えなくなるステレオタイプの天才で、癖が強くて補佐職は色々と大変だった。
「美人で秀才? 素晴らしいですね! いや嫁に欲しいくら」
嫁に欲しいと言いながら、目の前でニコライさんが頭から滝のように水を被って姿を消した。
「きゃーーーーーっ」
ちょっと待ってどこが嘘だった!?
美人? 素晴らしい? 嫁に欲しくなかった?
「ぐぇ。傷つくな~!」
ぼとぼとになった目の前の床やテーブルに生活魔法をかけて元に戻し、ついでに紅茶を注ぎなおして頭を揉んだ。一旦整理しようじゃないか。
五人の男性のうち、一回目の後に一人が強制退場して、今もうニコライさんが居なくなったから、つまりギリアムさんとアンサムさんとあともう一人しか居ない。
私は籠からまたマロングラッセを取り出してムシャムシャと食べる。
「え~!では次の交代を~と言いたい所ですが、残念なことに今いらっしゃる三名の方を除いて皆さん強制退場となってしまいました! …え? 帰る? まじですか? あ~…えー、では気を取り直して個人ターイム! 最後の連絡先交換タイムまで男女ともに移動は自由です!お好きな方と沢山お話してくださいね!! ごゆっくりどうぞ~!」
司会者のそんな声が聞こえてきて、眉を寄せている私の前にギリアムさんが帰ってきた。
「つまり?」
「ええ、僕以外いなくなってしまいました」
「女性も私以外?」
「クラウディアさんと僕の、二人だけです」
わぁ…ギリアムさん気の毒過ぎる。
「あの、良ければギリアムさんの参加費半分持ちますし、私たちも帰りましょうか」
「なぜですか?」
「いえ、なぜって…私しかいないんじゃ。なんて言うか、コスパも悪いでしょう」
「コスパ? 安すぎるくらいなのに?」
咄嗟に身構えたが、何も起きなかった。
「どうしましたか」
「いえ…さっきの方はリップサービスの途中で退場されたので」
ギリアムさんはそうですか、とのんびり相槌を打っている。
「良ければこのままもう少し話せませんか? 僕は仕事柄、人と話すのが好きなんです。お忙しいですか? お仕事とか」
私と話をしたい人なんて、心地いい響きだった。嬉しくてにやけてしまう。
「いえ、仕事は自由業ですし特には…お迎えまでなら大丈夫です」
「薬を作られているんでしたね。お住まいは遠いですか」
「山の中に住んでいます」
「やま? 山? なぜそんな所に…」
「ギリアムさんのお住まいはどちらですか?」
「私は街中に住まいがあります。古いだけが取り柄の建物ですが、部屋は家族で住んでも余っているので結婚相手にも一緒に住んで貰えたら」
同居か~。でも部屋が余るなんて…思ったより裕福そうなのね。
「あの、一応確認ですが貴族じゃないですよね」
「ええ、貴族じゃないですよ」
穏やかな回答に、水は落ちてこなかったのでホッとする。
「山の中に住んでいるのは…息子の父親に見つからない為です」
「………」
ギリアムさんは唇を動かし、言葉を選びあぐねている。
「以前、私は上司だった人とそういう関係にありました」
「そういう?」
「身体だけの、という意味です」
「か」
「あ~…だけ、というのは一方的な見方かもしれません。別に上司は私を蔑ろにしていたわけではありませんでした」
ハンカチで汗を拭きながらギリアムさんが戻ってくる。
「いいえ。あの、時間がないので先にお伝えするのですが、私には遺伝性の病気があります。大病などではありませんし、日常生活では全く支障がありません。だけど、もし気になるようなら私は除外してください」
「遺伝性の? 病気?」
「はい。一部、色がわからないんです」
「色が…」
ギリアムさんはポカンと驚いた顔をしていた。のっけから言われたら驚くか。だけど貴族などではこの色覚異常で輿入れが除外されたりする。色は案外魔力に関わっているから。
普段は自分から開示しないけれど、家族になれる人を探すのであれば最初から『いいよ』と言ってくれる人が良かった。ギリアムさんはレベル0なので、あまり関係はなさそうだけど。
むむ! そういう意味では0の人って凄く条件として良い気が…
「一部というのは何色がわからないのですか」
