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第二部 獣人武闘祭
第167話
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むふーっと息を荒げ、まくし立てるミャオ。
興奮して喋るので、私の顔にかなり唾がかかってしまったが、まあ、文句を言うのはやめておこう。袖口で顔を拭い、視線をミャオに戻す。すると、彼女はベッドで正座をし、深々とこちらに頭を下げていた。
「というわけで、お願いしますニャ。必ず返済するので、二千ゴールド貸してくださいニャ。初対面で、こんなことを頼めた義理じゃないのは分かってますニャ。でもエントリーの締め切りは明日ニャ。もう他のことでお金を作る時間はないですニャ。僕には、もうディーナさんしか頼る人がいませんニャ……」
「わかったわ。いいわよ」
「やっぱり駄目ですかニャ……社会は獣人に厳しいニャ……」
「いや、だから、いいって」
「えっ、今『いい』って言ったニャ?」
「うん」
「僕をからかってるニャ!? 何か裏があるニャ! その手には乗らんニャ!」
「あなた、情緒不安定すぎるわよ……裏なんてないってば」
「ほ、本当にいいニャ? 後で法外な利子を突き付けて、えっちなお店に僕を売り渡したりしないニャ?」
「どこからそういう知識を得るの……利子なんか取らないわよ。ほら、二千ゴールド」
私は袋から100ゴールド金貨を二十枚取り出すと、ミャオに手渡した。
彼女はしばし茫然とした様子でそれを見つめると、私に視線を戻す。
「……なんで、こんなに親切にしてくれるニャ?」
その真っすぐな瞳が少々照れくさくて、私は目をそらしながら言う。
「なんでだろう……きっと、あなたが私と同じ、武道家だからかな。なんとなく、シンパシーを感じるのよね。あなた、まだ十代半ばなのに、恐らくは死ぬほどの鍛錬を積んできたんでしょう? さっきの身のこなしを見ればわかるわ。それなのに、お金がないせいで武道大会に出られないなんて、悔しいじゃない」
「それだけ? 本当にそれだけの理由で、助けてくれるニャ?」
「まあね。これでも私、善人のつもりだから」
「なんて良い人ニャ……もしや天女……天女様なのニャ……?」
ミャオは大きな瞳を潤ませながら、ありがたやと言うように、私を拝んでいる。ますます照れくさいが、いつまでも照れてる場合ではない。お金は貸してあげるが、言うべきことはちゃんと言っておかないと。
興奮して喋るので、私の顔にかなり唾がかかってしまったが、まあ、文句を言うのはやめておこう。袖口で顔を拭い、視線をミャオに戻す。すると、彼女はベッドで正座をし、深々とこちらに頭を下げていた。
「というわけで、お願いしますニャ。必ず返済するので、二千ゴールド貸してくださいニャ。初対面で、こんなことを頼めた義理じゃないのは分かってますニャ。でもエントリーの締め切りは明日ニャ。もう他のことでお金を作る時間はないですニャ。僕には、もうディーナさんしか頼る人がいませんニャ……」
「わかったわ。いいわよ」
「やっぱり駄目ですかニャ……社会は獣人に厳しいニャ……」
「いや、だから、いいって」
「えっ、今『いい』って言ったニャ?」
「うん」
「僕をからかってるニャ!? 何か裏があるニャ! その手には乗らんニャ!」
「あなた、情緒不安定すぎるわよ……裏なんてないってば」
「ほ、本当にいいニャ? 後で法外な利子を突き付けて、えっちなお店に僕を売り渡したりしないニャ?」
「どこからそういう知識を得るの……利子なんか取らないわよ。ほら、二千ゴールド」
私は袋から100ゴールド金貨を二十枚取り出すと、ミャオに手渡した。
彼女はしばし茫然とした様子でそれを見つめると、私に視線を戻す。
「……なんで、こんなに親切にしてくれるニャ?」
その真っすぐな瞳が少々照れくさくて、私は目をそらしながら言う。
「なんでだろう……きっと、あなたが私と同じ、武道家だからかな。なんとなく、シンパシーを感じるのよね。あなた、まだ十代半ばなのに、恐らくは死ぬほどの鍛錬を積んできたんでしょう? さっきの身のこなしを見ればわかるわ。それなのに、お金がないせいで武道大会に出られないなんて、悔しいじゃない」
「それだけ? 本当にそれだけの理由で、助けてくれるニャ?」
「まあね。これでも私、善人のつもりだから」
「なんて良い人ニャ……もしや天女……天女様なのニャ……?」
ミャオは大きな瞳を潤ませながら、ありがたやと言うように、私を拝んでいる。ますます照れくさいが、いつまでも照れてる場合ではない。お金は貸してあげるが、言うべきことはちゃんと言っておかないと。
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