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グレイプ編
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港に着いた報せと共に船内は足音が右に左にと散らばり、一気に忙しそうになった。
ネイトはまだ暗いうちに部屋を出て、陽が高くなってきた今も顔を見ていない。この隙に、と鎖が伸びる範囲内で部屋をくまなく探したが、足輪の鍵は見つからなかった。
外からの騒音が聞こえて、リリアンヌはガウン姿でブラインドを上げ窓を開ける。
ブワッ、と吹き込んで来た風と匂いは明らかに異国のそれで、瞬く。
五つの国が面するマレーナ海は、トリーチェから小島群を越えるとその名をアトラスへと変える。グレイプはトリーチェから直線状に南下した赤道近く、アトラス海域の国だ。マレーナ以外の港は久しぶりだった。
遠目には倉庫と思しき建物が並び、乗船している船からの荷が降ろされたり人が階段を行ったり来たりしているのが見えた。ウニが木箱を運ぶ姿もある。
グレイプは確か建国して百年弱と歴史の浅い国だった。常夏の国だ。元は隣国等を含めた別の大国で、それぞれが独立した経緯を持つ。その為歴史は浅いのだが、独立前からも港は開放されており、貿易自体は活発に続いている記憶があった。
窓から見える立派な港は白くて広く、目が慣れるまで眩しかったが、慣れてくれば略式海軍服のラルフと隣に並ぶネイトの姿も見えた。地図を広げて指差しながら向かいに立つ役人のような男と話をしている。搬入先の話でもしているのだろうか。
そう言えば、一体何をしに来たのだ。
リリアンヌは根本的な疑問に気づいた。
独立と近代化で混沌としたグレイプは犯罪も多いと聞く。法の手が入らぬ場所が多いのだ。海賊としては馴染みのある港かもしれないが、海軍提督に就任したばかりの人間に用事がある国とは思えなかった。
ブラインドの隙間から見た海軍提督はパリッとした海軍服で見栄え良く、女との行為に明け暮れる強姦海賊に見えない。だけど遠巻きに彼を見つめる女たちの群れを発見して、なるほどやっぱり海賊あがりだと納得する。
「あれが現地妻たちね」
じろじろと見てやる。それにしても多い。
ニ、三十いるのではないだろうか。
いったい各港に何人いるのだ。総勢百人などあっという間である。
おぞましいと思いながら二の腕をさすって窓から離れ振り返ると、戸口に女性が立っていた。
「ひっ」
黒髪の女は大口を開けて嬉しそうに笑い、つかつかと歩み寄って来る。
綿菓子のようなふわふわの黒髪を一つに結い上げ、長く太い睫毛には針が何本も置けそうに化粧で強化されている。目元はゴールドに輝き、光沢のある茶色い肌をベージュのホルターネックのトップスに、同色マキシ丈のフレアパンツで包んだ身体は見るものを黙らせるセンスの塊に見えた。
「ヘロウ? オレは~グレイプで? あなたのぉぉぉヘア? メイク担当する、モニーク。ああ~、モニークよ」
「……はじ…めまして? リリアンヌです。あの、公用語なら話せるわ」
グレイプは主にアトラス海域で公用語が使われている。
「あ、マジ!? 便利! ワーオ。ちょっとさ、あなたってクレイジーなくらいに綺麗ね」
ヘアメイク担当って何のことだ。
リリアンヌは慌ててはだけていたガウンの前を(紐はネイトに取り上げられてない)かき合わせ、洗いっぱなしの長い髪を撫でつけ体裁を整える。
「ネイたんから言い付けられてんの。とにかくマムを美しくしろってさ。でも何にもしなくて十分綺麗じゃんよ。まぁ~、これが三つ星ね! さぁ、じゃあまず洗顔しましょ。これ、石鹸ね?」
「……石鹸? これが?」
泥っぽい小さな塊を黙って受け取って、洗面へと鎖を引きずって歩いているとモニークが仰天している。
「なにこれ!? 繋がれてるの!?」
