姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】

小平ニコ

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第6話

 そして、中に入る。

 テントの中は、何らかの方法で空調がきいているのか、外より涼しく、空気もカラッとしている。だが、それより驚いたのは、内装の優美さである。きちんと整理整頓がされていて、趣味の良い調度品もいくつか並んでおり、まるで貴族の館みたいだ。

 しかも、テントなのに、細かく部屋割りがされているらしく、今私たちが立っているのは、玄関とリビングを組み合わせた感じの場所のようである。

 私は小さく感嘆の声を上げ、呟く。

「ふうん、本当に、素敵なおうちじゃない。トラウゼンって、野生の王国みたいなところだと思ってたけど、ちゃんと落ち着けそうな場所もあるみたいで、ちょっと安心したわ」

 背の高い男はふんぞり返り、笑った。

「このテントは兄貴が魔法で作ったんだ。兄貴もあんたと同じ、魔法使いだからな。今、兄貴を呼んでくるから、ちょっと待っててくれ」

 そう言って、背の高い男はリビングの端にあるドアを開け、中に入った。

 私と背の低い男だけが、後に残される。
 背の低い男は、なんだかそわそわと、嬉しそうにしていた。

 私は、彼に問う。

「どうしたの? なんだか嬉しそうね」

 男は、満面の笑みで頷いた。

「お前、保護した。これ、とても良いこと。兄貴、俺のこと、褒めてくれる」

 兄貴に褒められることを想像して気分が高揚したのか、背の低い男はまたカタコトになってしまった。……邪気のない、気の良い男だ。それによく見ると、幼い顔をしている。ガッチリとした体格の印象で、成人だと思っていたが、実際は十代後半……いや、もしかしたら、まだ十代前半なのかもしれない。

 そんなことを考えていると、リビングのドアが再び開き、背の高い男と共に、美しい青年が現れた。

 その涼やかな美貌に、私は一瞬、言葉を失ってしまう。

 魔法王国イルスタンの上級貴族が着るような、しっかりとした衣装に身を包み、唇には微笑をたたえ、その青い瞳はどこまでも澄みきっている。

 背の高い男と背の低い男――二人の筋骨隆々の男たちが『兄貴』『兄貴』と言うくらいだから、どんなマッチョマンが出てくるのかと思っていたので、本当に驚いてしまい、私は何も言うことができなかった。

 そんな私の代わりに、青年が口を開く。

「お嬢さん、トラウゼンにようこそ。私はこの区域の顔役を務めているルフレンスという者です。この二人……ノブとコラは、ここまであなたを、丁重にエスコートしてくれましたか?」

 美しき青年――ルフレンスは、背の高い男――ノブと、背の低い男――コラを交互に見て、私にそう尋ねた。

 ありのままを正直に述べるなら、『二人がいきなり飛びかかってきたから、連れ去られるかと思った』と言うところだが、そんな言い方をしたら、『兄貴に褒めてもらえる』と期待しているコラが、怒られてしまうかもしれない。私はぎこちない愛想笑いを浮かべ、「ええ、まあ」とだけ答えた。
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