「そうですね。細かい検査をしたことがないのですが、青と紫の違いが無いようです。オレンジと黄色と茶色も薄いと曖昧な場合があります」
「じゃあ、紫が青に見えている?」
「ん~、そもそもの認識が違うようなので、どちらがどうなのかもわかりません」
「はー…」
「え?」
「正直な方ですね、初対面の僕に。素直そうな方だから不思議はありませんが」
「素直そうに? 見えますか? ふふふ。私はすれた人間ですけどね」
意図的にしなを作ってそう言えば、寄せた胸元にギリアムさんの目が釘付けになる。まぁほとんどシールなんだけど。
「すれたって、どういう」
そこで十分のベルが鳴り、続く言葉が遮られた。
「はぁ~い、交代のお時間です!とても残念なお知らせですが、男女でお一人ずつが強制退場になりましたよ」
早いな?
「おやおや、いけませんね。小さな嘘もなく、誠実によろしくお願いします! では男性は隣のブースへ移動をお願いします」
ギリアムさんは『話が途中になってしまいましたね』と言って、もう少し話したかったと残念そうにしてくれた。地味にうれしかった。
「ありがとうございます、私ももう少しお話したかったです。私ばかり話してすいません。次は是非ギリアムさんの話を」
「ええ、もちろんです」
では、と彼が去って次の人がやってきた。
「アンサムです、よろしく」
「クラウディアです、よろしくお願いします」
一つ歳上のアンサムさんは落ち着きがなかった。私と目を合わせず、会話もほとんどキャッチボールにならず時間が過ぎた。
「あの、どこか具合でも悪いのですか」
「いや、まぁ久しぶりに来てみたんだけどさ。こんな妙なイベント初めてだから居心地悪くて…もう帰りたいよ。そっちはレベル4だから慣れてるだろうけど」
「どういうことですか?私は婚活バーに来るのが初めてで」
「君みたいな綺麗な子、本当は婚活バーなんて利用する必要ないんじゃないの? さくらじゃない?」
「まさか」
「半年間登録していくつか出てるけど、嘘ついたら水責めなんてルール聞いたこともない。目の前の女の子、爆笑していたけど水浸しだった! 怖いだろこんなの」
「えっ、そうなのですか?」
「そうだよ。普通ないよ。自分を良く見せるために多少は誰しも嘘を吐くさ。でもそんなの男女の駆け引きの一つだろ?」
そういうものか。いや、確かにそうか。私も彼に言わなかったことがある。
「イベント終わったら、一杯どう?」
嘘つく気まんまんですよね?
「ん~、子どもが待っているので、お酒はちょっと」
「あ、そうか。じゃあ俺の連絡先、後で交換させてくれよ」
ソワソワしながらも結構強引な男だった。適当に頷いて交代時間になる。
次の男性はニコニコした感じの良い人だったけど、全体的に湿っていた。
「生活魔法の火系が得意なんで、大体乾いたんですけどね」
「な、なるほど」
ニコライさんは丸顔でツヤツヤした肌をしていて、三人の中では良くも悪くも一番おしゃべり。
「いや、つい話を盛ってしまう癖がありまして。でも盛るのと嘘は少し違うと思いません?面白く聞きたいでしょう皆さん。リップサービスって言葉もあるでしょうに」
「ん~…どうでしょう。多分、嘘発見器の魔道具を使っていると思うので、機械が判断しますしねぇ」
確か設定状況によって判断の甘辛も変わるはずだった。
「おや~クラウディアさんは魔具にお詳しいのですね? 勉強でもされたのですか?」
「勉強…ええ、まぁそんなところです」
「レベル4ですもんね。何かそういう魔道具関連の施設で働いたことがおありですか?」
「え、ええ。まぁ」
人々の登録の他に、管理局は持ち込まれた魔具類の登録をする場所でもあった。効果の真偽を判定し、合格魔具だけが登録されて販売が可能になるのだ。私の上司はこの鑑定を試しもせず出せた。マイペースで、興味のある魔力案件については寝食を忘れる程に没頭する管理官。一度夢中になると他が見えなくなるステレオタイプの天才で、癖が強くて補佐職は色々と大変だった。
「美人で秀才? 素晴らしいですね! いや嫁に欲しいくら」
嫁に欲しいと言いながら、目の前でニコライさんが頭から滝のように水を被って姿を消した。
「きゃーーーーーっ」
ちょっと待ってどこが嘘だった!?