「ええ」
「やーだ、ネイたん、変態じゃん。やーば。あ、泡立て方わかる?」
「わからないわ。これ、泥みたいね」
「泥なのよ。でもすーっごく良いんだから。これをね、最初にこうして削って、水と混ぜて」
洗面所でモニークは実演してくれる。
「わっ、すごい。泡が滑らかだわ」
「でしょ?肌に吸い付くみたいに引っ付くの。よく落ちるんだ。だけど洗い上がりが突っ張らなくて、お気に入りなの」
「そうなのね、良かったら欲しいわ」
「オッケー」
だがハッとしてお金がなかったことを思い出した。
「ごめんなさい、やっぱり今のはナシで」
「え、どした」
「私、身一つで乗船したから手持ちがないのよ」
ちょっとしょげて言うと、モニークはカラカラと笑った。
「あ~、いいの、いいの、そんなの。全部ネイたんが払うから」
「そんなの、もっと嫌よ」
借金などビタ一文も作る気はない。
考えただけでイライラした。
「ん~……そうね、じゃあトリーチェに戻ったらギヴリーからバイヤーを派遣するわ。あなたから木箱で買わせるように手配するから、今この一つをテスト商品として私に投資するのはどう?」
「ぷっ。なーんそれ。いいけど。そんな気に入ったならあげるわ、それくらい」
「ありがとう! あとでフルネームと住所を教えてね」
リリアンヌは洗顔石鹼を一つゲットして、手を引かれて椅子に促された。
「んじゃあ、スキンケアからね。目を瞑って。ちなみに今日はどんな服を着るの?」
ペタペタと久しぶりのスキンケアが始まる。柑橘系の香りが漂い始める。
「さぁ……はぁ~、良い香り」
「さぁ、って何!?」
「服がないのだもの。着てきたドレスは裂かれたし」
下着すらない。ずっと裸である。
「え、でもネイたんは俺の部屋にある服どれでも着せて、それに似合うヘアメイクって言ってたけど」
「それは彼の服でしょう。私の服じゃないわ」
「んま~、なるほどなんかわかってきた。そういう感じ」
「どういう感じ?」
モニークはひとりうなずきながら、リリアンヌの顔にたっぷりと水分を染み込ませては部屋の端にある大きな宝箱と行ったり来たりをした。そこにはリリアンヌの服や靴、小物類に宝石の付いたアクセサリーがびっしりと入っている。モニークはその中から小さな指輪をひとつくすねてポッケに入れる。
「めっちゃ色々あるじゃん! つっよ!」
「………」
「わ~、どれも良い感じ。マムに似合いそうね」
「モニークの今着ているお洋服も、すごく素敵だわ。トリーチェで見たことない形。ねぇ、そのマムって呼ぶのやめて欲しいわ」
「え、素敵!? 本当!? これ、私が作ったんだ~」
「そうなの? 凄いのね! 素晴らしい才能があるわ」
「あはは。大げさだよぉ。……じゃあ今日はこのワンピースにしよ。その鎖じゃ下着は穿けないし紐パンだね。ブラは布地小さめのね。そのおっぱいの星がちゃんと見えるようにしとかなきゃだし」
ガウンの前を合わせても見えていた三つの星をモニークがつつく。
「ラルフ様が言ってたけど、マムって、すごいお嬢さんなんでしょ? なんで星なんてつけてんの? それはいいの?」
「……?」
焼き印など万人が付けてはいけないだろう。
お嬢さんであることと星の有無が頭の中で繋がらず、リリアンヌは化粧を塗られながら眉間にしわを寄せる。
「私はさ、女三人で洋服屋してんの。店はないんだけどね。服を作って売り込みするんだ。子どもも一緒に家にいれるから安心でしょ……私もあるよ、星」
「えっ、そうなの? じゃあ、あなたも」
現地妻。
軽い衝撃を受けたが、考えてみれば頼みごとをする仲ならうなずける。
しかし、モニークから次に来た言葉は予想外のものだった。
「私たちはね、お金を払ってでもネイたんの星が欲しいの」
「………」
「彼の女になりたいとかじゃなくて」
「え?」
