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第二章 貴族としての生活
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ある日、キャスティナが庭を歩いていると渡り廊下を歩くリオンが目に入った。トルトゥーナ国の貴族の子息は、10歳から16歳まで学園に通う。通いの子と寮生活と本人が選べるんだそう。リオンは10歳なので今年の春から通い始めている。ちなみに、学園が近いので家から通っている。制服を着ているので、丁度帰って来た所なのかしら?
「リオン君、おかえりなさい」
キャスティナは、リオンに向かって手を振った。リオンは、キャスティナに気づき足を止めてくれたのでリオンの前まで足を運んだ。
「あの、初めて挨拶した時から思ってるんですが、軽々しく君付けで呼ぶの止めてください。僕は、これでも侯爵家を継ぐ嫡男なんですが‼」
冷ややかな声が、キャスティナに刺さる。リオンと向かい合って目を見て話をするのは初めてだった。いつも食事の時に、テーブル越しに挨拶する程度だからだ。改めて一人の男性として見たリオンは、確かに年の割にはしっかりとした威厳のある風貌だ。弟のルイスとそう年が変わらないので、子供扱いしてしまった。母親に甘やかされて育ったルイスとは、全く違う。
「大変申し訳ありませんでした。リオン様」
キャスティナは、膝を折ってお辞儀をした。
「わかればいいよ。所で、何か用ですか?」
キャスティナは、リオンと話した事がなかったのでお茶でも一緒にと誘おうと思っていたのだが……思ってた印象と違うリオンに戸惑う。だが、ダメもとで誘ってみる事にした。なかなか、会う機会もないし。
「あの、よろしければお茶でも一緒にいかがですか?」
リオンは、正直お茶なんてしてる時間はない。断るつもりでいたが、一度くらいはいいかと思った。家族はみな、この娘を好ましく思っているが、正直どこがいいのかリオンには理解出来なかった。だから少し興味を引かれたのかもしれない。
「あまり、時間がないですが少しだけなら」
キャスティナは、良い返事をもらえると思ってなかったので嬉しくて満面の笑みをリオンに向けた。
「ありがとうございます。では、折角なのでお庭でもいいでしょうか?」
リオンは、その純粋な屈託ない笑顔にびっくりする。いつも相手にする貴族令嬢は、みんな同じ笑顔だからだ。本当か嘘かわからないような、同じ笑顔。それに鬱陶しさを感じていた。だから、衝撃だったのかもしれない。誰が見たって、了承した返事が嬉しくてこぼれた笑顔だと。
「いいですよ。では、行きましょう」
リオンは、キャスティナの手を取りエスコートしてくれた。まだ、10歳よね?なんなのこの流れるような、エスコートは!流石、侯爵家の跡取りです……。照れる……。頬をほんのり染めながら、リオンのエスコートに応じる素振りがなんとも可愛らしく、リオンは断らなくて正解だったと思った。
庭にあるガーデンテーブルに、二人は向かい合って座った。リズがお茶とお菓子を運んで来てくれた。キャスティナはお茶をひと口、口にした。
「リオン様は、学園の帰りですか?制服カッコいいですね」
リオンの制服は、白いブレザーに青のYシャツ、黒のスラックスだ。
「カッコイイですか·····。制服に格好良さは必要ですか?」
「必要ですよ。女の子の制服も可愛いですよね。私ずっと憧れてました」
キャスティナは、どこか遠い目をして語りかかけた。
「キャスティナお義姉様も、着てましたよね?」
「お義姉様?叔母様ではないの?」
「母上に叔母様だと可愛くないから、お義姉様にしなさいと言われました」
リオンは、どうでもいいとばかりに呟く。
「そうですか……。ちょっと照れるけど嬉しいです」
キャスティナは、はにかんだ笑顔を見せる。それを見たリオンは、全くこの人は……警戒心が全くない。大丈夫なのか?危なっかし過ぎる。ここでまた一人、キャスティナの保護者が増えた事に本人は気付いていない……。