美人? 素晴らしい? 嫁に欲しくなかった?
「ぐぇ。傷つくな~!」
ぼとぼとになった目の前の床やテーブルに生活魔法をかけて元に戻し、ついでに紅茶を注ぎなおして頭を揉んだ。一旦整理しようじゃないか。
五人の男性のうち、一回目の後に一人が強制退場して、今もうニコライさんが居なくなったから、つまりギリアムさんとアンサムさんとあともう一人しか居ない。
私は籠からまたマロングラッセを取り出してムシャムシャと食べる。
「え~!では次の交代を~と言いたい所ですが、残念なことに今いらっしゃる三名の方を除いて皆さん強制退場となってしまいました! …え? 帰る? まじですか? あ~…えー、では気を取り直して個人ターイム! 最後の連絡先交換タイムまで男女ともに移動は自由です!お好きな方と沢山お話してくださいね!! ごゆっくりどうぞ~!」
司会者のそんな声が聞こえてきて、眉を寄せている私の前にギリアムさんが帰ってきた。
「つまり?」
「ええ、僕以外いなくなってしまいました」
「女性も私以外?」
「クラウディアさんと僕の、二人だけです」
わぁ…ギリアムさん気の毒過ぎる。
「あの、良ければギリアムさんの参加費半分持ちますし、私たちも帰りましょうか」
「なぜですか?」
「いえ、なぜって…私しかいないんじゃ。なんて言うか、コスパも悪いでしょう」
「コスパ? 安すぎるくらいなのに?」
咄嗟に身構えたが、何も起きなかった。
「どうしましたか」
「いえ…さっきの方はリップサービスの途中で退場されたので」
ギリアムさんはそうですか、とのんびり相槌を打っている。
「良ければこのままもう少し話せませんか? 僕は仕事柄、人と話すのが好きなんです。お忙しいですか? お仕事とか」
私と話をしたい人なんて、心地いい響きだった。嬉しくてにやけてしまう。
「いえ、仕事は自由業ですし特には…お迎えまでなら大丈夫です」
「薬を作られているんでしたね。お住まいは遠いですか」
「山の中に住んでいます」
「やま? 山? なぜそんな所に…」
「ギリアムさんのお住まいはどちらですか?」
「私は街中に住まいがあります。古いだけが取り柄の建物ですが、部屋は家族で住んでも余っているので結婚相手にも一緒に住んで貰えたら」
同居か~。でも部屋が余るなんて…思ったより裕福そうなのね。
「あの、一応確認ですが貴族じゃないですよね」
「ええ、貴族じゃないですよ」
穏やかな回答に、水は落ちてこなかったのでホッとする。
「山の中に住んでいるのは…息子の父親に見つからない為です」
「………」
ギリアムさんは唇を動かし、言葉を選びあぐねている。
「以前、私は上司だった人とそういう関係にありました」
「そういう?」
「身体だけの、という意味です」
「か」
「あ~…だけ、というのは一方的な見方かもしれません。別に上司は私を蔑ろにしていたわけではありませんでした」
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