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第28話(パメラ視点)
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しかし、目の前の黒ずくめの男は、つまらないおもちゃを見るような目で私を見下し、それから、「ちょっと黙れ」と言い、パンッと私の頬を叩いた。
私は茫然とし、叩かれたばかりの頬を押さえる。
この大男が、本気で私を殴ったなら、今頃体ごと吹っ飛んでるはずなので、彼にとっては、ほとんど力を入れず、私を黙らせるためだけに叩いたのだろうが、それでも私は、凄まじい精神的ショックを受けた。
だって、顔を叩かれるなんて、生まれて初めてだったから。
三年前、路上でジョセフと取っ組み合いをしたとき。私は無遠慮にジョセフの顔を殴ったが、ジョセフは一度だって、私の顔を殴り返したりはしなかった。
そう。
どんなに怒っていても、心に余裕がなくても、ジョセフは絶対に、私を殴ったりはしなかった。……今更になって、ジョセフの優しさを知り、私は、泣いた。声を上げて、泣いた。
黒ずくめの男は、もう一度タバコをふかし、やれやれと言った感じで口を開く。
「さてさて、売春がいやって言うなら、どうする? 能無しのあんたに、他に金を稼ぐ方法があるのかい? パン屋で働くか? お針子でもするか? 言っておくが、パン屋もお針子も、大変な仕事だ。根性なしの世間知らずにゃ、とても務まらねぇよ。しかも、大して給料が出るわけでもねぇから、負け分を完済するには、途方もない年月がかかる」
わかってる。
パンの焼き方なんて知らないし、針仕事なんて、したこともない。
でも、売春だけは、絶対にいやだった。
見知らぬ男に触れられるだなんて、想像しただけで身の毛がよだつ。
私はもう、恥も外聞もなく、土下座して、黒ずくめの男に哀訴した。
「お願いします、お願いします、売春だけは、許してください……他のことなら、なんでもしますから、売春だけは……どうか……どうか……」
黒ずくめの男は、しばらく何も言わなかった。たぶん、時間にして、わずか一分程度だと思うけど、彼は、静かにタバコを吸い続けた。たったの一分でも、私にとっては、長い長い沈黙に感じられた。
そして、黒ずくめの男は、やっと口を開く。
「わかったよ。そんなに嫌ならしょうがねぇ。嫌々やられちゃ、娼館の評判が落ちちまうからな。……もう一つ、あんたでもできそうな仕事を、紹介してやるよ。ただし、もう二度とワガママはなしだぜ。『他のことなら、なんでもします』って、自分で言ったんだ。泣いても喚いても、取り消せねぇからな」
私は、頷いた。
売春以外なら、どんな過酷な仕事でも、耐えるつもりだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
パメラに紹介された、『あんたでもできそうな仕事』とはなんなのか……
一ヶ月近く続いてきた物語ですが、そろそろクライマックスです!
本日から新作『とある令嬢と婚約者、そしてその幼馴染の修羅場を目撃した男の話』を投稿しております。
ヒロインが、馬鹿な婚約者と幼馴染に振り回される、定番の展開なのですが、ストーリーのすべてが、無関係の第三者の視点で語られる、一風変わった物語となっております。
ジョセフの母上ではありませんが、普段大人しい人ほど、思いつめ、キレたら怖いというお話……よろしければ、見てもらえると嬉しいです!
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