「で、制服は?」
「私は、残念ながら着てないんですよ」
「え?子爵家だって、学園ぐらい行きますよね?」
「普通は、そうですね。うちは、普通ではなかったので。リオン様、学園ぐらいって言いますが決して『ぐらい』ではないんですよ。制服を着る事も友達を作る事も勉強する事も。全部、当たり前ではないですよ」
キャスティナは、静かにだけれど芯のある声で言った。
「そうですか……」
リオンは、どれも当たり前だと思っている。でもそうじゃないと初めて言われた。それはとても大切な事のように思えた。
「リオン様、学園は、楽しいですか?」
「別に遊びに行ってる訳ではないので」
「そうですけど、どうせなら楽しい方がいいですよ。リオン様は、どんな勉強が好きですか?」
「好きとか考えた事がないですね。必要だから、学んでるだけです」
「リオン様。それでは、勿体ないですよ」
キャスティナが、残念そうな顔をリオンに向ける。あー、リオン君、残念過ぎる。真面目過ぎるんだろうなこの子は。遊び心がないよ。嫡男として厳しく育てられてるから仕方ないんだろうけど……。うーん。やっぱり、年相応な部分もあるなぁ。
リオンは、何が勿体ないのかさっぱりわからない。大体、学園を楽しむと言う発想がない。だから、素直に聞いた。
「何で、楽しまなきゃダメなんですか?」
「つまらないと思って学んでも身に付きませんよ。何事も楽しまないと。大体続きません。学園だって、毎日嫌々行くよりも、明日が楽しみだって行った方が精神的にも優しいです」
リオンは、今まで言われた事がない事ばかりで頭が追い付かない。生まれた時から跡継ぎとして教育され、学ぶ事が楽しかった事なんてない。いつも強要されて、仕方なくやっていたに過ぎない。
「リオン様。明日、何か楽しい事を見つけて来てみては?勉強も消去法でもいいので、何が一番好きか考えて見て下さい」
そんな話をしていたら、リズがリオンに声をかけた。
「リオン様、家庭教師の先生がお見えです」
「わかった。今行く」
「申し訳ございません。少しと言うお約束でしたのに……。でも、とても楽しい時間でした、ありがとう。リオン様」
「いえ。こちらこそ。いい気分転換になりました。では、失礼します」
そう言って、リオンはキャスティナの元を去っていった。もう少し話したかったと、物足りなさを感じながら。
「リオン君、おかえりなさい」
キャスティナは、リオンに向かって手を振った。リオンは、キャスティナに気づき足を止めてくれたのでリオンの前まで足を運んだ。
「あの、初めて挨拶した時から思ってるんですが、軽々しく君付けで呼ぶの止めてください。僕は、これでも侯爵家を継ぐ嫡男なんですが‼」
冷ややかな声が、キャスティナに刺さる。リオンと向かい合って目を見て話をするのは初めてだった。いつも食事の時に、テーブル越しに挨拶する程度だからだ。改めて一人の男性として見たリオンは、確かに年の割にはしっかりとした威厳のある風貌だ。弟のルイスとそう年が変わらないので、子供扱いしてしまった。母親に甘やかされて育ったルイスとは、全く違う。
「大変申し訳ありませんでした。リオン様」
キャスティナは、膝を折ってお辞儀をした。
「わかればいいよ。所で、何か用ですか?」
キャスティナは、リオンと話した事がなかったのでお茶でも一緒にと誘おうと思っていたのだが……思ってた印象と違うリオンに戸惑う。だが、ダメもとで誘ってみる事にした。なかなか、会う機会もないし。
「あの、よろしければお茶でも一緒にいかがですか?」
リオンは、正直お茶なんてしてる時間はない。断るつもりでいたが、一度くらいはいいかと思った。家族はみな、この娘を好ましく思っているが、正直どこがいいのかリオンには理解出来なかった。だから少し興味を引かれたのかもしれない。
「あまり、時間がないですが少しだけなら」
キャスティナは、良い返事をもらえると思ってなかったので嬉しくて満面の笑みをリオンに向けた。
「ありがとうございます。では、折角なのでお庭でもいいでしょうか?」
