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第52話
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そこで初めて、ぐずるばかりだったチェスタスの瞳に、何かに気がついたような光が宿る。チェスタスは俯き、小さく、「そうか」「そういうことなのか」と呟いている。それはまるで、自分の心の中で、想いをゆっくりと咀嚼しているようだった。
そして顔を上げたチェスタスは、もう情けなくべそをかいてなかった。
憔悴こそしているものの、どこか、すべてに納得した顔で、ため息と共に言う。
「……今、やっとわかりました。アンジェラが僕との婚約を破棄することも、ディアルデン家がお取り潰しになることも、結局は、僕の浅はかな考え方と、幼稚な行動が招いた結果なんですね」
自分の間違いに気がついたチェスタスに、ナディアス王子は慈悲深い眼差しを浮かべ、小さく頷いた。チェスタスもまた、それに呼応するように頷き、語り続ける。
「叔父上に命じられて、不正を手伝っている時も、アンジェラをないがしろにしているときも、僕は、よくないことをしているという実感が、少しもなかった。と、言うより、何も考えていなかったんです。だから、罪悪感もないし、何か問題が起こっても、自分が罰せられるなんて、思いもしなかった。アンジェラが僕を見捨てるなんて、思いもしなかった……」
そこで一度言葉を切り、チェスタスは再び俯くと、そろり、そろりと言葉を吐き出していく。
「すべてを失って、愚鈍な僕も、さすがに目が覚めました。ディアルデン家はもう無くなってしまいますが、今後は、誠実さを第一に考え、裸一貫で、なんとか頑張っていこうと思います。甘ったれの僕が、本当に一人で生きていけるか、凄く不安だけど……」
ナディアス王子は、チェスタスの両肩に手を置き、励ますように言う。
「先程までのきみならともかく、今のきみなら、きっと大丈夫ですよ。自分の間違いに気がつき、正しい道を歩もうとしているのですから」
チェスタスは、静かに「はい」と呟き、そして、部屋を出ていく。
去り際、彼は私に向かって、小さく声をかけた。
「アンジェラ、嫌な思いをさせて、すまなかった。もう二度と会うことはないだろうから、最後に謝っておくよ」
私は、首を左右に振り、「もういいのよ」と言う。
今でもわだかまりはあるが、弱ったチェスタスに追い打ちをかけるほど、私の心は歪んでいない。手を差し伸べてあげようとまでは思わないけど、それでも、チェスタスの今後を思うと、多少は同情心も湧く。今まさに扉をくぐり、出て行こうとするチェスタスを、私は呼び止めた。
「チェスタス」
チェスタスは立ち止まり、振り向く。呼び止めたものの、なんて声をかけるべきか、数秒悩み、私は、思った通りのことを、そのまま言葉にすることに決め、口を開いた。
そして顔を上げたチェスタスは、もう情けなくべそをかいてなかった。
憔悴こそしているものの、どこか、すべてに納得した顔で、ため息と共に言う。
「……今、やっとわかりました。アンジェラが僕との婚約を破棄することも、ディアルデン家がお取り潰しになることも、結局は、僕の浅はかな考え方と、幼稚な行動が招いた結果なんですね」
自分の間違いに気がついたチェスタスに、ナディアス王子は慈悲深い眼差しを浮かべ、小さく頷いた。チェスタスもまた、それに呼応するように頷き、語り続ける。
「叔父上に命じられて、不正を手伝っている時も、アンジェラをないがしろにしているときも、僕は、よくないことをしているという実感が、少しもなかった。と、言うより、何も考えていなかったんです。だから、罪悪感もないし、何か問題が起こっても、自分が罰せられるなんて、思いもしなかった。アンジェラが僕を見捨てるなんて、思いもしなかった……」
そこで一度言葉を切り、チェスタスは再び俯くと、そろり、そろりと言葉を吐き出していく。
「すべてを失って、愚鈍な僕も、さすがに目が覚めました。ディアルデン家はもう無くなってしまいますが、今後は、誠実さを第一に考え、裸一貫で、なんとか頑張っていこうと思います。甘ったれの僕が、本当に一人で生きていけるか、凄く不安だけど……」
ナディアス王子は、チェスタスの両肩に手を置き、励ますように言う。
「先程までのきみならともかく、今のきみなら、きっと大丈夫ですよ。自分の間違いに気がつき、正しい道を歩もうとしているのですから」
チェスタスは、静かに「はい」と呟き、そして、部屋を出ていく。
去り際、彼は私に向かって、小さく声をかけた。
「アンジェラ、嫌な思いをさせて、すまなかった。もう二度と会うことはないだろうから、最後に謝っておくよ」
私は、首を左右に振り、「もういいのよ」と言う。
今でもわだかまりはあるが、弱ったチェスタスに追い打ちをかけるほど、私の心は歪んでいない。手を差し伸べてあげようとまでは思わないけど、それでも、チェスタスの今後を思うと、多少は同情心も湧く。今まさに扉をくぐり、出て行こうとするチェスタスを、私は呼び止めた。
「チェスタス」
チェスタスは立ち止まり、振り向く。呼び止めたものの、なんて声をかけるべきか、数秒悩み、私は、思った通りのことを、そのまま言葉にすることに決め、口を開いた。
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