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第104話(リーゼル視点)
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さて、話を戻そう。
俺に話しかけられたフェルヴァは、ベンチに腰かけたまま、こっちを見て、ニッコリ笑った。フェルヴァはもともと美しい顔をしていたが、その美しさは、しばらく顔を合わせていないうちに、ますます磨かれたように、俺は思った。
フェルヴァは天使と見まごうような清らかで愛らしい笑みを浮かべたまま、短い言葉を述べた。
「最近じゃないわ」
「えっ?」
「姉さん、今、『最近あまり話せてなかった』って言ったけど、最近だけじゃないわ。この一年間、一度だって、まともに私の相手をしてくれたことなんてなかった」
フェルヴァは、相変わらず笑顔だった。
しかしその言葉からは、隠す気もない怒りの感情が溢れていた。
甘えん坊のフェルヴァは、しばしばこのように拗ねて、ワガママを言うことがあった。かまってもらえなかったことにへそを曲げているだけの、子供っぽい、可愛いワガママではあるが、様々な雑務で忙しい中、せっかく声をかけてやったのに、責めるようなことを言われ、少しだけムッとした俺は、小さなため息を漏らしながら言葉を返した。
「仕方ないでしょう、私だって、暇じゃないんだから。毎日勉強することがいっぱいで、今日だって寝不足なのよ。それに、あなたももう14歳なんだから、甘えた態度を取るのは控えなさい。名家であるアストラス家の一員として、恥ずかしくない振る舞いを……」
そんな俺のお小言を遮るように、フェルヴァは少し硬い声を出した。
「姉さん。一年前に、私がなんて言ったか覚えてる?」
「一年前? そんな昔のこと、覚えてるわけないじゃない」
「そう。そうね。一年も前じゃ、無理もないわね。でも、私は覚えてるわ。……私、姉さんにこう言ったのよ。『どうしても聞いてもらいたいことがあるの』って。そしたら姉さん、私になんて言ったと思う?」
俺は黙り、少しだけ考えた。
でも、フェルヴァになんて答えたのか、どうしても思い出せなかった。
一年前は、まだ秘書にはなっていなかったが、学校を首席で卒業するために、俺は他のすべてを犠牲にする勢いで勉学に励んでいた。きっと、フェルヴァに何か言われても、適当にあしらっていたのだろう。
俺に話しかけられたフェルヴァは、ベンチに腰かけたまま、こっちを見て、ニッコリ笑った。フェルヴァはもともと美しい顔をしていたが、その美しさは、しばらく顔を合わせていないうちに、ますます磨かれたように、俺は思った。
フェルヴァは天使と見まごうような清らかで愛らしい笑みを浮かべたまま、短い言葉を述べた。
「最近じゃないわ」
「えっ?」
「姉さん、今、『最近あまり話せてなかった』って言ったけど、最近だけじゃないわ。この一年間、一度だって、まともに私の相手をしてくれたことなんてなかった」
フェルヴァは、相変わらず笑顔だった。
しかしその言葉からは、隠す気もない怒りの感情が溢れていた。
甘えん坊のフェルヴァは、しばしばこのように拗ねて、ワガママを言うことがあった。かまってもらえなかったことにへそを曲げているだけの、子供っぽい、可愛いワガママではあるが、様々な雑務で忙しい中、せっかく声をかけてやったのに、責めるようなことを言われ、少しだけムッとした俺は、小さなため息を漏らしながら言葉を返した。
「仕方ないでしょう、私だって、暇じゃないんだから。毎日勉強することがいっぱいで、今日だって寝不足なのよ。それに、あなたももう14歳なんだから、甘えた態度を取るのは控えなさい。名家であるアストラス家の一員として、恥ずかしくない振る舞いを……」
そんな俺のお小言を遮るように、フェルヴァは少し硬い声を出した。
「姉さん。一年前に、私がなんて言ったか覚えてる?」
「一年前? そんな昔のこと、覚えてるわけないじゃない」
「そう。そうね。一年も前じゃ、無理もないわね。でも、私は覚えてるわ。……私、姉さんにこう言ったのよ。『どうしても聞いてもらいたいことがあるの』って。そしたら姉さん、私になんて言ったと思う?」
俺は黙り、少しだけ考えた。
でも、フェルヴァになんて答えたのか、どうしても思い出せなかった。
一年前は、まだ秘書にはなっていなかったが、学校を首席で卒業するために、俺は他のすべてを犠牲にする勢いで勉学に励んでいた。きっと、フェルヴァに何か言われても、適当にあしらっていたのだろう。
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