3 / 7
3
しおりを挟む
上司は…レオは魔力管理局の第四管理官で、長官や他の管理官からも頼りにされるような明らかに皆が一目置いている存在だった。マイペースで天才肌、組織の中でも誰とも馴れ合わない孤高の人。三百六十五日管理局にいて、ほとんど管理官室に住んでいた。いつもボサボサの身なり、長い前髪で隠れた表情は分かりにくく、髭も注意されるまで剃らないし、余裕で寝食を忘れる不摂生の為に大体顔色が悪かった。私の補佐官としての役割はその半分が彼への誘導で、
『管理官、お食事しましょうか』
『管理官、ちょっとお昼寝しましょうか』
『管理官、こっちの仕事もそろそろ進めましょうか』
聞いているのか聞いていないのか、魔力関連の案件に向き合い始めると日常生活がままならなくなる上司の口に食事を突っ込み、ベッドに押し込んで部屋を真っ暗に。会議の前には局の風呂を予約して入らせたりと、今から思えばウィルと大差ないくらいの世話が必要な人だった。
私はスキップして卒業した二十一の年に入局し、当時レベル3だった男性、デニスと入れ替わりで管理官補佐になった。補佐とは言っても局では上から数えた方が断然早い、次期管理官候補である。仕事の性質上、この局では取り分けレベルの高さがあらゆる場面で優先される。有能か無能かはある程度の学力と教育で何とでもなるので大きく影響しない。視力が良いのと同じなのだ。感じられるか、肌でわかるのか…これはもう感覚でしか理解できない。一つ上のレベルというのは歴然と自領域に差があった。本来なら魔力というのはそういうもののはずだ。
デニスも頭では理解していたのだろう。だけどこの男が長年勤めた貴族の次男で性格がねじ曲がっていたのと、魔力管理局は想像よりも貴族独特の権力構造が染みついており、とんでもないことに私は平民出身だった。
平民クラウディアはあばずれで、第四管理官を身体で篭絡して補佐官になったと噂が立つようになったのは勤続期間が半年を過ぎた頃だろうか。
中枢に近づくごとに貴族が増えていくこの国では、血脈による資質に甘えて努力知らずの人間が多い。だから離職率も高い。働かなくても食べていけるので、ちょっと嫌なことがあれば貴族の坊ちゃんなんて『やーめた!』が普通。だからかどうかは知らないが、デニスは私もそのうち辞めるとでも思ったのだろう。だけど平民の私がそんな簡単に辞めるわけがない。学費だってバカにならない中で掴み取った高給取りの立ち位置だ。
短絡的にも彼は異動先から嫌がらせを始め、意外にも粘り強くそれを続けた。変な所に根性があった。暇だったのだろう。
第四管理官室に行く時は耳を澄ましてから入れ、毎日スカートを穿いているその理由、金さえはずめば買えるらしい、夜は別の店で働いている…質の悪い冗談で私よりずっと勤続年数の長い人たちが噂しているのをうっかり直接聞いたのは一度や二度ではない。新参者で平民の私には職場で友達と言える人もおらず、誰とも目が合わない。自分の世話を全くしない上司の面倒を見ながら淡々と心を閉じて働いた。仕事はすごく楽しかったから、それが私の生活の全てだった。
「僕と君はデキているらしいよ」
一年を過ぎて、やっと噂を知った上司がそう言ったのは出先から管理局までの帰り道だった。薄紅色の花びらが右から左へ流れていく陽気な春の昼下がり。
「ご存知なかったんですね」
薄々思ってはいたけどね。
「君、知っていたの」
「知らないのは管理官くらいですよ」
「なぜ否定しないんだ」
「申し訳ございません。面と向かって言われたこともないので否定する場所がなく。御貴族様は表立って人の噂話はされませんし…何より私は入局以来コレで、職場に友ができません」
管理官は丸くした後、目を細めた。
「それもそうか。ははは、噂というのは当人になってみると面白いね。僕まで対象なら直ぐに噂が消えるはずだけど、そうでもないのは珍しいな」
「面白いですか」
「うん。でもなぜそんな噂が?」
「やっかみです。私がスキップして卒業の上、レベル4で入局後すぐに前任と入れ替わりで補佐に入ったので。しかも平民でしょう。ご安心なさって下さい。管理官はとばっちり、あばずれ補佐官クラウディアと言う完全に私への悪評が主軸です」
「そうか…僕の力も君の魅力には負けるか。だけど君、本当は管理官でもやっていける。やっかんだヤツはそれもわからなかったか。レベルがやっぱり低すぎるな。局員の退廃は年々増す。最近、レベル4以上は軍務省が根こそぎ持って行くから」
「………」
私も最初は軍務省から引き抜きにあったが、目のことがあって逆に試験には落ちた。
風に煽られた花びらが、立ち止まった私と管理官の間を流れていく。
彼の手が私の髪にくっついた薄く淡い花弁を摘まんで逃がす。
「君に選択肢をあげようか」
「選択肢ですか」
「そう、人生とは選択の連続だ。まずひとつ目は僕が一人で噂を消すこと、そしてふたつ目は我々が二人で噂を消すこと」
さぁ、どっちが良いかな。
上司は珍しく手のひらで前髪をかきあげた。真顔で私を見下ろしている。いつも隠れて殆ど見えない瞳はくっきりとした綺麗な二重。ウィルと同じアーモンド形の瞳。そこで私は初めてじっくりとレオと見つめあった。
「ふたつ目の意味、は…」
「賢い君ならわかるだろう。噂は真実になれば、消える」
「そうでしょうか?」
つまりマジでデキてることにする、と。でも余計にしっかり認識されるだけじゃ?