「グレイプは独立してまだ若いじゃん。治安なんてめちゃくちゃ悪いしさ~。私もそうだけど、その辺でレイプされて、仕方なく子ども産んでシングルマザーなんて掃いて捨てる程いるわけさ。そういう女からしたら、ある程度規律のある腕っぷしの強い連中なんて輝いて見えるのよ。しかも海軍に召し上げられたって言うじゃん! だからバックが欲しいのよ。そういう可哀想な女に慈悲で星をくれるんだぁ、ネイたんは。星の女になるとさ、気づいた瞬間に暴行も途中でやめてもらえたりできるし、後でチクったら仕返ししてくれるんだ」
「………そう」
「今回だって今日か明日にも仕返し隊が聞きこみして、回ってくれるんだよ。良いでしょ」
「……良過ぎるわね」
最初は入れ墨の星を入れていたらしいが、紛い物の星が増えてしまい、困った末に焼き印にしたらしい、とモニークはメイクをしながらペラペラと喋った。同一サイズの焼きごての調達に加えて処置は難しく、綺麗に印を残そうと思うとそれなりの知識と手間や消毒などの費用がかかる。なにより恐怖の覚悟が違った。焼き印になってから紛い物は少なくなった。
「逆に星の女には怖がって、まともな男は付かなくなるんだけどね~。ま、男はもういいかって。バートレッドの男となら遊べるし」
「ネイトの現地妻じゃないの……?」
「ええ? 現地妻ぁ? う~ん、確かに人気だしネイたんと積極的に寝る子もいるけどぉ、大体星もらったらみんな適当だよ。ラルフ様がお金配ってくれるし。寝るのが商売の子も多いから、わざわざ手上げてまでセックスする必要ないじゃん?
ネイたんめちゃくちゃ巧いけど、絶倫だし女の扱い雑だから、ヤっても誰かと一緒が多いかな~。私も三、四回?交ざったくらい。たぶん。でも最近は水兵のイーグルがお気に入りだから、ネイたんとはしな~い。バートレッドのみんな、星の女には優しいんだ! ネイたんほどじゃないけど、でもイーグルも超カッコいいの。いいでしょ」
「そう。船の人たちはあなたたちに優しいのね」
「そうだよ」
「よかったわ」
そう言ってリリアンヌが微笑みかけると、モニークはなぜか恥ずかしそうに下を向いた。
ネイトはまだ暗いうちに部屋を出て、陽が高くなってきた今も顔を見ていない。この隙に、と鎖が伸びる範囲内で部屋をくまなく探したが、足輪の鍵は見つからなかった。
外からの騒音が聞こえて、リリアンヌはガウン姿でブラインドを上げ窓を開ける。
ブワッ、と吹き込んで来た風と匂いは明らかに異国のそれで、瞬く。
五つの国が面するマレーナ海は、トリーチェから小島群を越えるとその名をアトラスへと変える。グレイプはトリーチェから直線状に南下した赤道近く、アトラス海域の国だ。マレーナ以外の港は久しぶりだった。
遠目には倉庫と思しき建物が並び、乗船している船からの荷が降ろされたり人が階段を行ったり来たりしているのが見えた。ウニが木箱を運ぶ姿もある。
グレイプは確か建国して百年弱と歴史の浅い国だった。常夏の国だ。元は隣国等を含めた別の大国で、それぞれが独立した経緯を持つ。その為歴史は浅いのだが、独立前からも港は開放されており、貿易自体は活発に続いている記憶があった。
窓から見える立派な港は白くて広く、目が慣れるまで眩しかったが、慣れてくれば略式海軍服のラルフと隣に並ぶネイトの姿も見えた。地図を広げて指差しながら向かいに立つ役人のような男と話をしている。搬入先の話でもしているのだろうか。
そう言えば、一体何をしに来たのだ。
リリアンヌは根本的な疑問に気づいた。
独立と近代化で混沌としたグレイプは犯罪も多いと聞く。法の手が入らぬ場所が多いのだ。海賊としては馴染みのある港かもしれないが、海軍提督に就任したばかりの人間に用事がある国とは思えなかった。
ブラインドの隙間から見た海軍提督はパリッとした海軍服で見栄え良く、女との行為に明け暮れる強姦海賊に見えない。だけど遠巻きに彼を見つめる女たちの群れを発見して、なるほどやっぱり海賊あがりだと納得する。
