二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第127話

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「うぅむ……いくら聖女ディーナ様の見解でも、にわかには信じられませんな。侮蔑する気はありませんが、『エルフ式魔術ボクシング』は、やはり男のやる競技です。侮蔑する気はありませんが、女性の腕力では、いくら魔力で補ったところで、限界がありますからな。いや、本当に、侮蔑する気はありませんが……」

 自分を弁護するように、三度も『侮蔑する気はありませんが』と言うストッフェン。……大会関係者や観客の手前、先程は、あの感じの悪い男を叱責したが、やっぱり彼の心にも、『エルフ式魔術ボクシングは男のやるもの』という考えが根付いているのだろう。

 その考えは、これからエリスの戦いぶりを見れば、粉々に砕け散るに違いない。

 えっと、案内のチラシに書いてあったけど、この大会は、普通のボクシングの試合とは違い、巨大なリングで参加者を全員同時に戦わせる、バトルロイヤル方式だったわね。

 ……それなら、決着がつくまで、30秒ってところかしら? いや、相手を殺さないように手加減しなきゃいけないから、もう少しかかるかな。たぶん、40秒から50秒って感じ、かな。

 そんなことを思っているうちに、とうとう試合開始のゴングが鳴った。

 観客席は半分も埋まっていないが、それなりに大きな声援が飛ぶ。さすがは、生で『エルフ式魔術ボクシング』の試合を見るために駆けつけた、熱心な観客たちだ。たとえ少なくとも、冷やかしの声よりは、ずっといい。

 その、熱心な声援の中。エリス以外の6人の選手たちは、他の選手の出方を伺っているのか、しばらくの間、動き出さなかった。

 しばらくと言っても、だいたい3秒か4秒。ほんの、短い時間である。
 しかし、その数秒間の間で、早くも二人の選手がノックアウトされた。

 やったのは、エリスである。

 エリスは試合開始と同時に戦闘態勢を取り、無駄のない動きで二人の選手をリングに沈めたのだ。左のフックと、右のフック。その、たった二つのパンチで、二人の選手は意識を失った。あまりにも素早い行動だったので、恐らく二人は、自分が何をされたのかもわかっていないだろう。

 これは、不意打ちではない。
 試合開始のゴングが鳴ったのに、ぼおっとしている者が悪いのだ。
 ルールのある競技会だからいいものの、実戦なら今ので死んでいる。
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