「本当なら噂をし続けるのも馬鹿らしくなる。曖昧だからこそ噂にうま味が出るんだから」
そう言われると、そのような気もした。私は想像してみる。何度か聞いた噂話を耳にした時の自分が、それは噂でなく本当だとほくそ笑んでいる様子を。
「急にこんなこと言って驚くかもしれないけど。もう君なしではこの先考えられない」
「ああ…それはそうでしょうね」
多分デニスはこれほどに管理官の世話はしなかっただろう。案件にはよるが、世話をして管理官の思考時間を確保することがどれほどこの国に恩恵をもたらすのかを理解できなかっただろうから。
「意味わかってるかな? 口説いているんだよ、君が欲しいって。まぁ急いで決めてくれなくていいから、ゆっくり考えてみて欲しい。答えはそれから」
「随分と直截的ですね?」
「僕も男だ。ヤる時はヤらないと」
わぁ。
「なんだ、その顔」
「わかりました」
「なにが?」
「よろしくお願いします!私も噂には腹が立っていましたし、見返してやりたいから、噂を真実にしてみましょうとも」
「……よく考えた? 結構人生が変わるけど」
「大丈夫ですよ。それに、そんなに変わりません」
「そう?」
「だって、別に仕事を辞める訳じゃないでしょう?」
「ん…ああ、うん」
『管理官、お食事しましょうか』
『管理官、ちょっとお昼寝しましょうか』
『管理官、こっちの仕事もそろそろ進めましょうか』
聞いているのか聞いていないのか、魔力関連の案件に向き合い始めると日常生活がままならなくなる上司の口に食事を突っ込み、ベッドに押し込んで部屋を真っ暗に。会議の前には局の風呂を予約して入らせたりと、今から思えばウィルと大差ないくらいの世話が必要な人だった。
私はスキップして卒業した二十一の年に入局し、当時レベル3だった男性、デニスと入れ替わりで管理官補佐になった。補佐とは言っても局では上から数えた方が断然早い、次期管理官候補である。仕事の性質上、この局では取り分けレベルの高さがあらゆる場面で優先される。有能か無能かはある程度の学力と教育で何とでもなるので大きく影響しない。視力が良いのと同じなのだ。感じられるか、肌でわかるのか…これはもう感覚でしか理解できない。一つ上のレベルというのは歴然と自領域に差があった。本来なら魔力というのはそういうもののはずだ。
デニスも頭では理解していたのだろう。だけどこの男が長年勤めた貴族の次男で性格がねじ曲がっていたのと、魔力管理局は想像よりも貴族独特の権力構造が染みついており、とんでもないことに私は平民出身だった。
平民クラウディアはあばずれで、第四管理官を身体で篭絡して補佐官になったと噂が立つようになったのは勤続期間が半年を過ぎた頃だろうか。
中枢に近づくごとに貴族が増えていくこの国では、血脈による資質に甘えて努力知らずの人間が多い。だから離職率も高い。働かなくても食べていけるので、ちょっと嫌なことがあれば貴族の坊ちゃんなんて『やーめた!』が普通。だからかどうかは知らないが、デニスは私もそのうち辞めるとでも思ったのだろう。だけど平民の私がそんな簡単に辞めるわけがない。学費だってバカにならない中で掴み取った高給取りの立ち位置だ。
短絡的にも彼は異動先から嫌がらせを始め、意外にも粘り強くそれを続けた。変な所に根性があった。暇だったのだろう。
第四管理官室に行く時は耳を澄ましてから入れ、毎日スカートを穿いているその理由、金さえはずめば買えるらしい、夜は別の店で働いている…質の悪い冗談で私よりずっと勤続年数の長い人たちが噂しているのをうっかり直接聞いたのは一度や二度ではない。新参者で平民の私には職場で友達と言える人もおらず、誰とも目が合わない。自分の世話を全くしない上司の面倒を見ながら淡々と心を閉じて働いた。仕事はすごく楽しかったから、それが私の生活の全てだった。
「僕と君はデキているらしいよ」
一年を過ぎて、やっと噂を知った上司がそう言ったのは出先から管理局までの帰り道だった。薄紅色の花びらが右から左へ流れていく陽気な春の昼下がり。
「ご存知なかったんですね」
薄々思ってはいたけどね。
「君、知っていたの」
「知らないのは管理官くらいですよ」
「なぜ否定しないんだ」
「申し訳ございません。面と向かって言われたこともないので否定する場所がなく。御貴族様は表立って人の噂話はされませんし…何より私は入局以来コレで、職場に友ができません」
管理官は丸くした後、目を細めた。
「それもそうか。ははは、噂というのは当人になってみると面白いね。僕まで対象なら直ぐに噂が消えるはずだけど、そうでもないのは珍しいな」
「面白いですか」
「うん。でもなぜそんな噂が?」
「やっかみです。私がスキップして卒業の上、レベル4で入局後すぐに前任と入れ替わりで補佐に入ったので。しかも平民でしょう。ご安心なさって下さい。管理官はとばっちり、あばずれ補佐官クラウディアと言う完全に私への悪評が主軸です」
「そうか…僕の力も君の魅力には負けるか。だけど君、本当は管理官でもやっていける。やっかんだヤツはそれもわからなかったか。レベルがやっぱり低すぎるな。局員の退廃は年々増す。最近、レベル4以上は軍務省が根こそぎ持って行くから」