「あれが現地妻たちね」
じろじろと見てやる。それにしても多い。
ニ、三十いるのではないだろうか。
いったい各港に何人いるのだ。総勢百人などあっという間である。
おぞましいと思いながら二の腕をさすって窓から離れ振り返ると、戸口に女性が立っていた。
「ひっ」
黒髪の女は大口を開けて嬉しそうに笑い、つかつかと歩み寄って来る。
綿菓子のようなふわふわの黒髪を一つに結い上げ、長く太い睫毛には針が何本も置けそうに化粧で強化されている。目元はゴールドに輝き、光沢のある茶色い肌をベージュのホルターネックのトップスに、同色マキシ丈のフレアパンツで包んだ身体は見るものを黙らせるセンスの塊に見えた。
「ヘロウ? オレは~グレイプで? あなたのぉぉぉヘア? メイク担当する、モニーク。ああ~、モニークよ」
「……はじ…めまして? リリアンヌです。あの、公用語なら話せるわ」
グレイプは主にアトラス海域で公用語が使われている。
「あ、マジ!? 便利! ワーオ。ちょっとさ、あなたってクレイジーなくらいに綺麗ね」
ヘアメイク担当って何のことだ。
リリアンヌは慌ててはだけていたガウンの前を(紐はネイトに取り上げられてない)かき合わせ、洗いっぱなしの長い髪を撫でつけ体裁を整える。
「ネイたんから言い付けられてんの。とにかくマムを美しくしろってさ。でも何にもしなくて十分綺麗じゃんよ。まぁ~、これが三つ星ね! さぁ、じゃあまず洗顔しましょ。これ、石鹸ね?」
「……石鹸? これが?」
泥っぽい小さな塊を黙って受け取って、洗面へと鎖を引きずって歩いているとモニークが仰天している。
「なにこれ!? 繋がれてるの!?」
「ええ」
「やーだ、ネイたん、変態じゃん。やーば。あ、泡立て方わかる?」
「わからないわ。これ、泥みたいね」
「泥なのよ。でもすーっごく良いんだから。これをね、最初にこうして削って、水と混ぜて」
洗面所でモニークは実演してくれる。
「わっ、すごい。泡が滑らかだわ」
「でしょ?肌に吸い付くみたいに引っ付くの。よく落ちるんだ。だけど洗い上がりが突っ張らなくて、お気に入りなの」
「そうなのね、良かったら欲しいわ」
「オッケー」
だがハッとしてお金がなかったことを思い出した。
「ごめんなさい、やっぱり今のはナシで」
「え、どした」
「私、身一つで乗船したから手持ちがないのよ」
ちょっとしょげて言うと、モニークはカラカラと笑った。
「あ~、いいの、いいの、そんなの。全部ネイたんが払うから」
「そんなの、もっと嫌よ」
借金などビタ一文も作る気はない。
考えただけでイライラした。
「ん~……そうね、じゃあトリーチェに戻ったらギヴリーからバイヤーを派遣するわ。あなたから木箱で買わせるように手配するから、今この一つをテスト商品として私に投資するのはどう?」
「ぷっ。なーんそれ。いいけど。そんな気に入ったならあげるわ、それくらい」
「ありがとう! あとでフルネームと住所を教えてね」
リリアンヌは洗顔石鹼を一つゲットして、手を引かれて椅子に促された。
「んじゃあ、スキンケアからね。目を瞑って。ちなみに今日はどんな服を着るの?」
ペタペタと久しぶりのスキンケアが始まる。柑橘系の香りが漂い始める。
「さぁ……はぁ~、良い香り」
「さぁ、って何!?」
「服がないのだもの。着てきたドレスは裂かれたし」
下着すらない。ずっと裸である。
「え、でもネイたんは俺の部屋にある服どれでも着せて、それに似合うヘアメイクって言ってたけど」
「それは彼の服でしょう。私の服じゃないわ」
「んま~、なるほどなんかわかってきた。そういう感じ」
「どういう感じ?」
モニークはひとりうなずきながら、リリアンヌの顔にたっぷりと水分を染み込ませては部屋の端にある大きな宝箱と行ったり来たりをした。そこにはリリアンヌの服や靴、小物類に宝石の付いたアクセサリーがびっしりと入っている。モニークはその中から小さな指輪をひとつくすねてポッケに入れる。
