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scene29 どこまでですか?どっちですか?
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「どちらか持ちましょう。重くないですか?」
バッグの中にはもらってきた教科書、そして別の紙袋の中には制服と、山本さんは歩きにくそうにしている。
「いえ、わたしの荷物ですから大丈夫ですよ」
「でも今日は僕も軽いので」
僕は山本さんの教科書の入った方のバッグを手に取った。
ファミレスを出て大介と知香と分かれ、僕らはスーパーへ向かっている。
山本さんの日用品の追加をするためだ。
入り口の花屋さんを抜け店内へと進む。
昼過ぎの売り場は、まださほど混雑はしていない。
ヒット曲をインストにしたゆるいBGMが流れていて、隙だらけで穏やかな空気を作っている。
そんな店内を日用品売り場へと向かう。
「ふわぁ、ゆーとさん、シャンプーたくさんありますね」
と、山本さんは目を輝かせた。
ふむ。
いつも自分のをささっと買うだけだからあまり気にしないけど、確かに多くの種類のシャンプーが存在している。
本当はもっとおしゃれなお店の方が良いのかもしれないけれど、僕のをそのまま使うよりは全然ましだろう。
山本さんはシャンプーを手に取って吟味し始める。
そして、
「ゆーとさんは、大介さんや知香さんと仲良しなのですねー」
と、僕の顔をちらっと見た。
「大介は中学からですけど、知香は幼なじみですし。まあ、それ以上二人には世話になったとも思いますし」
僕もなんとなくシャンプーを手に取りながら応えた。
「いいですね、そういうの」
山本さんは透明なシャンプーを傾けて何かを確認している。
「まあ、腐れ縁ですよ」
僕はやっぱりそれほど興味が持てなくてシャンプーを棚に戻す。
山本さんが僕の顔を不思議そうな表情で見た。
「クサレエン?お金が臭いのですか?」
「えっと、何も臭くないですよ。多分」
うん……大介はどうだろうと思いつつ。
「では人が行かないようなお墓ですか?」
うーん、草ぼうぼうの霊園を想像してます?
僕は別の言い方に変えてみる。
「いや、そうではなくて、悪友といいますか」
「アクユー?OPEN YOUR MINDみたいな感じですか?」
はい?
心の扉を開けてしまいましたね。
それはそれで親しい感じは出るけども。
「そうではなくて、その」
「ああ、詞を作りますか?」
お?
……大御所でおられ過ぎない?
むしろ、よく知ってるな。
「山本さん?」
僕は山本さんの顔を見返した。
すると、山本さんは舌を出すと、
「えへへー、実はわかっていましたー」
と言って笑った。
やられた……。
けど、山本さん、知ってることと知らないことのギャップありすぎない?
当たり前でけど家庭内で使っていた日本語はわかるってこと?なのかな?
ということは、日本の情報とか言葉とかも、ネットもあるとは思うけど、ご両親寄りなのかもしれないな。
山本さんは話を続ける。
「両親が日本の音楽も好きで」
「そうなんですね」
「はい。歌謡曲とか一緒に聴いていましたよ」
と、自由奔放な鼻歌をし始めた。
確かに言われてみると懐かしいような日本っぽいメロディのような。
しかし……。
そこそこのわがままメロディですね。
でも、うん。
この件に関しては触れないほうが良いかも。
山本さんが鼻歌をしてる自分に気づく前に別の話でもしよう。
さっきファミレスで考えてたこと話してみようかな。
「そういえば、山本さん」
僕は山本さんを見る。
「はい」
山本さんの視線も僕に移る。
「さっきの話とかひょっとして好きでした?」
「ファミレスの時の話ですか?」
山本さんはいい具合に返してくれる。
「はい、宇宙人の話なんですけど」
「はいー。面白かったですー」
と、山本さんは手を一つたたいた。
「あの話の続きをしても良いですかね?」
「え?続きがあるのですか?ぜひ聞きたいです!」
山本さんはもう一回手をたたく。
そのリズムにそそのかされて僕は話をしてみる。
まさに調子に乗って話す僕。
その言葉一つ一つに表情を作ってくれ熱心に聞いてくれている。
「……で、うちにいる友人で”うちゆうじん”」
と、僕は話を締めくくる。
「ほえー」
山本さんがまじまじと僕の顔を見た。
その二重の大きな眼差しに耐えきれなくなって、
「えっと、どうです?」
と、おどおどとしょうもない話の感想を求めてしまう。
「面白いです!」
山本さんがまた手をたたいた。
ぱんっと先ほどよりも大きな音がした。
ほれみたことか。
大介、こういうことだよ。
「ゆーとさん、面白いです!」
またそう言うと、山本さんは小さく何度も手をたたいてくれた。
あまりに屈託なく笑う山本さんの空気に少し照れてしまう。
だから僕はシャンプーに手を伸ばして、
「まあ、山本さんは友人というよりは親戚みたいなものですけどね」
と、まとめてみた。
「親戚……ですか」
山本さんが顔を下に向けて小さな声で応えた。
あれ?
