二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第61話

「ではそろそろ、決着をつけよう。俺の使える最強の技で、この戦いを終わらせる」

 そしてラジアスは、足を前後に開き、左手を前に突き出すと、弓を引くように右手を後ろに下げる。……これは、勇者ラジアスの必殺剣『ライトニング・スマッシュ』の構えだ。もちろん、今は剣を持っていないが、恐らく素手でも同じことができるのだろう。

 私の背筋に、ゾクリとした緊張が走った。

 必殺剣『ライトニング・スマッシュ』は、読んで字のごとく、必殺の剣である。まさしく雷光のようなスピードで放たれる鋭い突きは、防ぐことも、回避することも難しい。『ライトニング・スマッシュ』に対抗するためには、こちらも聖女拳法の奥義を使わなくてはならないだろう。

 だが、そんなことをすれば……

「待って、ラジアス。あなたが『ライトニング・スマッシュ』を使うなら、こっちもそれに匹敵する技を使わなきゃならない。……その場合、もしかしたら、あなたを殺してしまうかもしれないわ」

 私はそこで一度言葉を切り、ほんの少しの間をおいてから、話を続ける。

「私、ハッキリ言ってあなたのこと、苦手だわ。でも今日、真剣に戦って、その見事な技の冴えと、汚い戦法を一切使わない高潔さには、敬意を抱いている。だから、あなたを殺したりしたくない」

 ラジアスは『ライトニング・スマッシュ』の構えを保ったまま、微笑を浮かべ、言う。

「それはこちらの台詞だ。お前の強さは充分に知っているつもりだったが、正直言って、お前がこれほどまでの使い手だとは思っていなかった。……決着がつく前に、もう一度だけ謝っておく。お前は、偉大なる聖女であり、他に並ぶものなどいない闘士だ。散々無礼な口をきいて、悪かった」

「それはどうも。……私のことを認めてくれたなら、ここらでお互い矛を収めて、引き分けってことで手を打たない?」

「それはできない。これは、遊びでも、練習試合でもない。真剣勝負の果し合いだ。決着をつけるまでやる。……たとえ、どちらかが死ぬとしてもな」

「意地っ張りのあなたなら、そう言うと思ったわ」

「ふん、だがお前だって、本心では、中途半端なところで戦いを止めたくなどなかったのだろう?」

「まあね」

「では、行くぞ」

 そしてラジアスは、『ライトニング・スマッシュ』を放った。

 目の前に稲妻が落ちたかのような轟音が、鳴り響く。
 それと同時に、凄まじいエネルギーの波動が私の全身を叩いた。

 人間の反射神経では捉えることのできない、速すぎる動き。
 技が見えた時には、すでに体を貫かれているほどの、神速の一撃。

 それが『ライトニング・スマッシュ』である。
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