二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第24話

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「あぁ~……そういえば、言ってたわね。ボクシングは不完全な格闘技だとか何とか。……ちょっと待って、ボクシングが『エルフの誇り』って、どういうこと?」

 私の問いが心底不思議だったのか、エルフの女の子は、首をかしげながら言う。

「え? ボクシングと言ったら、エルフ族でしょ? そして、エルフ族と言ったら、ボクシングです。これは、世界の常識ですよ?」

 どこの世界の常識だ。
 私も彼女と同じように首をかしげ、言う。

「い、いやいや、エルフ族って、格闘技とかとは正反対のイメージって言うか、ほら、弓とか魔法とか、そういうのに精通してそうなイメージなんだけど……」

「ああ、それ、もう何十年も昔のエルフのイメージですね。確かに昔は、狩りをする際に、よく弓を使っていたそうですから。でも、今のエルフは、あんまり弓とか使いませんよ」

「そ、そうなの?」

「ええ。だって、わざわざ弓矢を用意して狩りをするより……」

 そこで言葉を切り、エルフの女の子は自分の拳を軽く持ち上げた。
 その拳に、アクアブルーのオーラがうっすらと重なっていく。

「この、魔力を込めた拳で獲物をぶん殴った方が、早くて確実ですから」

 そんな野蛮な……

 と思ったが、弓矢という道具を用意する手間が省ける分、確かに効率的なのかもしれない。私は「ちょっと失礼」と言い、エルフの女の子の拳に触れてみる。

「……なるほど、よく練られた魔力が、むらなく拳全体になじんでるわね。これなら、鋼鉄のハンマー以上の破壊力を生み出せるわ。この拳を使えば、弓矢では仕留められないような大きな獲物でも、イチコロでしょうね。言葉で表現するなら『魔拳』ってところかしら」

 私の言葉に、エルフの女の子は嬉しそうに目を細めた。

「そうなんです。この『魔拳』こそが、エルフ族生来の高い魔力と、ボクシングの戦闘技術を融合させた『エルフ式魔術ボクシング』の基本にして神髄なんですよ。……それにしても、凄いですね。少し触っただけで、『魔拳』の破壊力を見抜いちゃうなんて。あなたも何か、武術をやっているんですか?」

「まあ、多少ね」

 その時、酒場の入り口が、キィと乾いた音を立てて、開いた。それほど大きくはない音だったが、妙に響く音だったので、私はそちらに目をやる。

 入って来たのは、ひょろりと背の高い、長髪の男だった。

 その目つきは、異常なほどに鋭い。
 一目で、ただ者ではないとわかる迫力がある。

 長髪の男は、軽く店内を見渡した後、いまだに倒れたままになっている大男の方に、視線をやった。それから、コツコツと、長身の割に可愛らしい足音を立てて、こちらに近づいて来る。
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