山本さん?
僕は思いもよらないトーンになってしまった山本さんにあわてて、
「はい。祖母を訪ねて来てくれたわけですし」
と、説明じみた話をする。
山本さんは、
「親戚……ですか」
と、同じセリフを繰り返した。
あれ?
親戚とかはみんなへの言い訳用だしな。
うーん。
少し図々しすぎたかな。
「ゆーとさん」
山本さんは顔を上げた。
「はい?」
僕は、頭がぐるぐる無駄に回る中、精一杯普通の声を出す。
「一緒に住んでいて……」
山本さんも何やら考えながら話しているようだ。
やっぱり僕のいらない一言は何か失敗してしまった。
「宇宙人ではなく……」
はい、おっしゃる通りです。
「親戚でもなく……」
はい、もちろんその通りだと思います。
僕は次の一言に即座に謝れるよう準備する。
山本さんは僕を見つめ、息を少し吸い込んだ。
そして。
その可愛い唇から、
「家族がいいです」
という言葉を生むと、無邪気に笑った。
……はい?
おおぅっ!?
山本さん?
そっち?
そっち方面?
っていうか。
っていうか、ですね。
それだと、プロポーズになってしまってませんか?
バッグの中にはもらってきた教科書、そして別の紙袋の中には制服と、山本さんは歩きにくそうにしている。
「いえ、わたしの荷物ですから大丈夫ですよ」
「でも今日は僕も軽いので」
僕は山本さんの教科書の入った方のバッグを手に取った。
ファミレスを出て大介と知香と分かれ、僕らはスーパーへ向かっている。
山本さんの日用品の追加をするためだ。
入り口の花屋さんを抜け店内へと進む。
昼過ぎの売り場は、まださほど混雑はしていない。
ヒット曲をインストにしたゆるいBGMが流れていて、隙だらけで穏やかな空気を作っている。
そんな店内を日用品売り場へと向かう。
「ふわぁ、ゆーとさん、シャンプーたくさんありますね」
と、山本さんは目を輝かせた。
ふむ。
いつも自分のをささっと買うだけだからあまり気にしないけど、確かに多くの種類のシャンプーが存在している。
本当はもっとおしゃれなお店の方が良いのかもしれないけれど、僕のをそのまま使うよりは全然ましだろう。
山本さんはシャンプーを手に取って吟味し始める。
そして、
「ゆーとさんは、大介さんや知香さんと仲良しなのですねー」
と、僕の顔をちらっと見た。
「大介は中学からですけど、知香は幼なじみですし。まあ、それ以上二人には世話になったとも思いますし」
僕もなんとなくシャンプーを手に取りながら応えた。
「いいですね、そういうの」
山本さんは透明なシャンプーを傾けて何かを確認している。
「まあ、腐れ縁ですよ」
僕はやっぱりそれほど興味が持てなくてシャンプーを棚に戻す。
山本さんが僕の顔を不思議そうな表情で見た。
「クサレエン?お金が臭いのですか?」
「えっと、何も臭くないですよ。多分」
うん……大介はどうだろうと思いつつ。
「では人が行かないようなお墓ですか?」
うーん、草ぼうぼうの霊園を想像してます?
