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第13話(ジョセフ視点)
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だが、何にしても、仕事はしなければならなかった。
働かなければ、生きていけないのだから。
そして、職業斡旋所に足しげく通い、なんとか紹介してもらえたのが、炭鉱夫の仕事だったというわけだ。……毎日まっ黒に汚れ、危険なことも多く、死ぬほど疲れる鉱山労働は、それまでのんびりと生きていた僕にとって、地獄の刑罰そのものだった。
『元貴族のガキが! チンタラやってんじゃねぇ! ノロマが一人いると、全員に迷惑がかかるんだよ!』
……働き始めの頃は、それこそ朝から晩まで、このような感じで罵倒された。
あまり気の強い方ではない僕は、怒鳴られるのが嫌いだった(まあ、怒鳴られるのが好きと言う人もあまりいないだろうが)。何度逃げ出そうと思ったか分からないが、苦労の果てに、やっと紹介してもらった仕事だ。世の中不景気だし、ここ以外に、僕なんかが生きていける場所はない。だから、必死に耐えた。
耐えて、耐えて、泣いて、耐えて、一年がたった頃。風の噂で、フェリシティアが、地方領主の息子である、リカルドという青年と婚約したらしいことを、僕は知った。
荒っぽい鉱山の男たちに怒鳴られることにも慣れてきていたので、僕も幾分か精神的に強くなったと思っていたが、フェリシティアが別の男のものになると知った瞬間、僕の胸は、針で刺されたかのように痛んだ。
いてもたってもいられなくなった僕は、貴重な休日を利用し、一年ぶりに、フェリシティアの家に向かった。この一年、一度も整えることのなかった髪をちゃんと梳かし、今持っている中で、一番上等な服を着て。
……そして、道の途中で、引き返した。
目からは、涙が溢れていた。
何をやっているんだ、僕は。
何をしようとしていたんだ、僕は。
まさか、『リカルドとの婚約はやめてくれ。僕は心を入れ替えたんだ。だから、また僕と付き合ってくれ』とでも、言おうとしていたのか?
馬鹿。
馬鹿。
本物の、馬鹿男。
今更めかしこんで、フェリシティアに会って、何になると言うんだ。
フェリシティアを軽んじ、ぞんざいな態度を取り続けた僕には、もう、彼女に会う資格すらない。……帰ろう。今日はもう、酒でも飲んで、寝てしまおう。
そんなことを思いながら、俯き、トボトボと歩いていると、道の端からゆっくりとやって来た馬車が、僕の横で停車した。
なんだろう?
僕も足を止め、ちらりと横目で見ると、馬車の小窓が開き、中から精悍な青年が顔を出す。青年は、いかにも親切そうに微笑んで、僕に言った。
「突然声をおかけして、申し訳ありません。おせっかいかもしれませんが、すぐ近くまで、嵐が迫っています。このまま歩いていると、ずぶ濡れになってしまいますよ」
働かなければ、生きていけないのだから。
そして、職業斡旋所に足しげく通い、なんとか紹介してもらえたのが、炭鉱夫の仕事だったというわけだ。……毎日まっ黒に汚れ、危険なことも多く、死ぬほど疲れる鉱山労働は、それまでのんびりと生きていた僕にとって、地獄の刑罰そのものだった。
『元貴族のガキが! チンタラやってんじゃねぇ! ノロマが一人いると、全員に迷惑がかかるんだよ!』
……働き始めの頃は、それこそ朝から晩まで、このような感じで罵倒された。
あまり気の強い方ではない僕は、怒鳴られるのが嫌いだった(まあ、怒鳴られるのが好きと言う人もあまりいないだろうが)。何度逃げ出そうと思ったか分からないが、苦労の果てに、やっと紹介してもらった仕事だ。世の中不景気だし、ここ以外に、僕なんかが生きていける場所はない。だから、必死に耐えた。
耐えて、耐えて、泣いて、耐えて、一年がたった頃。風の噂で、フェリシティアが、地方領主の息子である、リカルドという青年と婚約したらしいことを、僕は知った。
荒っぽい鉱山の男たちに怒鳴られることにも慣れてきていたので、僕も幾分か精神的に強くなったと思っていたが、フェリシティアが別の男のものになると知った瞬間、僕の胸は、針で刺されたかのように痛んだ。
いてもたってもいられなくなった僕は、貴重な休日を利用し、一年ぶりに、フェリシティアの家に向かった。この一年、一度も整えることのなかった髪をちゃんと梳かし、今持っている中で、一番上等な服を着て。
……そして、道の途中で、引き返した。
目からは、涙が溢れていた。
何をやっているんだ、僕は。
何をしようとしていたんだ、僕は。
まさか、『リカルドとの婚約はやめてくれ。僕は心を入れ替えたんだ。だから、また僕と付き合ってくれ』とでも、言おうとしていたのか?
馬鹿。
馬鹿。
本物の、馬鹿男。
今更めかしこんで、フェリシティアに会って、何になると言うんだ。
フェリシティアを軽んじ、ぞんざいな態度を取り続けた僕には、もう、彼女に会う資格すらない。……帰ろう。今日はもう、酒でも飲んで、寝てしまおう。
そんなことを思いながら、俯き、トボトボと歩いていると、道の端からゆっくりとやって来た馬車が、僕の横で停車した。
なんだろう?
僕も足を止め、ちらりと横目で見ると、馬車の小窓が開き、中から精悍な青年が顔を出す。青年は、いかにも親切そうに微笑んで、僕に言った。
「突然声をおかけして、申し訳ありません。おせっかいかもしれませんが、すぐ近くまで、嵐が迫っています。このまま歩いていると、ずぶ濡れになってしまいますよ」
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