12 / 50
第12話(ルーパート視点)
しおりを挟む
・
・
・
はぁ、やれやれ。もう夜の十時か。
ドルフレッドのおっさんとの話が、思った以上に長引いてしまった。まったく、まだ長話をしたくなるほどの歳でもないだろうに。やっぱり、娘があんなことになって、参っちまってるのかね。あれでも、昔の戦争で名を上げた豪傑だそうだが、今の温厚な姿からは、とても想像がつかないな。
屋敷に戻った僕は、湯浴みを済ませ、バスローブを羽織ると、寝室のソファに座り、ゆったりとワインを飲む。……ふぅ、やっと人心地ついた。まったく、今日は大変な一日だったよ。
アドレーラを始末し、徘徊癖のある馬鹿女が勝手に行方不明になったということにして婚約を解消、ひいては、迷惑料までせしめるつもりだったが、まさかあいつに『探知の秘術』とやらがかけられていたとはね。使えるものなど一握りしかいない、古代の秘術じゃないか、いやまったく、恐れ入ったよ。
しかし、アドレーラの頭と体がぶっ壊れてて、本当に良かった。
何を言っても『あー』
何を聞いても『あー』
……ぷっ、くくくっ、あれなら、僕のしたことが明るみになることはない。
もっとも、馬鹿がつくほど――いや、馬鹿そのものの、素直すぎるあいつのことだ、僕が『何も喋るな』と命令すれば、たとえ父親が相手でも、何も言わなかっただろうけどね。いや、あいつの馬鹿さ加減を考えれば、自分がなぜ殺されそうになったか理解しているかどうかも怪しいものだ。くくくく。
くくっ、くふふっ、それにしても、『あー』しか言えないアドレーラのアホづらときたら、笑いをこらえるのに苦労したよ。いくらドルフレッドが底なしのお人よしとはいえ、ボロクズになった娘を笑われては、流石に激怒しただろうからな。
途中でこらえきれなくなり、つい口元を歪めてしまったが、うまく顔を背けたから、ドルフレッドには見られずに済んだ。その代わり、隣にいた若い男に見られてしまったが、まあ、程度の低い使用人か何かだろうし、どうでもいいだろう。
……ふふ、すべてが順調だ。
もはや、寝て起きて糞を垂れ流すだけの存在になり果ててしまったアドレーラは、とてもではないが、妻としての役割を果たすことはできない。責任感の強いドルフレッドのことだ。しかるべきタイミングで、僕との婚約は解消してくれるだろう。
この場合、相手の方に問題が発生したせいでの婚約解消――ということになるのだから、アドレーラが我がイズリウム家に入る際に持ってきた多額の持参金は、返却しなくても良いはずだ。
素晴らしい。
やはり、僕はついてる。
正直言って、アドレーラを井戸に突き落とすかどうか、少し迷ったんだよな。九割九分九厘バレないとは思っていたが、もしバレたら、僕のバラ色の人生はぶち壊しになってしまうからな。
だが、最後は決断した。
あのアホを、突き落としてやった。
決断して、本当に良かった。
すべてが、僕に都合の良い方向に動いている。
僕はきっと、神に愛されているのだろう。
良い気分で、ワインをさらに一口、二口、飲む。
いつの間にか、ボトルはほとんど空になっていた。
・
・
はぁ、やれやれ。もう夜の十時か。
ドルフレッドのおっさんとの話が、思った以上に長引いてしまった。まったく、まだ長話をしたくなるほどの歳でもないだろうに。やっぱり、娘があんなことになって、参っちまってるのかね。あれでも、昔の戦争で名を上げた豪傑だそうだが、今の温厚な姿からは、とても想像がつかないな。
屋敷に戻った僕は、湯浴みを済ませ、バスローブを羽織ると、寝室のソファに座り、ゆったりとワインを飲む。……ふぅ、やっと人心地ついた。まったく、今日は大変な一日だったよ。
アドレーラを始末し、徘徊癖のある馬鹿女が勝手に行方不明になったということにして婚約を解消、ひいては、迷惑料までせしめるつもりだったが、まさかあいつに『探知の秘術』とやらがかけられていたとはね。使えるものなど一握りしかいない、古代の秘術じゃないか、いやまったく、恐れ入ったよ。
しかし、アドレーラの頭と体がぶっ壊れてて、本当に良かった。
何を言っても『あー』
何を聞いても『あー』
……ぷっ、くくくっ、あれなら、僕のしたことが明るみになることはない。
もっとも、馬鹿がつくほど――いや、馬鹿そのものの、素直すぎるあいつのことだ、僕が『何も喋るな』と命令すれば、たとえ父親が相手でも、何も言わなかっただろうけどね。いや、あいつの馬鹿さ加減を考えれば、自分がなぜ殺されそうになったか理解しているかどうかも怪しいものだ。くくくく。
くくっ、くふふっ、それにしても、『あー』しか言えないアドレーラのアホづらときたら、笑いをこらえるのに苦労したよ。いくらドルフレッドが底なしのお人よしとはいえ、ボロクズになった娘を笑われては、流石に激怒しただろうからな。
途中でこらえきれなくなり、つい口元を歪めてしまったが、うまく顔を背けたから、ドルフレッドには見られずに済んだ。その代わり、隣にいた若い男に見られてしまったが、まあ、程度の低い使用人か何かだろうし、どうでもいいだろう。
……ふふ、すべてが順調だ。
もはや、寝て起きて糞を垂れ流すだけの存在になり果ててしまったアドレーラは、とてもではないが、妻としての役割を果たすことはできない。責任感の強いドルフレッドのことだ。しかるべきタイミングで、僕との婚約は解消してくれるだろう。
この場合、相手の方に問題が発生したせいでの婚約解消――ということになるのだから、アドレーラが我がイズリウム家に入る際に持ってきた多額の持参金は、返却しなくても良いはずだ。
素晴らしい。
やはり、僕はついてる。
正直言って、アドレーラを井戸に突き落とすかどうか、少し迷ったんだよな。九割九分九厘バレないとは思っていたが、もしバレたら、僕のバラ色の人生はぶち壊しになってしまうからな。
だが、最後は決断した。
あのアホを、突き落としてやった。
決断して、本当に良かった。
すべてが、僕に都合の良い方向に動いている。
僕はきっと、神に愛されているのだろう。
良い気分で、ワインをさらに一口、二口、飲む。
いつの間にか、ボトルはほとんど空になっていた。
64
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる