上 下
46 / 75

第46話

しおりを挟む
 とんでもない話だった。

 しかしここで俺は、ずっと疑問に思っていたことを口にせずにはいられなかった。

「あのさ。その、お前の見た未来の映像が、本当に起こるって証拠は別にないよな? 超リアルなインチキ映像を見せられただけなのかもよ?」

「私もそう思いたいところだけど、あれは特別な魔力のこもった、特別な映像だった。たぶん、古代の偉大な予言者が作ったものね。実際に見ないとわからないでしょうけど、疑う余地のない現実感があったわ。だから未来は、絶対に映像の通りになる」

「いや、でもなあ……そう言われてもなあ……」

 いまだに半信半疑の俺に、ルイーズは何も言葉を返さす、空を見上げる。

 そして、ぽつりと言った。

「今から一分後。夜空を流れ星が横切るわ。それも二つ。一つは青白い光。もう一つは、うっすら赤い光よ」

 いきなり何を言ってるんだ?
 そう思いつつ、俺も黙って空を見上げる。

 すると、きっかり一分後。
 夜空を二つの流れ星が横切った。

 ……一つは青白い光。
 もう一つは、うっすら赤い光だった。

 愕然とする俺に、ルイーズは淡々と言う。

「あの隠し部屋で、断片的にだけど、これから起こる未来の映像が一気に頭に流れ込んできたの。今の流れ星も、その時見たのよ。これで、私の言ってることが真実だってわかったかしら?」

「じゃ、じゃあ本当に、未来のこと、全部分かるのか?」

「断片的にって言ったでしょ。分かるのは、世界の終わりに関することだけよ」

「でも今、流れ星のことを言い当てたじゃないか」

「あの流れ星も、世界の終わりに関係しているの。もう少ししたら、二つの流れ星は西のベルキア王国の端っこに落下するわ。そして、落下点からうじゃうじゃと新種のモンスターが出てくるの。それで、300年続いた大国ベルキアの平和はおしまい。たったの三日ほどで、皆死んでしまうのよ」

「ま、まるで見てきたみたいに言うんだな……」

「そうよ。だってさっき、映像で見せられたんだもの」

 俺はもう、何も言うことができなかった。ルイーズも何も言わず、俺たちはどちらからともなくテントに入り、寝る準備に入る。

 小さなテントの中。ルイーズと肩を並べて横になりながら、俺は考えをまとめていた。……しかし、あと4ヶ月で世界が終わるのに、考えをまとめて何になるのか?

 これから、どうすればいいのだろう?

 そんな思いが、そのまま口から出た。

「なあ、ルイーズ。これからどうする?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

才能だって、恋だって、自分が一番わからない

BL / 連載中 24h.ポイント:227pt お気に入り:13

転生ババァは見過ごせない!~元悪徳女帝の二周目ライフ~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,940pt お気に入り:13,493

【全話まとめ】意味が分かると怖い話【解説付き】

ホラー / 連載中 24h.ポイント:84,348pt お気に入り:650

詩集「支離滅裂」

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:448pt お気に入り:1

ショート朗読シリーズ

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:0

死が見える…

ホラー / 完結 24h.ポイント:1,065pt お気に入り:2

傲慢悪役令嬢は、優等生になりましたので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,050pt お気に入り:4,401

処理中です...