僕は別の言い方に変えてみる。
「いや、そうではなくて、悪友といいますか」
「アクユー?OPEN YOUR MINDみたいな感じですか?」
はい?
心の扉を開けてしまいましたね。
それはそれで親しい感じは出るけども。
「そうではなくて、その」
「ああ、詞を作りますか?」
お?
……大御所でおられ過ぎない?
むしろ、よく知ってるな。
「山本さん?」
僕は山本さんの顔を見返した。
すると、山本さんは舌を出すと、
「えへへー、実はわかっていましたー」
と言って笑った。
やられた……。
けど、山本さん、知ってることと知らないことのギャップありすぎない?
当たり前でけど家庭内で使っていた日本語はわかるってこと?なのかな?
ということは、日本の情報とか言葉とかも、ネットもあるとは思うけど、ご両親寄りなのかもしれないな。
山本さんは話を続ける。
「両親が日本の音楽も好きで」
「そうなんですね」
「はい。歌謡曲とか一緒に聴いていましたよ」
と、自由奔放な鼻歌をし始めた。
確かに言われてみると懐かしいような日本っぽいメロディのような。
しかし……。
そこそこのわがままメロディですね。
でも、うん。
この件に関しては触れないほうが良いかも。
山本さんが鼻歌をしてる自分に気づく前に別の話でもしよう。
さっきファミレスで考えてたこと話してみようかな。
「そういえば、山本さん」
僕は山本さんを見る。
「はい」
山本さんの視線も僕に移る。
「さっきの話とかひょっとして好きでした?」
「ファミレスの時の話ですか?」
山本さんはいい具合に返してくれる。
「はい、宇宙人の話なんですけど」
「はいー。面白かったですー」
と、山本さんは手を一つたたいた。
「あの話の続きをしても良いですかね?」
「え?続きがあるのですか?ぜひ聞きたいです!」
山本さんはもう一回手をたたく。
そのリズムにそそのかされて僕は話をしてみる。
まさに調子に乗って話す僕。
その言葉一つ一つに表情を作ってくれ熱心に聞いてくれている。
「……で、うちにいる友人で”うちゆうじん”」
と、僕は話を締めくくる。
「ほえー」
山本さんがまじまじと僕の顔を見た。
その二重の大きな眼差しに耐えきれなくなって、
「えっと、どうです?」
と、おどおどとしょうもない話の感想を求めてしまう。
「面白いです!」
山本さんがまた手をたたいた。
ぱんっと先ほどよりも大きな音がした。
ほれみたことか。
大介、こういうことだよ。
「ゆーとさん、面白いです!」
またそう言うと、山本さんは小さく何度も手をたたいてくれた。
あまりに屈託なく笑う山本さんの空気に少し照れてしまう。
だから僕はシャンプーに手を伸ばして、
「まあ、山本さんは友人というよりは親戚みたいなものですけどね」
と、まとめてみた。
「親戚……ですか」
山本さんが顔を下に向けて小さな声で応えた。
あれ?
山本さん?
僕は思いもよらないトーンになってしまった山本さんにあわてて、
「はい。祖母を訪ねて来てくれたわけですし」
と、説明じみた話をする。
山本さんは、
「親戚……ですか」
と、同じセリフを繰り返した。
あれ?
親戚とかはみんなへの言い訳用だしな。
うーん。
少し図々しすぎたかな。
「ゆーとさん」
山本さんは顔を上げた。
「はい?」
僕は、頭がぐるぐる無駄に回る中、精一杯普通の声を出す。
「一緒に住んでいて……」
山本さんも何やら考えながら話しているようだ。
やっぱり僕のいらない一言は何か失敗してしまった。
「宇宙人ではなく……」
はい、おっしゃる通りです。
「親戚でもなく……」
はい、もちろんその通りだと思います。
僕は次の一言に即座に謝れるよう準備する。
山本さんは僕を見つめ、息を少し吸い込んだ。
そして。
その可愛い唇から、
「家族がいいです」
という言葉を生むと、無邪気に笑った。
……はい?
おおぅっ!?
山本さん?
そっち?
そっち方面?
っていうか。
っていうか、ですね。
それだと、プロポーズになってしまってませんか?
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