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第24話
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お姉様を討ち果たした私は、トラウゼンに戻った。追放された大臣たちと、今後のことについて協議しなければならないし、何より、ルフレンスに聞きたいことがあったからだ。
夜。テントの中で、ルフレンスと二人きりになり、私は彼に、お姉様が最後に残した言葉の意味を問いかけた。ルフレンスはしばらくの間目を閉じ、深いため息と共に、悲しげな声を出す。
「恐らく、セリアは生きることに飽いていたのでしょう。彼女はもともと精神的に不安定で、ごく一部の人間にしか心を許さなかった。その『ごく一部の人間』――彼女のお父上と、私がいなくなったことで、彼女にとってこの世界は、生きるに値しないものになってしまったのかもしれません」
「いなくなったって……お父様はともかく、あなたはトラウゼンで生きているんだから、いくらでも会うことができるじゃない」
「いえ、セリアにとって大切だったのは、幼い頃、楽しい時間を共有した親友の『ルー』であり、王を裏切ったブライディ宰相の息子『ルフレンス』は、彼女にとっては別人なんです。セリアの中では、『ルー』はもう死んでいるのですよ」
「そんな……」
「私には、なんとなくセリアの気持ちがわかります。大好きだったお父上を、実質死に追いやったブライディ宰相……その子供が、自分の親友であるという事実を、セリアは受け入れることができなかったのでしょう。父だけではなく、私の存在が、不安定だったセリアの精神をさらに追い込んでしまったのかもしれません……」
「あなたが気に病むことはないわ。お姉様もつらかったのかもしれないけど、それでも、やったことはめちゃくちゃだし、国を私物化していい理由にはならないもの」
私はそこまで言うと唇を閉じ、頭の中で、ルフレンスの言葉を反芻した。
『彼女はもともと精神的に不安定で、ごく一部の人間にしか心を許さなかった』
その『ごく一部の人間』とは、今ルフレンスが言った通り、お父様と、幼い頃のルフレンスだけ。……お父様は死に、ルフレンスも、お姉様の中ではもう死んだことになっている。だからお姉様にはもう、心を許せる人間が、ただの一人もいなかったのね。
……なんて寂しい人生だろう。
私は静かに目をつむり、お姉様のことを憐れんだ。
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お姉様を討ち果たした私は、トラウゼンに戻った。追放された大臣たちと、今後のことについて協議しなければならないし、何より、ルフレンスに聞きたいことがあったからだ。
夜。テントの中で、ルフレンスと二人きりになり、私は彼に、お姉様が最後に残した言葉の意味を問いかけた。ルフレンスはしばらくの間目を閉じ、深いため息と共に、悲しげな声を出す。
「恐らく、セリアは生きることに飽いていたのでしょう。彼女はもともと精神的に不安定で、ごく一部の人間にしか心を許さなかった。その『ごく一部の人間』――彼女のお父上と、私がいなくなったことで、彼女にとってこの世界は、生きるに値しないものになってしまったのかもしれません」
「いなくなったって……お父様はともかく、あなたはトラウゼンで生きているんだから、いくらでも会うことができるじゃない」
「いえ、セリアにとって大切だったのは、幼い頃、楽しい時間を共有した親友の『ルー』であり、王を裏切ったブライディ宰相の息子『ルフレンス』は、彼女にとっては別人なんです。セリアの中では、『ルー』はもう死んでいるのですよ」
「そんな……」
「私には、なんとなくセリアの気持ちがわかります。大好きだったお父上を、実質死に追いやったブライディ宰相……その子供が、自分の親友であるという事実を、セリアは受け入れることができなかったのでしょう。父だけではなく、私の存在が、不安定だったセリアの精神をさらに追い込んでしまったのかもしれません……」
「あなたが気に病むことはないわ。お姉様もつらかったのかもしれないけど、それでも、やったことはめちゃくちゃだし、国を私物化していい理由にはならないもの」
私はそこまで言うと唇を閉じ、頭の中で、ルフレンスの言葉を反芻した。
『彼女はもともと精神的に不安定で、ごく一部の人間にしか心を許さなかった』
その『ごく一部の人間』とは、今ルフレンスが言った通り、お父様と、幼い頃のルフレンスだけ。……お父様は死に、ルフレンスも、お姉様の中ではもう死んだことになっている。だからお姉様にはもう、心を許せる人間が、ただの一人もいなかったのね。
……なんて寂しい人生だろう。
私は静かに目をつむり、お姉様のことを憐れんだ。
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