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第120話(リーゼル視点)

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「な、なに? どういうことだ?」

「言った通りの意味よ。私とゲームをして姉さんが勝てば、そのご褒美として、『至高なる魔女の会』を完全に消滅させる。そしてもう、同じような組織を作ったりもしない。私自身も、この町から姿を消す」

「…………」

「もちろん、人類はいずれ絶滅させるつもりだけど、私、別にそこまで急いでないのよ。だから、少なくともしばらくの間は、妙な行動を起こしたりしないと約束するわ」

「そのゲームとやらにお前が勝ったら、どうなるんだ?」

「別に、どうもしないわ。これまで通りに『至高なる魔女の会』を大きくして、そう遠くない将来に、最終戦争を起こすだけよ」

「わからないな。じゃあゲームをしても、お前には何の得もないじゃないか」

 フェルヴァは人差し指を左右に振りながら、「チッチッチ」と舌を鳴らした。

「姉さん、損とか得とか、そういうことじゃないのよ。私は姉さんとゲームをしたい気分なの。今は人類絶滅より、姉さんと遊ぶことの方が、私にとっては大事なのよ。で、姉さんに真剣に遊んでもらうには、豪華なご褒美を用意しなきゃならない。だから私は、これまで丁寧に育て上げてきた『至高なる魔女の会』の消滅を、景品にしようってわけ」

「めちゃくちゃだな。小さな子供だって、もうちょっと行動に一貫性があるぞ。お前、本当は何が目的なんだ? いったい、何がしたいんだよ。お前の本心は、どこにあるんだ?」

「さあ。本当は、なんにもしたくないのかもね。本心なんて、どこにもないのかもね。うふふ」

「はぐらかしやがって。お前のそういうところ、本当に嫌いだ」

 俺は吐き捨てるようにそう言い、少しだけ思案して、短く問う。

「……俺が勝ったら、本当に『至高なる魔女の会』を消滅させるのか? お前が約束を守る保証は?」

 フェルヴァは微笑み、即答した。

「姉さん。私、これまで一度でも、姉さんとの約束を破ったことがあった?」

「……ない」

「でしょ? 私、約束したことを破る人って、嫌いだもの。自分のされたくないことは、他人にもしないこと。これって人間社会で生きていく上で、けっこう重要なことよね」

「人類滅亡をもくろむお前が『自分のされたくないことは、他人にもしないこと』とはね。そこそこ笑える冗談だ」
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