二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第52話

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 ……それならば、余計な手出しをするのは真剣勝負に対する侮辱である。
 私は二人から距離を取り、戦いを見守ることにした。

 そして、今まさに戦いが始まろうとした瞬間。

 町の出入り口から、突風のように強烈なオーラが吹き荒れた。

 その、あまりにも強大なオーラに気を取られ、エリスも、用心棒の兄も、目の前の敵から視線を外し、同時に町の出入り口を見てしまう。それは、私も同様だった。

「あっ……」

 私は思わず、小さく声を漏らした。
 町の出入り口には、私にとってよく見知った顔がいたからだ。

 高い身長。
 鍛え上げられ、引き締まった肉体。
 そして、猛禽のように鋭い目つき。

 かつて、私を勇者パーティーから追放した男。
 あの、勇者ラジアスである。

 ……何故、ラジアスがここに?

 私がそう問いかける前に、ラジアスが口を開く。

「ひさしぶりだな、ディーナ。何かトラブルが起きているなら、手を貸してやろうか?」

 そう言って、倒れている大量のチンピラを見回してから、エリスを一瞥し、最後に用心棒の兄を見やるラジアス。なるほど、さっきの強大なオーラは、トラブルを察知したラジアスが、一瞬だけ戦闘態勢に入った際に、体から溢れだしたものだったのね。

 私はラジアスに対して言葉を返そうとした。……だが、できなかった。
 私の声は、用心棒の兄の凄まじい怒声で、かき消されてしまったからだ。

「おいおいおいおいおい! なんなんだよてめぇはよぉ!? こっちは今取り込み中なんだ! とっとと失せろやボケ!」

 今まさに、にっくきエリスに恨みを晴らそうとしていた彼は、勝負の邪魔をされて、相当に頭に来ているようだ。しかしまさか、今自分が文句を言っている相手が、人類最強の剣の使い手である勇者ラジアスだとは、夢にも思うまい。

 百戦錬磨のラジアスは、用心棒の兄の恐ろしい恫喝にも、少しも怯むことなく、私の方を見て、呆れたような、それでいて憐れむようなため息を漏らした。

「ディーナ……お前、こんなタチの悪そうなチンピラともめごとを起こすとは……どうやら、かなり荒んだ生活をしているようだな……」

 そこでやっと、私はラジアスに言葉を返す。

「ち、違うわよ! この人とトラブルを起こしたのは私じゃなくて……」

「みなまで言うな、分かっている。パーティーを追放されてから、色々大変だったのだろう。安心しろ、この場は俺が収めてやる」

 ああもう!
『分かっている』って、絶対分かってないでしょ!

 この男も、エリス同様、あんまり人の話聞かないのよね。
 なんで私の周りって、人の話を聞かない人ばかりなのかしら。
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