「めっちゃ色々あるじゃん! つっよ!」
「………」
「わ~、どれも良い感じ。マムに似合いそうね」
「モニークの今着ているお洋服も、すごく素敵だわ。トリーチェで見たことない形。ねぇ、そのマムって呼ぶのやめて欲しいわ」
「え、素敵!? 本当!? これ、私が作ったんだ~」
「そうなの? 凄いのね! 素晴らしい才能があるわ」
「あはは。大げさだよぉ。……じゃあ今日はこのワンピースにしよ。その鎖じゃ下着は穿けないし紐パンだね。ブラは布地小さめのね。そのおっぱいの星がちゃんと見えるようにしとかなきゃだし」
ガウンの前を合わせても見えていた三つの星をモニークがつつく。
「ラルフ様が言ってたけど、マムって、すごいお嬢さんなんでしょ? なんで星なんてつけてんの? それはいいの?」
「……?」
焼き印など万人が付けてはいけないだろう。
お嬢さんであることと星の有無が頭の中で繋がらず、リリアンヌは化粧を塗られながら眉間にしわを寄せる。
「私はさ、女三人で洋服屋してんの。店はないんだけどね。服を作って売り込みするんだ。子どもも一緒に家にいれるから安心でしょ……私もあるよ、星」
「えっ、そうなの? じゃあ、あなたも」
現地妻。
軽い衝撃を受けたが、考えてみれば頼みごとをする仲ならうなずける。
しかし、モニークから次に来た言葉は予想外のものだった。
「私たちはね、お金を払ってでもネイたんの星が欲しいの」
「………」
「彼の女になりたいとかじゃなくて」
「え?」
「グレイプは独立してまだ若いじゃん。治安なんてめちゃくちゃ悪いしさ~。私もそうだけど、その辺でレイプされて、仕方なく子ども産んでシングルマザーなんて掃いて捨てる程いるわけさ。そういう女からしたら、ある程度規律のある腕っぷしの強い連中なんて輝いて見えるのよ。しかも海軍に召し上げられたって言うじゃん! だからバックが欲しいのよ。そういう可哀想な女に慈悲で星をくれるんだぁ、ネイたんは。星の女になるとさ、気づいた瞬間に暴行も途中でやめてもらえたりできるし、後でチクったら仕返ししてくれるんだ」
「………そう」
「今回だって今日か明日にも仕返し隊が聞きこみして、回ってくれるんだよ。良いでしょ」
「……良過ぎるわね」
最初は入れ墨の星を入れていたらしいが、紛い物の星が増えてしまい、困った末に焼き印にしたらしい、とモニークはメイクをしながらペラペラと喋った。同一サイズの焼きごての調達に加えて処置は難しく、綺麗に印を残そうと思うとそれなりの知識と手間や消毒などの費用がかかる。なにより恐怖の覚悟が違った。焼き印になってから紛い物は少なくなった。
「逆に星の女には怖がって、まともな男は付かなくなるんだけどね~。ま、男はもういいかって。バートレッドの男となら遊べるし」
「ネイトの現地妻じゃないの……?」
「ええ? 現地妻ぁ? う~ん、確かに人気だしネイたんと積極的に寝る子もいるけどぉ、大体星もらったらみんな適当だよ。ラルフ様がお金配ってくれるし。寝るのが商売の子も多いから、わざわざ手上げてまでセックスする必要ないじゃん?
ネイたんめちゃくちゃ巧いけど、絶倫だし女の扱い雑だから、ヤっても誰かと一緒が多いかな~。私も三、四回?交ざったくらい。たぶん。でも最近は水兵のイーグルがお気に入りだから、ネイたんとはしな~い。バートレッドのみんな、星の女には優しいんだ! ネイたんほどじゃないけど、でもイーグルも超カッコいいの。いいでしょ」
「そう。船の人たちはあなたたちに優しいのね」
「そうだよ」
「よかったわ」
そう言ってリリアンヌが微笑みかけると、モニークはなぜか恥ずかしそうに下を向いた。
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