身勝手な理由で婚約者を殺そうとした男は、地獄に落ちました【完結】

小平ニコ

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第12話(ルーパート視点)

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 はぁ、やれやれ。もう夜の十時か。

 ドルフレッドのおっさんとの話が、思った以上に長引いてしまった。まったく、まだ長話をしたくなるほどの歳でもないだろうに。やっぱり、娘があんなことになって、参っちまってるのかね。あれでも、昔の戦争で名を上げた豪傑だそうだが、今の温厚な姿からは、とても想像がつかないな。

 屋敷に戻った僕は、湯浴みを済ませ、バスローブを羽織ると、寝室のソファに座り、ゆったりとワインを飲む。……ふぅ、やっと人心地ついた。まったく、今日は大変な一日だったよ。

 アドレーラを始末し、徘徊癖のある馬鹿女が勝手に行方不明になったということにして婚約を解消、ひいては、迷惑料までせしめるつもりだったが、まさかあいつに『探知の秘術』とやらがかけられていたとはね。使えるものなど一握りしかいない、古代の秘術じゃないか、いやまったく、恐れ入ったよ。

 しかし、アドレーラの頭と体がぶっ壊れてて、本当に良かった。

 何を言っても『あー』
 何を聞いても『あー』

 ……ぷっ、くくくっ、あれなら、僕のしたことが明るみになることはない。

 もっとも、馬鹿がつくほど――いや、馬鹿そのものの、素直すぎるあいつのことだ、僕が『何も喋るな』と命令すれば、たとえ父親が相手でも、何も言わなかっただろうけどね。いや、あいつの馬鹿さ加減を考えれば、自分がなぜ殺されそうになったか理解しているかどうかも怪しいものだ。くくくく。

 くくっ、くふふっ、それにしても、『あー』しか言えないアドレーラのアホづらときたら、笑いをこらえるのに苦労したよ。いくらドルフレッドが底なしのお人よしとはいえ、ボロクズになった娘を笑われては、流石に激怒しただろうからな。

 途中でこらえきれなくなり、つい口元を歪めてしまったが、うまく顔を背けたから、ドルフレッドには見られずに済んだ。その代わり、隣にいた若い男に見られてしまったが、まあ、程度の低い使用人か何かだろうし、どうでもいいだろう。

 ……ふふ、すべてが順調だ。

 もはや、寝て起きて糞を垂れ流すだけの存在になり果ててしまったアドレーラは、とてもではないが、妻としての役割を果たすことはできない。責任感の強いドルフレッドのことだ。しかるべきタイミングで、僕との婚約は解消してくれるだろう。

 この場合、相手の方に問題が発生したせいでの婚約解消――ということになるのだから、アドレーラが我がイズリウム家に入る際に持ってきた多額の持参金は、返却しなくても良いはずだ。

 素晴らしい。
 やはり、僕はついてる。

 正直言って、アドレーラを井戸に突き落とすかどうか、少し迷ったんだよな。九割九分九厘バレないとは思っていたが、もしバレたら、僕のバラ色の人生はぶち壊しになってしまうからな。

 だが、最後は決断した。
 あのアホを、突き落としてやった。

 決断して、本当に良かった。

 すべてが、僕に都合の良い方向に動いている。
 僕はきっと、神に愛されているのだろう。

 良い気分で、ワインをさらに一口、二口、飲む。

 いつの間にか、ボトルはほとんど空になっていた。
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