「………」
私も最初は軍務省から引き抜きにあったが、目のことがあって逆に試験には落ちた。
風に煽られた花びらが、立ち止まった私と管理官の間を流れていく。
彼の手が私の髪にくっついた薄く淡い花弁を摘まんで逃がす。
「君に選択肢をあげようか」
「選択肢ですか」
「そう、人生とは選択の連続だ。まずひとつ目は僕が一人で噂を消すこと、そしてふたつ目は我々が二人で噂を消すこと」
さぁ、どっちが良いかな。
上司は珍しく手のひらで前髪をかきあげた。真顔で私を見下ろしている。いつも隠れて殆ど見えない瞳はくっきりとした綺麗な二重。ウィルと同じアーモンド形の瞳。そこで私は初めてじっくりとレオと見つめあった。
「ふたつ目の意味、は…」
「賢い君ならわかるだろう。噂は真実になれば、消える」
「そうでしょうか?」
つまりマジでデキてることにする、と。でも余計にしっかり認識されるだけじゃ?
「本当なら噂をし続けるのも馬鹿らしくなる。曖昧だからこそ噂にうま味が出るんだから」
そう言われると、そのような気もした。私は想像してみる。何度か聞いた噂話を耳にした時の自分が、それは噂でなく本当だとほくそ笑んでいる様子を。
「急にこんなこと言って驚くかもしれないけど。もう君なしではこの先考えられない」
「ああ…それはそうでしょうね」
多分デニスはこれほどに管理官の世話はしなかっただろう。案件にはよるが、世話をして管理官の思考時間を確保することがどれほどこの国に恩恵をもたらすのかを理解できなかっただろうから。
「意味わかってるかな? 口説いているんだよ、君が欲しいって。まぁ急いで決めてくれなくていいから、ゆっくり考えてみて欲しい。答えはそれから」
「随分と直截的ですね?」
「僕も男だ。ヤる時はヤらないと」
わぁ。
「なんだ、その顔」
「わかりました」
「なにが?」
「よろしくお願いします!私も噂には腹が立っていましたし、見返してやりたいから、噂を真実にしてみましょうとも」
「……よく考えた? 結構人生が変わるけど」
「大丈夫ですよ。それに、そんなに変わりません」
「そう?」
「だって、別に仕事を辞める訳じゃないでしょう?」
「ん…ああ、うん」
45
あなたにおすすめの小説
白い結婚は終わりました。――崩れない家を築くまで
しおしお
恋愛
「干渉しないでくださいませ。その代わり、私も干渉いたしません」
崩れかけた侯爵家に嫁いだ私は、夫と“白い結婚”を結んだ。
助けない。口を出さない。責任は当主が負う――それが条件。
焦りと慢心から無謀な契約を重ね、家を傾かせていく夫。
私は隣に立ちながら、ただ見ているだけ。
放置された結果、彼は初めて自分の判断と向き合うことになる。
そして――
一度崩れかけた侯爵家は、「選び直す力」を手に入れた。
無理な拡張はしない。
甘い条件には飛びつかない。
不利な契約は、きっぱり拒絶する。
やがてその姿勢は王宮にも波及し、
高利契約に歪められた制度そのものを立て直すことに――。
ざまあは派手ではない。
けれど確実。
焦らせた者も、慢心した者も、
気づけば“選ばれない側”になっている。
これは、干渉しない約束から始まる静かな逆転劇。
そして、白い結婚を終え、信頼で立つ家へと変わっていく物語。
隣に立つという選択こそが、最大のざまあでした。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします
鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。
だが彼女は泣かなかった。
なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。
教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。
それは逃避ではない。
男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。
やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。
王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。
一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。
これは、愛を巡る物語ではない。
「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。
白は弱さではない。
白は、均衡を保つ力。
白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
戸を開いたその先に。~捨てられ縫い姫は、貧乏進士(実は皇帝)に溺愛される~
若松だんご
恋愛
――すまない! 少し休ませてもらえないか!