リオンは、その純粋な屈託ない笑顔にびっくりする。いつも相手にする貴族令嬢は、みんな同じ笑顔だからだ。本当か嘘かわからないような、同じ笑顔。それに鬱陶しさを感じていた。だから、衝撃だったのかもしれない。誰が見たって、了承した返事が嬉しくてこぼれた笑顔だと。
「いいですよ。では、行きましょう」
リオンは、キャスティナの手を取りエスコートしてくれた。まだ、10歳よね?なんなのこの流れるような、エスコートは!流石、侯爵家の跡取りです……。照れる……。頬をほんのり染めながら、リオンのエスコートに応じる素振りがなんとも可愛らしく、リオンは断らなくて正解だったと思った。
庭にあるガーデンテーブルに、二人は向かい合って座った。リズがお茶とお菓子を運んで来てくれた。キャスティナはお茶をひと口、口にした。
「リオン様は、学園の帰りですか?制服カッコいいですね」
リオンの制服は、白いブレザーに青のYシャツ、黒のスラックスだ。
「カッコイイですか·····。制服に格好良さは必要ですか?」
「必要ですよ。女の子の制服も可愛いですよね。私ずっと憧れてました」
キャスティナは、どこか遠い目をして語りかかけた。
「キャスティナお義姉様も、着てましたよね?」
「お義姉様?叔母様ではないの?」
「母上に叔母様だと可愛くないから、お義姉様にしなさいと言われました」
リオンは、どうでもいいとばかりに呟く。
「そうですか……。ちょっと照れるけど嬉しいです」
キャスティナは、はにかんだ笑顔を見せる。それを見たリオンは、全くこの人は……警戒心が全くない。大丈夫なのか?危なっかし過ぎる。ここでまた一人、キャスティナの保護者が増えた事に本人は気付いていない……。
「で、制服は?」
「私は、残念ながら着てないんですよ」
「え?子爵家だって、学園ぐらい行きますよね?」
「普通は、そうですね。うちは、普通ではなかったので。リオン様、学園ぐらいって言いますが決して『ぐらい』ではないんですよ。制服を着る事も友達を作る事も勉強する事も。全部、当たり前ではないですよ」
キャスティナは、静かにだけれど芯のある声で言った。
「そうですか……」
リオンは、どれも当たり前だと思っている。でもそうじゃないと初めて言われた。それはとても大切な事のように思えた。
「リオン様、学園は、楽しいですか?」
「別に遊びに行ってる訳ではないので」
「そうですけど、どうせなら楽しい方がいいですよ。リオン様は、どんな勉強が好きですか?」
「好きとか考えた事がないですね。必要だから、学んでるだけです」
「リオン様。それでは、勿体ないですよ」
キャスティナが、残念そうな顔をリオンに向ける。あー、リオン君、残念過ぎる。真面目過ぎるんだろうなこの子は。遊び心がないよ。嫡男として厳しく育てられてるから仕方ないんだろうけど……。うーん。やっぱり、年相応な部分もあるなぁ。
リオンは、何が勿体ないのかさっぱりわからない。大体、学園を楽しむと言う発想がない。だから、素直に聞いた。
「何で、楽しまなきゃダメなんですか?」
「つまらないと思って学んでも身に付きませんよ。何事も楽しまないと。大体続きません。学園だって、毎日嫌々行くよりも、明日が楽しみだって行った方が精神的にも優しいです」
リオンは、今まで言われた事がない事ばかりで頭が追い付かない。生まれた時から跡継ぎとして教育され、学ぶ事が楽しかった事なんてない。いつも強要されて、仕方なくやっていたに過ぎない。
「リオン様。明日、何か楽しい事を見つけて来てみては?勉強も消去法でもいいので、何が一番好きか考えて見て下さい」
そんな話をしていたら、リズがリオンに声をかけた。
「リオン様、家庭教師の先生がお見えです」
「わかった。今行く」
「申し訳ございません。少しと言うお約束でしたのに……。でも、とても楽しい時間でした、ありがとう。リオン様」
「いえ。こちらこそ。いい気分転換になりました。では、失礼します」
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