今日は、門の前で訪れる男性を待つ日。「婿取りの儀式」
門を開け、招き入れた男性を夫とする。
そんなしきたりに従って、家の裏門で訪れる予定もない相手を待っていたのだけれど。
――すまない。連れの具合が良くないんだ。
やや強引に、ぐったりした連れの少年を抱えて入ってきた青年。
十のときに母が亡くなり、父が連れてきた義母と異母姉。
実の娘なのに、屋敷の隅に追いやられ、もっぱら縫い物ばかりさせられていた。
その上、幼い頃からの許嫁だった人からも婚約破棄され、彼は異母姉の夫となった。
「こんな男を夫にするのか!」
彼らに出会ったことで、父親から勘当されたリファ。
そんな彼女を助けてくれたのは、今日が婿取りの儀式だと知らず飛び込んできた青年。
――身の振り方が決まるまで。
妻にする気はない。自由にして構わない。
セイランと名乗った青年は、頼る先のないリファに、とりあえずの暮らすところを提供してくれた。
地方から省試を受けるため上京してきたというセイラン。彼の従者で、弟みたいな少年、ハクエイ。
彼らと暮らしながら、少しずつ自立のために縫い物仕事を引き受けたり、彼らのために家事に勤しんだり。
家族に捨てられ、婚約者からも見捨てられ。
悲しみに、絶望しかけていたリファは、彼らと暮らすことで、少しずつその心を癒やしていくけれど。
――自立。
いつかは、彼らと別れて一人で暮らしていかなくては。いつまでも厚情に甘えてばかりいられない。
そう思うのに。
ずっとここで暮らしていたい。ハクエイと、……セイランさんといっしょに。
――彼女の境遇に同情しただけ。助けたのは、ちょっとした義侠心。
自分の運命に、誰かを巻き込みたくない。誰かを愛するなんてことはしない。
そう思うのに。
ずっとここで暮らしていたい。ただの進士として、……彼女といっしょに。
リファとセイラン。
互いに知らず惹かれ合う。相手を知れば知るほど、その想いは深まって――。
門を開けたことで、門をくぐったことで始まる、二人の恋の物語。
公爵令嬢のひとりごと
鬼ヶ咲あちたん
ファンタジー
城下町へ視察にいった王太子シメオンは、食堂の看板娘コレットがひたむきに働く姿に目を奪われる。それ以来、事あるごとに婚約者である公爵令嬢ロザリーを貶すようになった。「君はもっとコレットを見習ったほうがいい」そんな日々にうんざりしたロザリーのひとりごと。
【完結】婚約破棄されましたが、私は【おでん屋台】で美味しい愛を手に入れたので幸せです
ともボン
恋愛
ランドルフ王国の第一王太子カーズ・ランドルフとの婚約記念の夜。
男爵令嬢カレン・バードレンは、貴族たちのパーティーでカーズから婚約破棄された。
理由は「より強い〈結界姫〉であり最愛の女性が現れたから」という理不尽なものだった。
やがてカレンは実家からも勘当され、一夜にして地位も家族も失って孤独に死を待つだけの身になる。
そんなカレンが最後の晩餐に選んだのは、早死にした最愛の叔父から何度も連れられた【おでん屋台】だった。
カレンは異国の料理に舌鼓みを打っていると、銀髪の美青年――カイトが店内にふらりと入ってきた。
そして、このカイトとの出会いがカレンの運命を変える。
一方、カレンと婚約破棄したことでランドルフ王国はとんでもない目に……。
これはすべてを失った男爵令嬢が、【おでん屋台】によって一夜にしてすべてを手に入れる美味しい恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる